襲撃 前編
何が起きたのかわからない。いきなり起きたことに頭が追いつかず、ただ固まるだけ。
「ハ、リン……様、逃げ、て」
「ルックルド!? ルックルド!」
わたしに覆い被さり、倒れるルックルドの悲痛な声と伝言に意識が無理やり戻される。
わたしはやっとルックルドの足から血が滲み出ていることに気がついた。じわりと血が広がっていく。わたしは混乱する頭でふと思った。
……逃げる? 何から?
そう考えた時だった。わたしの頬に温かい何かが伝った。ゆっくりとルックルドから視線を外し、顔を上げると獣としかいいようのない生物がわたしを獲物を見るような目で見下ろしていた。
車くらいの大きさがある化け物は今にもわたしに襲いかかりそうな様子だ。
「ひっ……!」
喉が恐怖でひりついた。まるで呼吸の仕方を忘れたかのようにうまく息を吸えない。カタカタと震える体で、少し後退りすると、目の前の獣が大きく口を開いた。
……もう駄目!!
ぎゅっと目を閉じたと当時に、グサッと何かの音がわたしの耳に届いた。
わたしはおそるおそる目を開く。
「あ……」
わたしの目に飛び込んできたのは、わたしたちを襲った化け物が見知らぬ男の子に攻撃されている様子だった。
男の子は化け物を恐れることなく弓のような武器で攻撃していく。化け物が鋭い爪で攻撃すると、男の子はひらりと高い木に乗り移り、見事に躱した。
明らかに普通の人間にできる技ではない。思い当たるのは魔法だ。きっと何か魔法を使っているのだろう。
男の子はさらに何本か矢を射ると、全て獣に命中した。グオオォ! と化け物が咆哮し、苦しそうに体を捻ると、謎の煙が発生して、化け物が消えた。
……え? 消えた? これも魔法?
先程まで化け物がいたはずの場所には煙しか存在しない。もくもくと浮かんでいた煙が薄くなり始めると、コトリと地面に何かが落ちた。
男の子は、スタッと地面に着地するとそれを拾ってこちらに向かってきた。
「大丈夫か?」
獣を倒した、ハーリンと同じくらいの年齡であろう男の子がわたしに手を差し伸ばした。
……うわぁ、イケメンだ。ずっと思ってたけど、この世界の顔面偏差値どうなってんの?
なんて場違いなことを考えながら、手を取った。
紺青色のサラサラな髪に、紺碧色のサファイアみたいな瞳。男の子はとても端正な顔立ちをしていた。
「おい、後ろの奴は大丈夫なのか?」
「……え? あ、ルックルド!? どっどどど、どうしよう!?」
自分でも最低だなと思えるくらいに忘れていた。わたしは謝りも含めてズサッと滑るようにしゃがみ込む。
新しい登場人物です。
一体どんな人物なのか。
イケメンと美女になりがちなのはお許しください。




