第18話 意思は再び、明るい未来を目指して
政也「友と再会して以来、伝承者は常に後ろ向きな思考だった。
しかし、山へ行くようになり、その男と出会い、自身に陽の魅護が満ち始めたことで、思考は改められ始めていた」
政也「忘れていたかのように、でも冷静に、伝承者はこれまでの事を思い返した」
政也「友と過ごした時間は、伝承者にとって生きてきた証であり、存在意義でもあった。
そして、2人で夢見た生命の明るい未来・・・それを実現させるために、この世に残った悲しみや怒り・・・陰の魅護を可能な限り鎮めようと、2人で誓ったことを思い出した」
政也「また、友は人が争いごとをやめない生命だと悟り、自分達がしてきた事の無謀感に絶望した。
だから方法を変え、自分達と同じように、人の思いを・・・その実態を感じ取れる人間を増やせば、争いは悲しみや怒りしか生まないことを理解できる。
そうすれば、争いを無くせるかもしれないと言っていたことを思い出した」
政也「そして自身も友の話を聞いて、これまでしてきた事への無謀感に絶望したこと。
せめて生きてきた理由である、友のそばに黙って居続ける事を選んだ、後ろ向きの自分を思い出した」
政也「ふと、疑問が1つ浮かんだ」
政也「友は絶望していたはず、だが・・・。
争いをなくせるかもしれない?
この言葉に、絶望ではなく、希望を感じた」
政也「もし、その思いが、取り憑いた陰の魑魅が影響しているとしたら・・・?」
政也「今目の前にいる男は、過去に一度絶望したが、魑魅の影響からか、死地を幾度となく乗り越えて、今もなお前を向いて生きている」
政也「そして、今では鮮明に魑魅の意思を感じとり、その意思に沿うように動いている」
政也「志しを同じくした者達の思いだったから、自身の思いに重なり、更なる強固な意思になっているのだとしたら、納得がいった」
政也「では、友に憑いた魑魅の意思とは・・・?」
政也「伝承者は、友のここまでの言動を振り返る・・・。
天と地を繋ぐ存在、は、武の極地に達した者のことだろう。
争いを無くしたい、魑魅は魅の集まり・・・中には戦で命を落とした者の魅もあるかもしれない。
しかし、そう言いながらも、成長の見られない弟子には憤り、殺してしまう・・・。
つまり、武の極地に達せない者は、争いを生むと考えている?」
政也「伝承者は考える内に、友の意思と魑魅の意思が混ざり合っている事に気づいた」
政也「考えられる可能性の内、もし今建てた仮説が正しければ、友はこれからも人を殺し続けるかもしれない」
政也「そして、伝承者の中で、決意が固まり始める」
政也「人は争いを生む愚かな存在かもしれない。
それでも、目の前にいる男のように、手と手をとりあい、共に苦難を乗り越えて、支え合う日々の中に見える束の間の幸せ。
その輝く一瞬があるから、生命は素晴らしいと思えるのだろう」
政也「辛いことも、上手くいかない事も、残酷に押し潰される生命もいるだろう。
だから、正しく力を使える者が、守っていかなくてはならない」
政也「友が武の極地に達する者を増やそうとする気持ちは、分からなくもないが、力だけを求め辿り着いた時、必ずしも正しい力を使えるようになるとは限らない」
政也「今の友のやり方は、間違っていると思う」
政也「1人だけじゃない、誰かのために、共に支え合い、守るために。
そう望んだ者が、自ら努力して初めて極地に辿り着いた時、正しい力の使い方ができるのだろう」
政也「だから」
政也「友に取り憑いた魑魅を引き離す・・・。
それができれば、友の陰に満ちた意思を変えることができるかもしれない」




