食後のティータイム 後編
わたしの心の中は驚きと戸惑いと疑いが混じり合っていた。しかし、わたしがこの世界に転生したことも、女神様と話したことも事実なのだ。疑う方が難しい。
……そういえば、女神様の声聞こえないな。……女神様、女神様?
語りかけても返事はない。わたしからでは声が届かないのだろうか。首を傾げていると、メイドの一人が口をひらく。
「ハーリン様、この後のご予定は決まっていらっしゃいますか?」
わたしはハーリンの記憶を探る。ハーリンはピアノやダンスのレッスン、勉強の予定がない日は大抵、図書館に行ったり庭園を散歩したりしていたようだ。
……庭園、ちょっと行ってみたいかも。
「そうね、今日は庭園を散歩した後、図書館に行こうかしら」
「では、わたくしがお供いたしますね」
わたしが予定を話すと、戻ってきていたリリアンが言った。
ハーリンはこうやって屋敷の外へ出る時、リリアンをお供として連れていく。
リリアンは平民で、身分主義のこの世界では立場が悪い。しかし、ハーリンのおかげかメイドたちからの嫌がらせもない。まあ、おそらくそれは主であるハーリンの性格がメイドたちにも反映しているからだろうとわたしは推測した。
「ええ、お願いするわ」
「今日は少し寒いのでブランケットを準備しましょう。あと、お戻りに合わせて温かい紅茶のご準備も」
リリアンがメイドたちに次々と指示を出していく。メイドの中には貴族出身の者もいるけれど、身分差を感じさせない。わたしはバイト先でもいじめられていたので、リリアンにとってとても良い職場だろうと思った。
わたしはメイドたちが忙しなく動く姿を見ながら、紅茶を啜る。ティースタンドからスコーンとカップケーキをとってもらう。
「これもすっごく美味しいわ! 腕のいいシェフがいるのね」
「ハーリン様に絶賛されるなんて、羨ましい限りです」
スコーンは外側がザクザク、内側はほろほろとしているのにしっとりとしていて、紅茶とよく合う。
「いつかこのシェフともお話ししてみたいわね」
「夕食後にお声かけしてみてはどうですか?」
「そうね、そうしましょうかしら」
父親や母親、そして性格の悪い妹。そんな家族ともいえないような関係の人たちと共に食べる夕食はハーリンにとってもあまり良いものではなかったようだ。
でも、少しだけ楽しみが増えたような気がした。
「ハーリン様、準備が整いました。行きましょう」
「わかったわ」
次回は庭園と図書館のお話。
八月十六日の十二時半
投稿予定です。




