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【改稿版】戦国幻獣物語 〜目指せ、戦国ひきこもりモフモフ生活! 八百万の幻獣をモフって今日も生き抜くぞ、おぉーーっ!〜   作者: 蒼葵美
14XX年 本作戦をモフシマ作戦と呼称します

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0093. 朝の散歩と魂を燃やす神事?

 引っ越し翌日の朝。私は体中の筋肉痛で目を覚ました。

 昨日のあの妙な緊張感に満ちた就任式と慣れない馬での長旅のせいだろう。四歳児の体は、驚くほど正直だ。軋む体をゆっくりと起こし、窓の外を見る。朝の光に包まれた奥之院は静寂と清浄な空気に満ちていた。

 昨夜は夕食を食べずに眠ってしまったので、今朝はものすごくお腹が空いている。早速朝食を、と思ったがこの広大な屋敷だ。準備にはまだ時間がかかるらしい。部屋で手持ち無沙汰に待っているのも退屈だ。


「……そうだわ! まだこの奥之院の中ですら、ちゃんと見て回れていないもの。朝食まで少しだけ、この新しいお家を探検しましょう!」

 私が部屋を飛び出そうとした、その瞬間だった。目の前に侍女のまつが仁王立ちで立ちはだかった。


「姫御子様、どちらへおいでですか。まだ朝のお支度も整っておりませんので、今しばらく、お部屋にてお待ちいただければと存じます」


「まっちゃん、探検よ! 朝食がまだなのはわかってる。だから、この周辺を確認してこようかなって。昨日、ちゃんと見られなかったでしょう? それに御使い様たちのお散歩も兼ねてね! 半刻(一時間)ぐらいは時間があるでしょう?」


「はぁ……。ですから、その〝まっちゃん〟という呼び方はおやめくださいと、何度も……。御使い様とご一緒とあらば、無下にもできませぬが、お一人で行かれるのはなりませぬ。必ず護衛をお付けします。四半刻(約三十分)ほどお待ちを。お供の準備をしてまいります」

(四半刻も待ったら、探検の時間がなくなるじゃない!)


「まっちゃん、それだと私の散歩の時間が短くなるから、もっと早く準備してね。奥之院の入り口であの子たちと〝準備運動〟しながら待ってるから。なるべく早く来てよ!」

 私はそう言うと、狐火ちゃん、花梨ちゃん、水蓮くんの三体を引き連れて、朝露に濡れた庭へと駆け出した。昨日はほとんど遊んであげられなかったから、三体とも嬉しそうだ。


「――皆の者、集まれ! これより、朝の神事を執り行う!」

 私の号令に三体が、キラキラとした瞳でぴしっと整列する。


「演目は我らが故郷、VRMMO【八百万の幻獣物語】より、魂の一曲! 我らの始まりの歌……オープニングテーマ『幻獣たちの譚歌バラッド』! 全霊を以て、舞い踊るぞ!」

 目を閉じれば蘇る。仮想世界の目にも鮮やかな現実と見間違う色彩で描かれた、どこまでも広がっていた草原の風景。仲間たちとの出会い、冒険の日々。この歌は私たちのかけがえのない思い出そのものだ。


 

 私の脳内にイントロの、胸が高鳴るようなストリングスの音が鳴り響く。

 ペンライトは無いので、近くにあった枝をペンライト代わりに両手に持つ。


「――いくぞ!」

 私の魂が解き放たれる。

 記憶の中のメロディーと体に染み付いた動きを、全身全霊でこの地に再現する!

 サイリウムを握りしめた腕が、神速で虚空を切り裂き、光の軌跡を描く!

 Aメロの疾走感に合わせて、鋭く、力強く、そして、どこまでも流麗に! 〝サンダースネーク〟が走り、〝ロマンス〟が咲き乱れる!


 私の舞に三体の魔素が、完璧にシンクロする。

 狐火ちゃんの九つの尾が、抑え目の灼熱の炎の乱舞を披露し、ステージを真紅に染め上げる!

 花梨ちゃんの足元から色とりどりの光る花々が、Bメロの切ないビートに合わせて明滅し、フロアを幻想的にライトアップする!

 そして訪れる、楽曲のクライマックス、大サビ。

 私の全ての想いと魔力を天高く掲げたサイリウムの一点に収束させる!


「――届け! 私たちの、想いの全て!」

 天に愛を叫ぶ〝ケチャ〟と共に、光の杖から、ピンク色と水色の巨大な光の奔流が天へと突き抜けた!

 その光に呼応し、狐火ちゃんの炎が巨大な火柱となり、花梨ちゃんの咲かせた花々が祝福の光の粒子となって舞い上がり、水蓮くんの創り出した幻想的な霧が、その全てを神々しく包み込んだ!

 これぞ、私と御使い様たちとの魂の共鳴!

 最後のポーズをビシッと決め、光の粒子と花びらが舞い散る中、私はやりきった満足感に恍惚と息をついた。


「…………」

 ふと、背後に複数の人の気配を感じて、振り返る。

 そこには、私の護衛のために急いで駆けつけてくれたのだろう、女官長であるたきの娘のまつ、そして、甲斐から来た孤児の姉妹である、ゆきとみき。さらに鞍馬衆の頭領・沙門殿、飯母呂一族の頭領・筑馬殿が、全員、口をあんぐりと開けて、石のように固まっていた。


「あ……」

 見られた。完璧なパフォーマンスを全部。

「……ひ、姫御子様……。今のは……その……いかなる神事のお稽古に……ございますか?」

 おそるおそる、といった体で沙門殿が尋ねてくる。

 まずい。このままでは私の威厳が地に落ちる。


「――これは来るべき、秋の収穫祭で神に奉納するための〝舞〟の鍛錬です」

 私はすまし顔で言い放った。


「まだ完成には程遠いゆえ、皆には内密に」

 よし、完璧な言い訳だ。これで変な動きだとは思われまい。

 だが、私の言葉を純粋な瞳で信じ込んだ、まつが胸の前で手を合わせて、キラキラとした顔で言った。


「まあ! なんという、神々しい舞なのでしょう! 姫様、秋祭りが今からとても楽しみでございます!」


「え……」

(しまった! 逆に披露する流れになってしまった!)

「は、はぁ……。ま、まあ、納得のいく出来になったら、考えてあげなくもないわ……。期待はしないでね」

 私は冷や汗をかきながら、そう答えるのが精一杯だった。


 その後、皆で気まずい空気の中、社の探検に出かけたが、私が狐火ちゃんに魔素でできたフリスビーを投げて遊ぶたびに背後から、沙門殿と筑馬殿の「なんと深淵な神事であろうか」「我らの修行が足りぬ故、その真意が汲み取れぬ」というような、深いため息が聞こえてきたのは言うまでもない。

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