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【改稿版】戦国幻獣物語 〜目指せ、戦国ひきこもりモフモフ生活! 八百万の幻獣をモフって今日も生き抜くぞ、おぉーーっ!〜   作者: 蒼葵美
14XX年 本作戦をモフシマ作戦と呼称します

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104/112

0104. 神々の〝やらかし〟は欧風建屋

 たきと氏兼に案内され、奥之院のさらに奥。山の懐へと続く道を15分ほど歩いただろうか。私の歩く速さでそれくらいだから、大人なら10分もかからないだろう。

 やがて木々が拓け、バスケットコート一面ほどの静かな広場に出た。

 そして、私の目は広場の先に立つ、一つの建物に釘付けになった。

 ――嘘でしょ。

 私の口から思わず魂の言葉が漏れそうになった。

 広場の先にぽつんと佇むその建物はどう見ても前世の長崎で見た、大浦天主堂のミニチュア版だった。この戦国の世にゴシック様式の教会がなぜ……。

(神々の〝やらかし〟にも程があるでしょうが!)


 私の顔がさっと青ざめたのが自分でも分かった。卑弥呼様たち日本の神様がこんな西洋建築を建てるはずがない。オーパーツとまでは言わないが、この時代にはまだ存在しない建築様式。この違和感にはさすがに気づく。一体どう説明すればいいのよ。


《まあ! なんて綺麗で不思議な形のおうち! 琴ちゃんも目を丸くして、感動しているわ!》

 花梨ちゃんが純粋に感嘆している気がする。


《……いや、違うな、花梨。あれは、感動の顔じゃない。〝どうして、こうなった〟という、絶望の顔だ》   

 水蓮くんの冷めた声が続く。


《……全くだ。あの御方々の悪ふざけの後始末をさせられる、琴ちゃんの心労といったら……。おそらく、最初に用意した洞窟に、どこぞの異国の神がちょっかいを出したのじゃろう》

  狐火ちゃんの深いため息が締めくくった。


「……氏兼、たき」

 私は目の前の光景が信じられず、二人を振り返った。


「たきの話では、ここには誰も造った覚えのない〝扉〟があると。……この異国の寺のような建屋の話など聞いて無いけど?」

 私の問いに氏兼も、たきも、顔面蒼白でその建物を見つめていた。


「……い、いえ……我らが先だって確認した折にはこのような建屋は断じて……! ただ古びた扉がぽつんと、そこにあるだけで周りには何も無い状態でして……!」


「……とにかく入ってみましょう。何が起きているのか確かめねば」

 私は必死で平静を装い、知らないフリを貫き通す。

 中へ入ると、その光景に私は再び眩暈を覚えた。

 壁にはステンドグラスもどきの色鮮やかなガラスが嵌め込まれ、床には幾何学模様のタイルが敷き詰められている。


(ガラスなんて、この時代まだ超高級品のはず……! しかもこの精巧な細工は……)

 あまりのことに私の口が半開きになってしまう。


《琴ちゃん、お口が開いているよ》

 狐火ちゃんが呆れている。


《きっと、あのキラキラの絵がよほどお気に召したのね!》

 花梨ちゃんは嬉しそうだ。


《違う。あれは言い訳を考えるのを放棄した顔だ》

 水蓮くんのツコミが的確すぎる。


 私は気持ちを切り替えると、氏兼とたきに鋭い視線を向けた。

「氏兼、たき。確認します。この不可思議な建屋の他にこの大聖宮の敷地内で、あなた達が不審に思った場所、あるいは近づけなかった場所はありますか? 全て報告なさい」


「いえ、姫御子様! このような面妖な事が起きておりますのは、この場所のみにございます! 断じて!」

 氏兼の声は平静を装ってはいるが、わずかに震えている。隣のたきは、もはや、小刻みに震えているのが見て取れた。


「姫御子様! 本日はもうようございませぬか! これ以上は危険にございます! 一旦、お戻りを!」

 氏兼が護衛としての責務からか私の前に立ちはだかった。

(まずい、このままでは何も確認できずに追い返されてしまう)


「待ちさない、氏兼」

 私は毅然とした声で彼を制した。


「この不可思議な現象こそ、神々の御業の証。おそらくはわたくしへの〝試練〟でしょう。ここで引き返せば、それこそ神々の御心を損ねてしまいます。どうせ調べた後に私が来ることになるのであれば、この場で調べてしまいましょう」

 そして、私は隅で控えていた、影の頭領二人に視線を送った。


「わたくしは、この部屋の入り口にて、沙門と筑馬に護衛を頼み待機します。氏兼とたきは、二人でこの建屋の中を隅々まで危険がないか、調べてちょうだい。壁や床の材質、そして、あの不可思議な扉以外に隠された通路などがないかを、念入りに」

 私の言葉に氏兼はぐっと押し黙った。

 姫御子の命令と安全確保の責務。その間で葛藤しているのだろう。

 やがて彼は覚悟を決めたように深々と頭を下げた。


「……御意。たき殿、参るぞ」


《見事だ。あの武骨な男を、また、言い負かした》

 狐火ちゃんが感心している。


《琴ちゃん、かっこいい!》

 花梨ちゃんは尊敬の眼差しだ。


《やれやれ。これで、また面倒事が始まるな》

 水蓮くんはうんざりしている。


 よし、これでダンジョンへの道は確保した。

 あとはあの二人が調査している間に、どうやって、あの〝扉〟を開けるかその言い訳を考えないと……!

 二人の調査はしばらく続いたが、結局、怪しいものは何も見つからなかったようだ。

 問題は建屋の奥にある例の〝扉〟だけ。

 いよいよクライマックスだ。

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