表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
文字を喰う  作者: 正五角形
4/5

第1章(第4章)

 守はいくつか落ち着きを取り戻していた。負傷した右腕はすでに完治していた。守は武器を手に入れた。「火」だ。何度か試すと、文字に指をのせるだけで火がつくようになった。だが、火は指から他の場所へ移すと自動的に消えてしまう。つまり、1回1回同じ動作をしないといけないのだ。そのことを含めて対策を考える。青年は義足だ。走れない可能性がある。対峙したときに青年は走ってこなかった。あれは、余裕ではなく走れないのではないか。それでも油断は禁物だ。

 守は天井を仰ぐ。火を灯す燭台(しょくだい)がある。手を伸ばせば守の背でも届きそうだ。これを使う。最後には……。

 守は移動する際、階に一台だけ燭台に火を灯しておいた。こうしておけば青年は気づくだろう。

 意外に早く、守と青年は対峙した。廊下の端と端に2人はいる。お互いを見据えたまま相手を(うかが)っている。

 先に行動したのは青年だ。青年はゆっくりと歩きながら口を開く。

「左足が動かないと知って、俺と両親は義足にする決断をしたんだ。医者にも言われた。『君の左足はもう一生動くことはないでしょう』、そう宣告されたよ」

 青年は嘲笑(あざわら)うように苦笑する。

「それから、周りの目を気にするようになった。好奇の目、可哀想だという声、気遣う態度。俺に向けられるそんな、善意、悪意に苦しんだよ。俺は何か悪いことをしたわけじゃないのに。ある日、揶揄(からか)ってくる奴がいたよ。『左足がなくなったのはお前のせいだ』ってな。そいつを殴ったら人生が転落した。両親とも仲が悪くなって、周りとの付き合い方も分からなくなった。そんな時だ、招待状が届いたのは。『これで人生をやり直す』って思ったんだ」

 青年は守に顔を向ける。

「お前もそうだろ?突然、自分のものが失われて、誰にもいう事ができず、1人で抱え込んでいた。人生が制限されて、選択を余儀されて、だろ?」

青年は手のひらを差し出した。

「あいつを倒さないか?俺と一緒に、お前の奪われたものを取り戻そうぜ」

 確かにあの道化師に奪われた。ただ、返して欲しいだけなのだ。青年のような復讐心は持ち合わせていなかった。守は素早く本を開き文字に触れた。人差し指に火が灯る。

 青年の顔は引き()った。

「ああ、そうかい。協力する気はないか。そうか」

 青年の体が動く。拳が飛ぶ。守の耳元で空気を切る音がする。青年の脇を通りに抜けると燭台に次々、火を付ける。周りが明るくなる。

「目眩しのつもりか?それじゃあ、俺に勝てないぞ」

 青年は走って追いかけてきた。速い。あっという間に追いつかれた。

「時間の無駄だったな。その火、遠距離攻撃機できないだろ。できてたらすでにしているもんな」

 青年は拳を構えた。

「これで終わりだ」

 青年は拳を振り下ろした。途中でぴたりと止まった。

「何しているんだ?お前?」

 守はすでに人差し指を床につけようとしていた。触れさせようとした時、「それは困るなあ」と頭上から聞き覚えのない声が降ってきた。明かりが暗転し、気がつくと守たちは広間にいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ