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【改稿版】戦国幻獣物語 〜目指せ、戦国ひきこもりモフモフ生活! 八百万の幻獣をモフって今日も生き抜くぞ、おぉーーっ!〜   作者: 蒼葵美
14XX年 本作戦をモフシマ作戦と呼称します

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0097. 祭りの前の地獄のレッスンウィーク

 どうする、私!? この悪魔のような氏兼の〝詰み〟からどうやって逃れる!?

 私の脳内では、緊急対策会議が猛烈な勢いで開催されていた。

(案1:仮病! いやダメだ、この時代の医術じゃバレるどころか変な薬を飲まされる! 却下!)

(案2:記憶喪失のフリ! 舞のことだけ都合よく忘れるなんて不自然すぎる! 却下!)

(案3:逆ギレ! 姫御子としての権威が地に落ちる! 論外!)

 くぅっ、なんだこの連携は。氏兼叔父上からの完璧なパス回しで、徐々に外堀が埋められていく感じがする。

 このまま行ったら、「やる」の一択になってしまう。ここは強引にでも突破せねば。負けられない戦いが、ここから始まる!

 私が必死で活路を探していると天の助けか、地獄の使者か、侍女のまつがキラキラとした瞳で一歩前に進み出た。


「姫御子様! それでしたら、わたくしどもにもあの舞をお教えくださいませ! 皆で一緒に舞えば、音がなくとも、きっと神様はお喜びになります!」

(……! これだ!)

 まつの言葉に私の脳内で光明が差した。

 私はこの純粋な提案を最大限に利用させてもらうことにした。前世で培った、あの「ブラック企業処世術」で!


「……まつ。あなたのその気持ちとても嬉しいわ」

 私は、一度慈愛に満ちた表情で皆を見渡した。


「確かに皆で心を一つにして舞えば、たとえ未熟でも、神様はお許しになるでしょう。……ですが、考えてもみて。奉納の舞である以上、その美しさと荘厳さは何より大切。未熟な者たちがバラバラに舞う姿は、果たして、見ていて楽しいかしら?」

 私の言葉に、皆がはっとした顔になる。よし、食いついた。


「だから、こうしましょう。今年は時間がありません。わたくしが皆にこの舞の全てを教えます。そして、今年の収穫祭では、まずあなたたちだけで練習の成果を神に奉納するのです。わたくしが皆と一緒に舞うのは来年、皆がもっもっと上手になってから。その方が神様もきっとお喜びになるわ」

 相手の提案を、一度は全て受け入れた上で、「より良くするため」という大義名分を掲げ、その本質を捻じ曲げ、自分の望む結論(=私はやらない)へと誘導する。

 どうだ、これぞ、理不尽な〇〇部長の無茶振りを幾度となく切り抜けてきた、私の生存戦略よ!


「……まあ! なんという有り難いお言葉!」

 まつの目は完全に尊敬の光で潤んでいる。


「そうですわよね! いきなり姫御子様と同じ舞台に立つなど、大変失礼で無礼なことでした! おっしゃる通り、今年は皆で踊りを鍛錬した上で、奉納の気持ちと共に踊るのが良いと存じます! 姫御子様と同じ舞台に立つために、一年間鍛錬を……! 承知いたしました! わたくしたち、身命に賭してお稽古に励みます!」

(よっしゃー!)


 私は内心で高らかに勝利の雄叫びを上げた。

 脳内にファンファーレが鳴り響き、紙吹雪が舞う。 

 まるでW杯の決勝でロスタイムに奇跡のゴールを決めた気分だ。

 今年の罰ゲームは回避した。来年のことなど、未来の私に任せておけばいい。今はこの勝利の余韻に浸ろう。


「それじゃ、今日から早速始めましょうか。中食を食べてからでいいかしら。まつは氏兼とたきと相談して、誰が踊るのか決めておいてね。場所は外宮の広場で鍛錬することでいいかな、氏兼」

 勝ち誇った私が余裕綽々で段取りを決めると、それまで黙っていた氏兼叔父上が重々しく口を開いた。


「――なるほど。姫御子様の深きお考え感服いたしました。参加する者の選抜はお任せください。場所も外宮のほうが問題ないかと」

(おっし、叔父上も同意した! これで私の不戦勝、完全勝利ぃ!)


 そして、彼は完璧な人の良い笑顔で続けた。

「それでは、早速、外宮にお稽古のための高舞台を造らせましょう。そして、皆がその神聖な体捌きを覚えるまで、姫御子様には来る日も来る日も、その高舞台の上でお手本をお見せいただかねばなりませぬな。武芸と同じ繰り返し鍛錬するしかございませんゆえ」


「………………は?」

 叔父上の言葉の意味が私の脳にゆっくりと浸透してくる。

 毎日?

 みんなの前で?

 お手本を?

 あのヲタ芸を?

 私の脳内で鳴り響いていた勝利のファンファーレが不協和音と共にぴたりと止んだ。


「ぬわんだってーーーーっ!?」

 私の絶叫が広間に響き渡った。

 逃げ切れなかったぁ。くっそぉ〜、氏兼めぇ〜、今日のところは引き分けにしておいてやろう……いや、完敗だ……。


 ――そして、その日から収穫祭の前日まで私の地獄のレッスンウィークが始まった。

 外宮に急ごしらえされた高舞台の上で十数人の家臣たち(中には一切の感情を消した真顔の沙門殿や動きが盆踊りになりがちな筑馬殿もいる)を前に、毎日、二刻(約四時間)、私はサイリウム(魔素製)を振り、ヲタ芸を舞い、個別指導をする羽目になった。

 純粋な瞳で完璧にコピーしようとするまつたちに、私は懇切丁寧に教えるしかない。


「そこ! サンダースネークのキレが甘い!」

「ロマンスはもっとこう手首のスナップを利かせて!」

「ケチャは神への祈りを込めて天に突き上げるように!」

 指導する私の目の光は日を追うごとに失われていった。

(……これなら、本番で一回だけ舞った方が百万倍マシだった……)

 私のSAN値は毎日、ゴリゴリと音を立てて削られていく。

 今回の屈辱を私は一生忘れない。そして、今後は二度と人前で恥ずかしいダンスはしないと固く、固く心に誓ったのだった。

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