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第19話 伝承者の覚悟、北条との共闘

政也「伝承者は男から、大丈夫かと声をかけられ、大丈夫だと答えた」


政也「伝承者の着ている天地流師範の服装は、当然、友も同様に着ている。

目の前の男は、会話の頭で、近々戦をすると言っていた。

それはおそらく、足利と敵対する立場だと、遠回しに言っていたのだろう」


政也「伝承者からもう一度その会話をふることは、男に違和感を与える可能性が非常に高い」


政也「それでも、今初めて会ったというのに、伝承者は男に対して高い信頼を置いていた」


政也「伝承者は男に、これまでの自分の人生、そして自身の今の思いを話したそうだ」


政也「男は伝承者に、心を開いてくれてありがとう、と言い、自身の名を明かしてくれた」


政也「その名は、北条時行、鎌倉奪還のために足利と戦をする、と」


政也「伝承者はこの出会いに、運命を感じたそうだ」


政也「このまま友の元に戻り、正面から友に憑いた魑魅をどうにかしようも、1人では上手くいくか分からない。

また、友のそばに長時間いると魑魅の影響を、再度受ける可能性もある」


政也「しかし、戦場でなら短時間の接触ですみ、友の戦力を伝承者が足止めできるならば、北条にも得があるはず」


政也「伝承者の考えに、北条は納得を示した。

しかし、共に来るのであれば、手離す覚悟もした方が良いと言われた」


政也「しかし、伝承者に迷いはなかった。

例えそれが友にとって、裏切りであり、命をかけた喧嘩になろうと、自分の思いを全て伝えたい、という事に変わりはないから」


政也「北条の元へ入った伝承者は、北条の郎党扱いとなった」


政也「そして、いよいよ北条と共に鎌倉へ攻め入る。

これは歴史でいうところ、杉本城の戦いだった」


政也「戦場に出れば明らか、友に憑いた魑魅から発せられる陰の魅は、以前にもまして強く感じられた」


政也「この時の伝承者は、友と敵対する形で戦場に出ていることに抵抗感を感じ始めていたそうだ」


政也「一方北条側は、北畠顕家と共に、足利尊氏より鎌倉を任された、斯波家長との対決」


政也「友の戦力をいかに足止めできるか、それが勝敗を大きく揺らすであろう展開に、武の極地にある伝承者の強靭な精神は、友を思うがため、簡単に崩れてしまっていたそうだ」


政也「・・・ここまで話をしてなんだが、この戦場で伝承者と友の間に何があったのか、それは詳しく伝わっていない」


玲「えー、いいとこなのに」


冷泉「まぁ、ゆっくり話し合う、なんて場所じゃないからねー。

命をかけた戦いなんて、その時何がどうなったかなんて、覚えてられないと思うよ」


政也「もしくは、友との戦いについては、伝記に残したくなかった・・・とかな。

結果だけ伝えれば良いと思ったのかもしれないし、真意はわからない。

にしても、伝承者が次に記していた内容は、急展開すぎる」


政也「戦は北条の勝利に終わった。

しかし、友は死に、魑魅の浄化は失敗した、とな」

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