騎士の詰所で 中編
ルックルドと呼ばれた男性は、わたしに向かって胸に手を当ててお辞儀した。
「お初にお目にかかります、ハーリン様。ルックルドと申します。以後、お見知り置きを」
「えぇ、よろしくお願いいたしますね。ルックルド」
「ルックルドはすごいのですよ。騎士の試験を四つとも合格しているのです」
騎士の試験とは、一つ試験に合格するごとに、仕える相手の爵位ーーつまりはランクが上がっていく、というものだ。爵位が上の者に仕えることは騎士にとっての誇りである。
ルックルドはこの領国の最高爵位である、公爵の護衛騎士だ。きっと誇るべきことなのだろう。
「あぁ、そういえば今は騎士の訓練場にソルシオール様がいらっしゃいますよ。観ていきますか?」
「お父様が? そうね、せっかくですし観ていきましょうか」
「かしこまりました」
わたしたちが詰所の裏にまわると、騎士達の威勢のいい声が聞こえてきた。
訓練場は森林に囲まれた場所に、丸く土が剥き出しになった場所だった。
「ソルシオール様はあちらにいらっしゃいますよ」
ルックルドが示すところへ視線を向けると、剣を構えた大勢の男性がソルシオールに向かっていくところだった。
「危ない!」
わたしは思わず目を瞑る。キイイィンと金属のぶつかり合う音が響き、ドサッと何かが落ちたような音がいくつも聞こえた。
わたしは恐る恐る目を開く。わたしの目には、何事もなかったかのように佇むソルシオールと、向かっていった騎士が倒れている様子が映った。
「……何が起こったのですか?」
「ソルシオール様は何をしても適う者はいないほどに優秀で、剣技も勉学も全てを我が物とするのですよ」
説明を求めたのに、ルックルドはソルシオールを称賛する。その顔には尊敬の念が伺えた。
「ルックルドは本当に旦那様を敬慕していらっしゃいますね。いつも旦那様のお話をしていますもの」
「あぁ、私はいつかあの方のようになりたいと思うよ。だからもっと強くなって、ソルシオール様をお守りしたいんだが……自分の身は自分で守ると言って聞いてはくださらない。……リリアン、私はそんなにあの方の話ばかりしているかい?」
「はい。いつも嬉しそうに聞かせてくれますよ」
二人の会話にやっぱりな、と思う。あの堅物そうな顔から推測できる性格そのままだ。
……いや、それよりも! 『いつも』? なんかリリアンとルックルド仲良くないか?
ソルシオールについて、
そしてルックルドについて。
性格がわかるといいな。




