花園とお父様からの呼び出し 中編
「……完成!」
わたしは完成したキャンバスを持ち上げて、自分の描いた絵を見つめた。
……ていうか、上手くない? ハーリンの才能とか?
自分の描いた絵だとは思えず、むう〜んと唸っていると、いきなり誰かに後ろから声をかけられた。
「貴方様が女神様の器ですか。これはこれは……お美しい」
「……どちら様かしら?」
わたしが振り返ると、そこには赤いスカーフを着けた老人が立っていた。
「おお、ご挨拶が遅れましたな。私はこの庭園の庭師をしております。ガーシェスとお呼びください」
老人が胸に手を当て、片足を下げるとペコリとお辞儀した。
「あなたがこの庭園の……わたくしはハーリン•トュローラ。一度この美しい庭園の手入れをしている方とお話ししたいと思っていたのです」
「ハーリン様! どこにいらっしゃるのですか?」
花園の外からリリアンのわたしを探す声が聞こえた。
わたしが花園を出ると、ガーシェスも外へ出る。そして、周りの蔦がカサカサと動きアイアンゲートが隠されていった。
……不思議だねえ。どうなってんだろ。
「ハーリン様! もう、一体どちらに……そちらの方は?」
リリアンがわたしの前のガーシェスに、警戒を露わにする。
「彼はガーシェス。この庭園の庭師なのですって」
「庭師……もっ、申し訳ございません! わたくし……」
「いやいや、お会いするのは初めてなのだから仕方がないじゃろう。構わんよ」
明らかな警戒を失礼と捉えて、リリアンが謝る。ガーシェスは、なんともないように髭を触りながら笑った。
「ああ、そうだ。お嬢様、こちらを」
ガーシェスが何かを思い出したとでもいうように、腰につけた皮袋から宝石を取り出し、わたしの手のひらに握らせた。
「……これは?」
「……いずれわかりますよ。ずっと身につけておいてください……それでは、またお会いしましょう」
「えっ! あ、ありがとう!」
そのまま腰に手を当て、歩いていく背中に、わたしは慌てて声をかけた。
「ハーリン様、何をいただいたのです?」
「……宝石、かしら?」
わたしはガーシェスに貰った、金色の金具で縁を囲んだ宝石を太陽にかざした。黒に近い赤が、太陽の光で燃えるように輝く。
「わあ! ワインレッドの魔石、初めて見ました!」
「ワインレッドの魔石……?」
「ワインレッドの魔石って、すごく希少価値が高いんです。魔獣を倒せば得られる魔石ですが、透き通った赤、青、黄の魔石はほとんど得られることがないそうです。……とても高価なものなのでは?」
わたしはもう一度魔石に目を移した。光が当たる向きによって、様々な色に変化する美しい魔石ーー本当にファンタジーすぎる。
「なら、この髪飾りやドレスについた宝石も魔石なのかしら?」
「おそらくそれは、不純物を取り除いた魔石でしょうね。普通の魔石は黒いモヤがかかっているんです。平民街ではそうやってモヤを取り除く仕事もあるそうです」
「へえ……」
謎の老人。
庭園の庭師でした。
そして魔石! 新しいワードです。




