第2話
俺が小学校に入ったらクラブに入りたいと言うと母は少々悩んだもののOKを出してくれた。男子を産んだことによる補助金やその他の収入もあるらしく金銭面は大丈夫と後押ししてくれた。正直小学生になる子供に言う話ではないが、母は俺が金銭面を不安がっていることを見抜いていたからあのようなことを言ったのだろう
後はリカが良く来るのでリカ家とも仲良くなっていた。リカのお母さんもなんかいい人そうだった。雫さんは仕事だから目を光らせていたが……。そんなことはどうでも良く、もうすぐ小学校。楽しみ!
すっごく居心地が悪い。男子は同級生にいないし、上級生も殆ど来てない。話せる奴はリカ位しかいないのにクラスが違う。同じ幼稚園や保育園出身のやつらが固まってボッチ状態。そして珍しいものを見るような眼で見られてパンダに転生したのではないかと思うほどの視線を注がれる。そりゃあ上級生も来ないわ。こんなに視線を浴びたらおかしくなる。まあ今日からクラブだ。まあ体験だけど、まあ入るだろうな
倉敷ガールズ……よく考えたらガールズにボーイが入るのは大丈夫なのだろうか。いや、男女関係なくって書いてたからセーフだ。セーフなはずだ! 学校が終わった後、リカと一緒にクラブ体験に行く。雫さんの車で十分ほどで目的地に着いた。すでに準備している保護者や監督らしき人、そしてユニフォームを着た選手が準備運動を開始していた
「あ、星野さんですか?」
「はい」
「では、こちらに」
監督が俺たちに気が付き、グランド内に案内する。にしても若い。個人的に中年辺りの人が監督をやっているという勝手な偏見があったが……三十もいってないんじゃないか?
体験レッスンで一通りやってみた。……うん、俺の打撃センスと守備センスにみんな苦笑い。逆に投球は褒められた。皆和気藹々としていて、低学年クラスはみんな友達って感じで楽しかった。体験レッスンが終わり、母が迎えに来た。母に入会したい旨を伝え、軽い説明と貰った書類に印鑑やユニフォーム等の購入希望書を記載してもらい無事入会した
入会以降週四で楽しみが増えた。今の俺は幸せホルモンに全身を支配されている。多少の快感があればトぶ。マジで楽しい。守備も漸く後ろではなく前に飛ばせるようになったし、打撃も……うん、まあ前には飛ぶようになった。バントか?と思うほどの死んだ打球だが……まあヨシ! 対外試合はまだ経験してない……というよりも試合をするのは上級生で下級生は基礎練中心で偶に紅白戦があるくらい……まあその紅白戦も三回までしかないけどそれでも楽しい。初めてやる多人数での練習は常に新しいことを俺に教えてくれる。壁当てでは得られない人が打席立つことで得られる経験は俺の好奇心を刺激するのには十分だった
「ねえ~、トモ~」
「どうした~?」
「私キャッチャーやろうかなって思ってるんだ~」
「ピッチャー諦めんの?」
「ん~、やるけどさ~、トモの球を受けたいし、なによりも......」
「キャッチャーがいないしね~」
そう。キャッチャーがいないのだ。俺の学年にはキャッチャーがいない。人が少ないから仕方ないとはいえ、上の学年にもキャッチャーは少ない。後輩のキャッチャーが入ってくる場合もあるが、最初からキャッチャーと言う子は珍しい気がする。大抵は投手か二遊間に憧れて、そこからコンバートと言う形だ。しかし、キャッチャーは必要。確実に出るために今の内からキャッチャーの経験値を貯めて背番号を貰うというのは賢い選択に思えた。けど、彼女は投手としての能力も高い。コントロールは荒れ気味であるもののその分ストレートは雫さんが舌を巻くほどだ
「じゃあ俺とリカで優勝バッテリーだな」
「いいね~、小中高と一緒に全国獲っちゃいましょ~」
クラブで友人が出来たとはいえ話すのはリカが多い気がする。同じ小学校、ご近所さんっていう要素も大きい
「じゃあ、座ってみてよ」
「ほい!」
「おー、様になってんじゃん」
「ふっふっふ、私、トモと違って後ろにそらさないから!」
そうどや顔で言われた。何も言えない。守備率が三割なのは言われても仕方ない。なぜバント処理でもミスってしまうのか。バント処理失敗してセカンドに投げた結果センター前サヨナラになって以降雫さんに家に帰ってもバント処理やらフライ処理、ゴロ処理の練習を手伝ってもらっている。お陰で暴投は減ったし、弾かなくなったが、丁寧にやりすぎて内野安打にされてしまう。だが、それでも進歩している。もっと前に、もっと前に進める。やっぱ野球って楽しい
反面リカは守備がものすごく上手い。二遊間の練習でも一番上手かった。俺と真反対にいる存在だ。だからちょっと意地悪がしたくて小学生では禁止されている変化球を投げることにした。投げるのはスプリット
「「ッ!?」」
後逸した。思いのほか落ちた。いや、落ち過ぎた。あそこまで落ちた記憶はない。なんだ? 何が違った? 踏み込み? 握り方? 縫い目? 振り方? 角度?
「リカ......もう一回」
「......いいよ~、私も逸らしたまま終わりたくないし~」
幸い踏み込みは跡がある。あとはそれ以外の要素を変えてみる。あの瞬間を再現する。そんな反復は得意だ。なんせ……一人で何回もやってきたんだから
リカSide
トモが変化球を投げてくるのは想像がついた。トモは漫画に登場するような王子様ってタイプでもないし、ネットとかで見る現実の男の人って感じでもない。他の友達と距離感が変わらない普通の子。ただ一緒にいて、一緒に遊んで、一緒に野球をする。そんな関係。だからわかった。あんなこと言ったらトモは後ろに逸らすような球を投げてくるって。けど、私は捕れる自信があった。だって同年代で一番守備が上手いから。……けど友の球は捕れなかった。あそこまで落ちるんだ。そう思った。そして満足げなトモが見られると思ったけど、そうじゃなかった。トモもなんであんなに落ちたのかわかっていないようだった
「リカ......もう一回」
トモがそう言った。私も同じことを言おうとした。だって、やられたままじゃ嫌だから。トモは投げるたびに投球動作を変えている。さっきの再現をしようとしている。そしてその顔はとても楽しそうだった
けど、十回試したくらいでシズクさんに止められた。ケガのことを言われたら退くしかないがトモは構わず続けようとした。その際ガチ目に怒られていて少し涙目になっていた。トモが泣くことは見たことがなかったのでなんだか変な気分になった
その後解散して家に帰ってお風呂に浸かりながら今日の出来事を思い出す。あんな顔したトモがずっと頭に思い浮かぶ
「かっこよかったな......」
そのつぶやきは私にしか聞こえない
こんにちは、月照です。純愛っていいですよね……純愛×幼馴染の漫画が好きです
誤字脱字、誤記等ある場合は報告してくださると幸いです
そしてこの作品のコメント・評価・ブックマークも是非ともお願いします




