謝罪してみた
俺はケーキを頬張りながら部屋へと戻る。
「糖質が筋肉落とすのにいいからって1ホール食えって無茶な話だよなぁ」
俺は半分食べ終わる。
俺が戻るとアステルが頬を膨らましてベットに座っていた。
「アステルいたのか」
「……」
アステルは俺のことを完全に無視する。
……やべぇ、やらかした。
どうしよう。
どうやってアステルの機嫌を……
俺はケーキの箱を見つめる。
「こちら、どうぞ」
俺はアステルの前にケーキを差し出す。
アステルはケーキをじっと見ると俺の方を向く。
そして、そっぽを向く。
アステル、にーには本当にごめんって思ってるんだよ。
俺が冷や汗を垂らしているとアステルが口を開く。
「……あーんして」
「え?」
「あーんしてくれたら許す」
俺はそれを聞いて良かったと胸を撫で下ろす。
アステルに近づいてケーキをフォークで小さく切る。
そして、フォークで刺し、アステルの口元に運ぶ。
「あーん、して」
「あーん」
アステルは美味しそうにケーキを頬張る。
「うん。おいしい」
アステルは無邪気な笑顔で笑う。
「よかった」
俺はゆっくりとアステルの横に腰掛ける。
「じゃあ、にーに聞かせてよ、ダンジョンの話」
「あぁ、もちろんだ。まずな……」
俺は色々教えた。
落とし穴に落ちまくったこと。
モンスターに襲われまくったこと。
やべぇゴーレムに殺されかけたこと。
「……で、その奥で見つけたのが星の羅針盤っていう願いを叶える羅針盤なんだ」
「え、すごい。にーに見せてよ」
「いや、持ち帰ってないんだ。ごめんな」
「残念」
アステルはガクッと落ち込む。
……あ、やばい。
星の羅針盤のこと教えちゃった。
「アステル、この羅針盤は俺達の間だけの秘密な?」
「え、なんで?」
アステルは純粋な疑問を投げかけてくる。
アステルの周りに知られると政治利用とかで黒い使い方をうんたらこうたらって説明するのめんどくさいなぁ。
「秘密があった方がなんか面白いだろ?」
「!たしかに!」
アステルの顔がぱあっと明るくなる。
足をブンブンと振る。
「じゃ、にーにとの秘密な」
「うん! 秘密」
俺達はニーっと笑い会った。
「ユウヤ様、アステル様、ご夕食の時間です」
メイドの人がドアの向こうから話しかけてくる。
「はーい。行こ、にーに」
「あぁ、行くか」
俺達は夕食を食べに向かった。
俺の体を見たイスタとケンケンが驚いた事は言うまでもない。
ミュールはご飯を食べてから気づいた。
――――――王の間――――――
宰相は王と口論になっている。
「アステル様を王にすべきです! あの予知能力はたとえ第六王子であったとしても王にすべきです!」
「いやだから言っておろう。アステルの性格じゃ政治は無理であろう」
「そんなの、他の貴族が納得しません! この国は元よりそれに貴方様も能力の高さで王になったではありませんか!」
「アステルの能力は高くとも、頭が政治に向かんと言っておるのが分からんか!」
王様と宰相は互いに食い下がらない。
「なぁ、つまり、これ何が言いたいんだ?」
「お前、一応騎士だよな? 家で何学んだんだ」
「筋トレ方法」
一般騎士はバカ騎士に呆れる。
「簡単に言うとな、頭いいメタルク様に政治任せるか、予知能力の高いアステル様に政治任せるかって話だ」
「それなら頭いいメタルク様に任せた方がいいだろ?」
「話はそう単純じゃねぇよ。この国が成立してから今まで予知能力の高さで王を選んでたんだからな」
バカ騎士はほへーっと言った顔をする。
一般騎士は絶対に理解できてないことを理解した。
「それより、ユウヤ殿の筋肉すごかったな。神聖魔法使ったとは言え、あの筋肉するのは地獄だろうに」
「まぁ、皆アステル様大好きだからな」
「へ?」
「おま、マジでバカなのか?」
一般騎士はドン引きしたような顔をする。
「皆で言ってたじゃん。アステル様をユウヤ殿のパーティに入れてアステル様を王位継承問題から外そうって。その時にアステル様を守るためにユウヤ殿鍛えようって」
「あ、そうだったな。ごめんごめん」
バカ騎士はハハハと笑う。
一般騎士は疲れたような顔をする。
「……今日はこのくらいで良いだろう。今夜もお星様が綺麗だ。我はお星様を見てから寝る」
「……はい」
宰相は眉間にシワをよせ、歯を食いしばりながら王の間の扉を開け、バンッと強く閉める。
「こりゃ、次の王様ワンチャン決まらないかもなぁ」
「え? なんで?」
「もうお前には説明しねぇよ、バーカ」
――――町の外の森の中――――
宰相は魔法を使って次々にモンスターを薙ぎ払う。
「クソが! クソが! クソが!」
宰相は我を忘れてモンスターを倒す。
モンスターの死体には目もくれない。
「クソが!」
宰相は怒りのままゴブリンを殴り飛ばす。
握った拳には返り血がついていた。
「私は間違ってない、私は正しいことを言ったまで。なのに、なんで!」
宰相はさらにゴブリンを殴る。
体全体にベチャッと血がつく。
宰相は息を荒らげる。
「私は、間違ってないはずなのに……」
宰相は落ち着いたのか、動きが止まる。
「いかんいかん、早く帰らないと。流石に夜の森を歩くのは危険すぎる」
宰相はスタスタと歩く。
「そうだな、危険だな」
大柄の角の生えた鬼のエクスが宰相の前に現れる。
「夜に魔族に出会うとはな。お星様は私を見捨てたか?」
「お星様は俺達のこと見えねぇだろ。仕方ねぇよ」
「ま、そうだ、な!」
宰相は後ろに飛びながら魔法陣を作り出す。
「シューティングスター!」
魔法陣から無数の岩がエクスめがけて飛び出てくる。
エクスは金棒でその全てを砕く。
「スターフレイム!」
空に浮かぶ魔法陣から無数の火の玉がエクスに降り注ぐ。
エクスはそれを受けながら歩いて宰相に近づく。
火が皮膚についたのに燃えやしない。
「夜は怖えだろ」
「これぐらい予想済みだ」
宰相は腕を高く上げる。
「メテ――」
宰相の魔法陣が出てきて光り始めた瞬間、エクスが宰相の頭を鷲掴みにする。
魔法陣は光を失い消える。
「……待って」
茂みの中から口に小さな牙のある吸血鬼のナジェが出てくる。
「そいつ、服が、豪華。多分、貴族……その中でも、位が、高い」
「そうか。じゃあちょうどいいな」
「何をする――」
エクスは思いっきり宰相を地面に叩きつける。
宰相は気を失う。
「じゃあ、やる、ね」
ナジェは宰相の首筋をかみ血を吸う。
しばらく、飲んだ後、血色の悪い宰相は起き上がる。
「……」
宰相の目から生気がない。
「これならもしかしたら星詠の国を消せるかもな。大手柄だぜ、ナジェ」
「もう少し、相手を、見てあげて……」
宰相はトボトボと王国へ向かって歩いていく。
「アステル様、貴方様を王に……」
エクスとナジェの2人は宰相の背中を見る。
「一応、星から、見えなくなる魔法も……かけといた」
「よし、他に狩れそうなやつ探すぞ」
「うん……」
エクス達はそうして闇に消えていった。




