転生
「はっ」
目が覚めると、視界に映るのは見知らぬ天井。この空間は薄暗く、周りの様子が窺えない。体を少し動かすと、フワフワとした柔らかい感触が伝わってきた。
「何、これ。ここ、どこ? わたし、死んだんじゃ……」
『えぇ、あなたは死んでしまったわ』
どこからか、女性の声がした。まるで、頭の中に言葉を直接送り込まれているような、そんな感覚になる。そのせいか、頭が少しズキズキする。
「だ、誰?」
『わたくしはコンドュリーラ、芸術の女神よ』
まるで鈴が転がすような、小鳥のさえずりのような、美しい声がわたしの頭の中に響く。
……め、女神様?
『えぇ、そうよ』
頭に響く声に驚く。わたしは今言葉を発していない。なのに、心の中で考えていたことが伝わった。どうやら本当に女神様のようだ。
『あなたはその身体、ハーリン・トュローラに転生したのよ』
……え、そんな。あ、ありえない。わ、わたしはどうしたらいいんですか。
『どうするも何も……その体で生きていくに決まっているでしょう?』
女神様は何を言っているのか、とでも言いたげな声色でわたしに話しかける。
……ちょ、ちょっと待ってください。それなら、この身体の子はどうなっちゃうんですか?
『あぁ、ハーリンはね、呪いにかかっていたの。あなたがこの身体に転生する前に呪いで死んでしまった、でもハーリンの存在は神々にとって大事なものだったから……あなたに転生してもらったわ』
語尾に音符マークがつきそうなぐらいに軽々とした口調で言う女神様に驚きを隠せない。
……つまり、わたしにどうしろ、と?
『あら、もう大体理解しているでしょう? あなたがハーリンとして生きていくのよ』
……いやいやいや、そんな無茶な。わたしはハーリンさんのことなんて一切知らな……。
「いっ! うっ……」
いきなり私の頭の中に「ハーリン」の記憶がドバッと流れ込んでくる。まるで洪水のように、薫だった頃の記憶もあるのに、約十二年分ほどの記憶が無理やり押し込まれていく。
「い、痛い痛い……!」
苦痛に頭を抑えていると、シャッと軽やかな音がして、光が差し込んできた。
「ハ、ハーリン様!? 大丈夫ですか!?」
さあ、物語がはじまっていきます。
この物語は彼女が幸せになる話……ですが、最初から少し痛そうですね。
ぜひ、彼女を温かく見守ってください。




