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【改稿版】戦国幻獣物語 〜目指せ、戦国ひきこもりモフモフ生活! 八百万の幻獣をモフって今日も生き抜くぞ、おぉーーっ!〜   作者: 蒼葵美
14XX年 モフってたら生活基盤ができました

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0070. 閑話・【???】転生者 琴の観察日記 「推しの成長と次の舞台準備」

――神域、観測の間。

 花梨ちゃんの「デビューイベント」の大成功を受け、我ら四人は神酒を片手に祝杯を挙げていた。水鏡に先日のハイライトシーンが繰り返し再生されている。


「いやあ、あの初々しい涙の再会シーンは、何度見ても泣けるわねぇ」

 “妾”が、再生された映像にうっとりとグラスを傾ける。水鏡の中では、琴が小さな腕で花梨ちゃんを抱きしめ、桜吹雪が二人を祝福するように舞っている。


「うむ。じゃが、妾はやはり、あの舌足らずな詠唱がたまらんのう。『来ちぇ、きゃわいい花ようちぇい』……くぅっ、可愛すぎて神酒が進むわい!」

 “わらわ”が、頬を赤らめてぐいっと杯をあおる。


「まあ、この後の成長も楽しみじゃな。さて、感傷に浸るのはこれくらいにして、少し時間を進めてみるか」

 “わし”が水鏡に手をかざすと、中の景色が急速に流れ始めた。琴が少しだけ背を伸ばし、季節がひと回りする。そして、我らは再び、彼女の健気な努力を目撃することになった。

 水鏡には、朝日が差し込む静かな一室で、琴が【魔眼】を起動させている姿が映し出された。その視線の先には、狐火ちゃんと花梨ちゃんがいる。彼女は二体の魔素の流れを、まるで論文でも書くかのように真剣な顔つきで比較検討していた。


「あら、花梨ちゃんを顕現させてから、さらに魔素を上手く使えるように練習しているのね。自分の魔素量を増やして顕現時間を延ばすなんて、かなり強引なやり方だと思っていたけど……」

 “わたし”が、心配そうに眉を寄せる。


「外部からの魔素取り込みの方法を、自分で検証しようとしているのね。偉いわぁ」


「ほう。相変わらず、アイテムボックスの中の指南書や、他のスキルの活用は考えんようじゃな。使えるもんは使えばええのに、ほんま、律儀な子やで」

 “わし”が呆れたように、しかしどこか誇らしげに言う。それが琴の美点であり、我らが彼女から目を離せない理由の一つでもあるのだ。狐火ちゃんも花梨ちゃんも琴の実験に付き合ってどこか嬉しそうにしている。まだまだ時間はあるのだから、これくらいの遠回りは、我々にとっては観察時間が増えるというご褒美でしかない。

 だが、その時、“妾”は一つの奇妙な点に気づいた。


「……おかしいわね。あの子、狐火ちゃんたちとまだ〝念話〟ができていないみたい。こちらの設定はちゃんとONにしてあるはずなのに……」


「不具合かの?」


「まあ、そのうち気づくじゃろう。向こうの世界のVRMMOゲームから来たのだから、同じようなことができるといつかは思い至るはず」


「えぇ、本当に気づくかしら。そこまで天然という可能性も……。ふふ、それもまた一興よの」

我らはとりあえず、その小さな「バグ」もまた、新たな観察対象に加えることにした。


――さらに、時間を進める。

 琴の自己流訓練は、ますますユニークな方向へと進んでいた。

 水鏡には、三歳児の体でおぼつかないながらも真剣な顔で太極拳のような緩やかな動きを練習する琴の姿が。戦国時代にはあまりに異質なその光景に、周りの侍女たちが「まあ、姫様ったら、可愛らしい舞ですこと」と、微笑ましそうに見守っている。


「「「「可愛い……」」」」

 我ら四人の声が、再び綺麗にハモった。

 座禅を組んでみたり、拳法の呼吸と動きを真似てみたり。他の方法はいくらでもあるというのに、自分で考えて実験するという行動パターンは、決して変わらない。

 そして、その遠回りにもついに転機が訪れる。

 いつものように訓練に行き詰まり、気分転換にスキルリストを眺めていた彼女が、ふと何かに気づき【錬成】スキルを鑑定する。

 彼女の小さな瞳が説明文の一節を捉えた。


『※ちなみに、このスキルは……魔力訓練の補助にオススメよ!』

 時が止まったように見えた。

 琴の表情から、すっと色が抜けていく。「ん?」という疑問の顔が「まさか…」という焦りに変わり、そして全てを理解した絶望の顔へ。次の瞬間、彼女はorzの形でその場にがっくりと崩れ落ちた。


「出たわね! 必殺の〝やらかし〟!」


「自分で気づくまで、実に長かったのう!」


「この顔よ、この顔! 悔しがって四つん這いになっとるわ! 最高の〝撮れ高〟や!」

 観測の間は、この日一番の歓声と爆笑に包まれた。


――そして、物語は、次の舞台へ。

 やらかしを経て、効率的な魔力訓練の方法を見つけた琴。その成果か、花梨ちゃんの姿もずいぶんと安定してきた。

 それを見て、琴が三人目の顕現を計画し始めたのが見て取れた。彼女が練習している属性のイメージから、次が誰なのかは明白だった。


「あら、次のお時間ね。〝プロデューサー〟の出番だわ」

 “妾”はにやりと笑い、まず花梨ちゃんをそっとこちらへ呼び出した。彼女の姿は以前よりずっと濃く、実体化している。


「ねぇ、花梨ちゃん。琴ちゃん、次は水の子……水蓮くんを呼ぶみたいよ。今どこにいるか、わかるかしら?」

《まあ、水蓮くんですか! 彼なら、きっとどこかの水辺で遊んでると思いますよ。へぇ〜、次はあの子なんですね! それなら、あの技を久しぶりに琴ちゃんに見せてあげられますね!》


 どうやら、花梨ちゃんは八百幻でよく使っていた連携技〝ジェ〇〇ス〇〇ームア〇〇ク〟が、いたくお気に入りらしい。

《でも、私がいつも顕現しているお庭には、あまり大きな水辺がありませんけど……琴ちゃんなら、何か考えてるでしょうね》


「ええ、きっとね。ありがとう、花梨ちゃん。じゃあ、主役を迎えに行ってくるわ」

 “妾”は次に水の幻獣、水蓮くんを探し出し、呼び出した。

 現れたのは、イッカクの形をしたフード付きの着ぐるみを着た、可愛らしい少年。


「水蓮くん、出番よ。琴ちゃんが、あなたを呼んでいるわ。花梨ちゃんの時みたいに、素敵におめかしして、華々しくデビューしましょうか?」

 すると、イッカクの着ぐるみを着た少年はぷいっとそっぽを向いた。


《……ボクは、男の子だ。おめかしなんてしないよ。いつものままの格好で十分だ》


「あら、せっかくの機会なのに、いいの?」


《うん。……それに、変に着飾って、琴ちゃんがひいたら、イヤだから》

 その不器用な優しさに“妾”は思わず微笑んでしまった。

《気にしてくれてありがとう、神様。でも、何もしないで、ありのままの自分がいいです。初めて会うなら》


「わかったわ。あなたの気持ち、尊重する」

 なるほど。次の主役は少しクールでシャイな子のようだ。

 衣装も特別な演出もなしの〝ありのままで〟デビュー。

 脚本通りにいかないからこそ、物語は面白くなる。

 さあ、琴。あなたの次の演出を、そして、この不器用な男の子をあなたがどう迎えるのか。我らは楽しみに待っているわよ。

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