花園とお父様からの呼び出し 後編
「お食事中失礼いたします。ハーリン様」
「あら……あなたは確か、お父様の?」
「はい。旦那様の執事長をさせていただいております」
昼食を食べていると、黒いスーツに身を包んだ男がわたしの部屋に訪ねてきた。
彼はわたしにも見覚えがある。ハーリンの父のそばにずっといるからだ。
「旦那様がハーリン様のお描きになった絵画を拝見したいとおっしゃっているのです。ご都合が会う日はいつになりましょうか」
「わたくしは別に今日でも構いませんよ。お茶の時間をご一緒にいかがかお聞きくださいな。場所は……そうね、三階のバルコニーでどうかしら?」
「かしこまりました。ハーリン様のご配慮、ありがたく承ります」
執事は恭しく一礼し、部屋に戻っていった。
「本日はお招きいただき誠にありがとうございます。お父様」
わたしは丁寧な仕草を意識し、カーテシーを行う。
「あぁ、座りなさい」
……うぅ、気まずい。まだこの人のことはよくわかんないんだよね。
「では早速、見せてもらおうか」
「はい……リリアン」
わたしがリリアンに声をかけると、布のかかった状態のキャンバスを持ってわたしたちの間に置いた。
お父様が布を取ると、食い入るようにわたしの描いた絵を見つめる。
絵画から目を離すと、お父様はふぅと眉間を押さえながらため息を吐く。
……んぇ!? た、ため息? なんかしちゃった?
わたしが笑顔のポーカーフェイスの裏で慌てていると、お父様が口を開いた。
「ハーリン、これは『コンドュリーラの憩いの場』を描いたのか?」
「……コンドュリーラの憩いの場?」
「あぁ、離宮の庭園の塀の奥にあった花園だろう?」
……コンドュリーラってどこかで聞いたような……っていうか、やっぱりあそこって入っちゃダメだったのかな!?
「は、はい。あの、お父様。申し訳ございません、勝手に立ち入ってしまって……」
「いや、別に良い。それよりハーリン、其方礼拝堂に入れたのか?」
なぜ礼拝堂に入ったことまでバレてしまうのだろうか。わたしは焦りを通り越して、気が遠くなってきた気がする。
「……はい、入りました。ですが、礼拝堂と何の関係があるのですか」
「コンドュリーラの憩いの場は礼拝堂で神に祈りを捧げ、認められたものだけが立ち入ることを許されている場所だ。しかし、礼拝堂に立ち入るためにも、それなりの魔力がなければならない」
「……わたくしに、魔力というものがあるのですか?」
わたしが神妙な顔でお父様に質問すると、呆気に取られたような顔をする。
「……そのようなことも知らないのか……今すぐ魔法学の勉強が必要だな。家庭教師をつけよう」
……魔法陣とか魔石とかあるんだし、もしかしたら魔力もあるのかな? なんて思ってたけど、ほんとにあるなんて思わないじゃん!
「ハーリン、あの花園に入れなければ公爵になることはできない。其方にはその資格があったのだろう……どうだ、魔術を学ぶ学校へ通ってみないか?」
「学園……」
わたしは前世、いじめられていた。そのせいか、学校への忌避感がすごい。
……でも、魔法ってちょっと面白そうなんだよね。
「お父様、その……学園へはリーズンも行くのでしょうか」
「いや、アレには到底無理だろう。魔力がないからな」
……え、そうなの!? あんなに偉そうなのに?
だが、それならば行きたい。ハーリンを悪く言ったり、リリアンに意地悪したり、あんなのと一緒の学校なんて嫌だ。
「それなら、行きたいです。学びたいです!」
「よし、決まりだな。春になれば入学だ、準備しておけ。手続きは私がする。もともと入学させるつもりだったしな」
「はい!」
……ていうか、じゃあガーシェスって何者?
ちょっと長くなりましたね。
わたしは大体一話1000文字ぐらいなのですが、
今回は1573文字……いや、そこまで変わらないか。
でも、わたしの労力的には大きい違いなんですよ!




