食後のティータイム 前編
せめて豚肉くらい最後に食べさせてくれてもよくない? なんて頭の中で考えながらホクホクとした湯気を出す料理を見つめる。
「ハーリン様、今日はどちらをいただきますか?」
「え……っと、そうね。このオムレツ? をいただこうかしら」
どうやら自分で指定して食べる形式だったようだ。わたしは慌てて目の前のオムレツを用意してもらった。
わたしの前にはオムレツを盛り付けたお皿と共に、たくさんのカトラリーが並べられる。もちろんわたしは貴族の礼儀作法なんて知らない。ハーリンに成りきるために必要なのは演技だけではなかったようだ。
「いただきます、わ」
胸の前で合わせそうになった手を寸止めして、フォークとナイフを持つ。記憶を覗きながら、プルプルと震える手で一口食べた。
「ん! とっても美味しいわ」
「それはそれは、何よりです。ハーリン様」
この屋敷では、朝食と昼食は自室で食べ、夕食は食堂で家族全員で集まって食べるという風習があるらしい。
ちなみにわたしにはリーズンという妹がいる。
だがリーズンは、ハーリンとは似てもにつかぬような性格で、我儘で傲慢、気に入らなければメイドやシェフを目の前でクビにする。まんま悪役令嬢である。
しかし、そこまで偉そうだと言うのに、リーズンは不吉とされる黒髪に黒い瞳の持ち主で、父親に軽蔑されている。なんというか、可哀想である。
「ごちそうさまでした。とても美味しかったわ」
「左様でございますか。シェフにお伝えしておきます」
「えぇ、お願いするわ」
リリアンがまたワゴンにクローシュやワイングラスを乗せて部屋から出ていった。その姿を見ているうちに、わたしの前にはティーカップとティースタンドが準備されていた。
これからアフタヌーンティーを楽しむようだ。
……こんな贅沢して大丈夫? もう一生ここに居たいんだけど。
わたしがティーカップを持ち上げると、柑橘系の爽やかな香りが鼻を掠める。
「すごくいい香りね。なんの茶葉を使っているのかしら?」
「その紅茶の茶葉は、この領国の北の温暖な地域に咲く花の葉を使っております。秋頃には美しい花を咲かせるのですよ」
「この紅茶の茶葉は栽培すると同時に、転移系魔法陣でこの屋敷まで直送されて、完璧な状態で加工されています」
わたしは口に含んだ紅茶を思わず吹き出しそうになった。
「て、転移系魔法陣?」
「えぇ、ご存知ないですか? この屋敷を中心として領国のそれぞれの地域の館まで転移することができるのです」
「そのため、その地域の産物の納税などで利用されています。馬車では鮮度も保てませんし、時間がかかってしまいますから」
「そ、そうなのですね……」
お待たせしました。
やっとファンタジーっぽくなってきたのではないでしょうか?
わたしがイメージするこの世界の建物は、中世ヨーロッパです。




