裁判されてみた
俺は牢屋の中にいる。
「ユウヤ、私と一緒に冒険してくれてありがとう」
「あの世でも元気でっす」
「ん、ばいばい」
皆が、俺の面談に来ていた。
「まだ俺が死ぬとは決まってないんだぞ」
「流石に国宝を持つのは……」
「忘れてたんだよ。てか、ちょっと調べたら国宝とは別のスターロッドって分かるだろ。この世界の警備組織ザコ―」
俺はため息を漏らしながら椅子にもたれ、天井を見る。
すると、上から鬼の顔をした看守が俺の顔をのぞき込む。
「鑑定技術はちょっと特別ですもんね。仕方ない仕方ない」
看守が1歩後ろに下がる。
死ぬかと思った。
「アステル様が色々掛け合ってるみたいっすけど、国宝は流石に王族でもどうにも出来ないと」
「国宝は国家の宝だからね。それが本物偽物と関わらず一般人が触ってることが問題なんだよ。やってることは女神像に唾吐きかけるのと変わらない」
いや、流石にそれは変わるだろ。
「面会時間はもうおしまいです」
「じゃ、明日法廷で会おうぜ」
「意味違う気がする」
俺は牢獄の中に戻る。
最悪、逃げるか。
法廷である城の中は牢獄にいる時に調べ尽くした。
繋がれる手錠は多分ミュールにも壊せないだろうけど、手を使わずに逃げる方法ぐらいあるだろ。
「さてと、そんなことよりコメントまた来てるかもだしそれ確認して――」
「さっさと寝ろ!」
俺は看守に言われ、いやいや寝る。
俺は城の中に入る。
前に来た時は食事をしたところが裁判ようにカスタマイズされてる。
流石に緊張してきた。
「被告人、ユウヤ入れ」
王様が威厳ある風に言う。
俺は被告人台に立つ。
傍観席で一般人達が見てるな。
ここで公演してぇ。
「罪状は国宝所持、以上。弁護人、何かお願いします」
王様適当だなぁ。
「被告人ユウヤ殿は……国宝持ってました。そこに異論はありません。よって死刑が妥当!」
「異議なし!」
検察側と弁護人の意見が合致する。
「は?」
弁護人何やってんだよとかクソ言いたい。
俺は王様の方を見る。
王様はグッドポーズを取る。
全然良くないからな?
「被告人は首吊り台に!」
「いやいや待て待て。お前らはなくても俺はめっちゃ異議あるんだよ。弁護人はもっと弁護しろよ!」
騎士は俺を押さえつけて首吊り台に移動させられる。
「やだぁ、死にたくなーい。2回も死ぬとかやだぁぁぁ」
俺は滝のような涙を流す。
俺は騎士に首吊り縄に首をかけられる。
「やだぁぁぁぁ!」
俺が泣き叫んでいるとドアがバンっと強く開く。
「異議あり!」
メタルクさんが趣味の悪い金ピカ服光らせてやってくる。
「メタルクさん」
俺の口からポロッとこぼれる。
ここから逆転できるのではないかと心躍る。
「様な」
「メタルク様」
メタルクさんは弁護人側の机の前に立つ。
「国宝が奪われたからと国金庫を開けてみれば普通にスターロッドがあった。つまり、被告人はスターロッドを盗んでない!」
「そこから分かってなかったのかよ!」
弁護人も検察も調査雑すぎだろ。
「そして、ユウヤ殿は先日星屑のダンジョンに潜っていた。スターロッドの製作年とあのダンジョンの製作年はかなり近い。そして、あそこにもお星様つながりの魔道具がたくさんある」
メタルクさんはバンと机を叩き検察側を指さす。
ちょっと気持ちよさそうだ。
「よって、スターロッドと類似するものがあっても不思議ではない!」
「た、たしかに」
これもう勝ったな。
俺、帰ったらアステルと一緒に過ごすん――
「ですが、国宝そのものではなくとも国宝に類似したものを一般人が持っていた。これはどうします? 我々にもメンツというものがあるんですよ? 王子」
検察側の面倒くさそうなオッサンがそう言う。
や、やべぇ。
俺の足がプルプル震える。
「そうだそうだ」
オッサンの隣の検察もそう言う。
お前は黙れよ。
「たしかに、国宝に類似したものとはいえ他の者から見れば国宝だ。それに、一般人が国宝持つのは国家の威厳にも関わってくる」
「そうです。ここは見せしめのためにも殺すのが最適ですよ、王子」
「そうだそうだ」
メタルクさんは黙り込む。
あ、死んだわ、俺。
ここまで来たら期待なんかせずに死のう。
「しかし……」
メタルクさんはまっすぐ検察側のおっさんを見る。
「可哀想じゃないですか。ダンジョンでせっかく手に入れたもののせいで死ぬなんて」
「王子?」
「えぇ、とても可哀想」
「感情に訴えかけてもダメですよ、王子」
メタルクさんは巾着袋から紙の束を取り出す。
「なので、こちらの案でこの法廷を閉じさせてはいただけませんか?」
「メタルク、説明よろしく」
「はい、父上」
メタルクは紙を分かりやすく検察に見せる。
「ユウヤ殿が取ったスターロッドは我々が回収。そして、ユウヤ殿には罰金200兆ビットを請求する、というのでどうでしょうか」
国家予算でしか聞かない単位出てきた。
これ、俺が死んだ方がマシか?
「まぁそれでいいだろ」
「よくないよくないよくない」
「へいてーい!」
王様はガベルを強く叩き、裁判は終わる。
俺は体の力が抜けて膝から崩れ落ちる。
え、なに200兆って。
臓器売るってレベルじゃねぇぞ。
騎士は俺を連れて城の客室に連れていく。
客室には王様とメタルクさんがいた。
「よかったな、ユウヤ殿」
メタルクさんは俺にグッドポーズを向ける。
「よくねぇよ!」
俺はバンと机を叩く。
騎士の人は凄い形相で俺を睨む。
「……よくないです」
「なぜだ?」
「だって見たこともない額のお金を支払わないといけないんですよ?」
メタルクさんと王様は互いに見合うとハハハと笑う。
「そうかそうか。すまない。あれは嘘だ」
「嘘?」
「あぁ、貴殿を助けるためのな」
「でも、そんなのすぐバレますよ? 200兆もあるのに国民の生活が一切変わらなかったら皆怪しみますし」
「まぁたしかにな」
メタルクさんは椅子に座り、お茶を飲む。
「そもそもこんな裁判みたいなことは我が国では開かないんだ」
「お星様が事件を未然に教えてくれるしの。それに、起こってもその後の事もお星様任せじゃ」
「法律も最低限のことしか書いてないしな」
メタルクさんはお茶に砂糖を入れる。
甘党なんだ。
「流石に国宝ともなると国として何もしないと他国に顔向けできなくなるから今回しただけだ」
だから、あの弁護人と検察は下手くそだったのか。
俺は深くため息をついて椅子にもたれる。
「でも、嘘はすぐバレますよ?」
「大丈夫だ」
「どうして言い切れるんです?」
俺は疑い深く聞く。
「アステルが持ってるお金を全てくれたんだ。冒険者として稼いだお金をな。それを使えば国民の生活を少しだけ上げることができる。そうすれば、国民も疑いの余地がなくなるだろ」
アステル、兄ちゃんのためにここまでしてくれたのか。
ありがとうな。
「それに、200兆を本当に貰ったかどうかなど国民は誰も分からんしな」
政府がどうしてるかが不透明なのはいいことなのか?
俺がうーんと悩んでいるとメタルクさんが隣に座る。
「しかし、ユウヤ殿のスターロッドは回収させてもらう。申し訳ないがな」
「いいですよ」
俺は巾着袋からスターロッドを取り出しメタルクさんに渡す。
メタルクさんはそんな俺にキョトンと肩を落とす。
「……もう少しごねられると思ったんだが」
「子供じゃないんですから。流石にここまでのことされてまだ持ちたいなんて言いませんよ」
メタルクさんは俺のスターロッドをぎゅっと握る。
「すまない」
メタルクさんは深く頭を下げる。
「この代わりと言ってはなんだが専用の杖を職人に作らせよう」
「いや、そこまでしてもらわなくても」
「なに、これは私の身銭を使う。私からの迷惑料だと思って受け取ってくれ」
まぁいいか。
貰えるもんは貰っとこう。




