花園とお父様からの呼び出し 前編
「ねえ、リリアン。頼んでおいたものは用意できた?」
「はい。旦那様が最高級のものをご用意してくださいましたよ」
わたしは自室で昼食を食べながらリリアンに問う。
どうやら無事に準備できたようだ。
……わたしの画材!! こればっかりは公爵の地位に感謝だね!
「さあ、リリアン! 早く行きましょう!」
ワクワクと目を輝かせるわたしを見ると、リリアンはクスクスと笑って、画材が入った木箱を持った。
「わたくしは絵を描く場所を探すから、リリアンはお花に水でもやっておいてちょうだい」
「かしこまりました。遠くまでは行かないようにしてくださいね」
まるで小さな子供に言い聞かせるようにリリアンが言う。わたしはそれを背中で聞きながら、昨日の蔦で覆われた塀まで走って行く。
「んーと、確かこの辺で……あっ光った!」
昼間だからか、そこまで目立ちはしないけれど、昨日と同じように光がすーっと動き出す。そして、アイアンゲートが蔦の中から姿を現した。
「うふふん」
わたしは早速準備を始める。簡易の小さな椅子を置き、その前にイーゼルを置いて、キャンバスを乗せた。
画材の入った木箱を開ければ、たくさんの絵の具と数種類の絵筆が顔を出す。
「はわわわわ! ずっとこんなところに閉じ込められてたなんて! 可哀想に、今すぐみんな使ってあげるからね!」
わたしはいくつかの絵の具を取り出すと、この世界の言葉で記された絵の具の名称を読む。
「プリズ……ファルトストーム、ベネスティン……ミュヅィト」
……全部どんな色なのかさっぱりわかんないね。まあでも好きなように描けばいいか!
わたしはパレットに絵の具をたくさん出して、筆を構えた。
彼女の筆捌きは前世のような迷いがなく、自由に、それでいて丁寧に……キャンバスに色とりどりの線が引かれていく。
楽しそうに目を細めて笑う彼女の頬は紅潮し、金色の髪を背中に流す仕草は、誰もが目を奪われるような美しさがある。
今、誰が声をかけたとしても彼女は気が付かないだろう。今、彼女は絵画に、絵を描くことに、全てを捧げている。
そんな彼女は気が付かなかった。
女神が安心したようなため息を吐いていることに。
絵を描くという動作を前に、
キャラがだいぶ変わっていますが
これが本来の姿です。




