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異世界でも動画配信者  作者: ワクルス
お星様の言う通り
62/73

豚箱生活してみた

俺は気づくとまた牢屋に入れられていた。


そうか、俺、アステルの弟になったからなんか色々あって入れられたのか。


牢屋のベッドは固く、薄暗く、少し肌寒く感じる。


「アステルー、お兄ちゃんを助けてー」


反応がない、誰もいないみたいだ。


俺はまたアステルを呼ぶ。


やばい、アステルが来ない。


「アステ――」

「一国の王子様を敬称なしに呼ぶとはどういうりょうぶんだぁぁ!?」


看守は勢いよく現れ俺の牢屋をドンっと蹴る。


ひぃぃぃぃ。


俺はビビり散らかしながら壁に背をつける。


「とりあえず、お前は死刑確定だから。夜露死苦」


こんなヤンキーでも看守なれんのかよ。

いや、逆に怖いからなれるって感じか?


そういうの俺みたいな一般人にしか効かないぞ。

やべ、足の震え止まんねぇ。


「……とりあえず、面白そうだし動画撮ろ」


俺は人魂を出して撮影を始める。


「今回は牢屋にぶち込まれたよ。てことで、異世界の牢屋事情を見ていこう」


よし、挨拶完璧。


牢屋でも撮影できる俺、もしかして動画投稿者として成長してんじゃね?

まぁ、人としては降格してるけど。

豚箱だもんな、ここ。


俺はため息をつく。

アステルが来なかったらどうなるんだろ。


「もしかして、ガチ死刑? いやいやそれはないか」


とりあえず、落ち着くために上げた動画のコメント欄でも見よう。

あ、中型ゴーレム戦のコメント結構ついてるな。


(※これはほぼ無編集です)

(変な獣も無編集です)


やっぱミュールの原獣牙ってやつやばいよな。

あれで攻撃してもビクともしなかった大型ゴーレムもヤバいけど。


(ユウヤ、地味にいいとこ持って行ってて草)

(ユウヤがMVP感はあるんよな。認めたくないけど)


俺を褒める声もチラホラあるな。

今回に関しては俺ちゃんと頑張ったからな。


次は大型のゴーレム戦だな。


(この絶望感やばくね?)

(配信で見てた時、マジで見てられんかった)

(ハラハラしてた人いいね)


123いいねか。

結構多いな。


(あのゴーレム、冷やしてもろくするより融点にさえ達すれば溶かして勝てたんじゃね?)


攻略法をあれこれ考える人達もいるな。


もうあのダンジョンに行くことないから意味ないけど。


……にしても暇だ。


あ、そうだ!


俺は人魂とスクリーンを出して外に出す。

しばらく外をプカプカ浮かせているとイスタを発見する。


【げ、ユウヤのやつが来た】

「なぁ、助けてくれよ。俺、ちゃんと弟は辞めれたからさ」

【あ、そうなの? じゃあ……いいのかな?】


いいだろ。


弟は辞められたんだから。

俺がイスタと話してるとリルナがイスタのそばにやってくる。


【イスタさん、騙されないでくださいっす。相手はペテン師ユウヤさんっすよ】

「おい待て。昨日のことなら謝るからホント助けて」

【冤罪も付けといたっすからじっくり頭冷やすっす】

「冤罪付けちゃまずいだろ。リルナ、お前は俺に貸しあるよな?」

【うち、演技派なんっす。拉致された時も演技っす】

「……いや、あれどう見ても演技じゃねえだろ。てか、そっちじゃなくて――」


――

「ユウヤさん、そのハンバーグ美味しそうっすね。1口くださいっす」

「あ、私も」

「ミュール、お前は自分で頼んだ方がいいだろ。はい、リルナ。これ貸しな」

「はいっす」

――


「――の時のやつ」

「なんでそっちなんっすか」


リルナは驚きあきれるような顔をする。


「なんでって、これしか俺お前への貸しねぇよ。それにハンバーグだぞ? ハンバーグだぞ?」

「精神年齢も急降下してるっす!」

「やっぱ、ユウヤはもう少し冷やしといた方がいいんじゃない?」


ハンバーグ1口あげたのに……


リルナ達は呆れながらどこかへ去ってしまった。


しょうがない、編集でも……


「囚人番号0217番! 出ろ! 仕事だ」

「え? 動画編集の仕事とかこの世界あるんですか?」

「何言ってんだお前。土木作業だ」

「は?」





俺はツルハシを振る。


カキンカキンカキンカキン。


「あんちゃんもっと腰使え、腰」

「俺の腰もう歳なんすよ」

「何言ってんだ若造が、ほらっ」


親方は俺の腰をパチンと叩く。


もういいや。魔力使っちゃお。


「あいつ、これに魔力使ってやがるぜ」

「ぷぷぷ、流石、第六王子にわいせつ罪で捕まっただけはある」


アステルにだけ特別な法が働くのかよ。

まぁ、国が保護しないといけないレベルで可愛いのは認める。

俺なんかお兄ちゃんになっちゃったし。


 俺は必死にツルハシを振るう。


そういえば、あのドワーフの記憶で見て分かったけど魔剣化って剣だけに起こる現象じゃなさそうだよな。

ていうことは、このツルハシも魔剣化的なのできるんじゃ?


それに、ドワーフの記憶を通じてだけど魔剣化のやり方が分かった気がする。

斧とかでも出来てたしこのピッケルでもできるはず。


魔剣化してみるか。


 俺はツルハシに《《特定》》の流れで魔力を注ぐ。


「魔剣化!」


俺の叫びと共に辺りが静まり返る。


シーン。


そして、遂にはコショコショと話し出す。


「もしかしてあいつ厨二病ってやつなんじゃね?」

「関わらない方がいいな。うん、絶対に」

「ていうか、魔剣化出来てないし。ダッセ」


カキンカキンカキンカキン。


俺は恥ずかしさのあまりツルハシを振ることだけに全力を出していた。


ドワーフの記憶ではこれでできてたのにぃ!





俺は牢屋に戻ってきてため息をつく。


「ユウヤ、遊びに来た」


ミュールが牢屋の前へ来て買ってきたであろうサンドイッチを食べる。

ピクニック感覚か?


「えらい可哀想な目に合ってるみたいやな」


ケンケンは哀れみを俺に向ける。


「まぁな。てか、遊びに来たって何も出ないぞ」

「ん? 豚箱の飯っていうのが気になって。豚箱が何かは分かんないけど多分キリタンポークがあるかなって」


キリタンポークとは死んでも温かさを保つ豚だ。

鍋料理とかでよく使われて死にたては火を使わずに作れるからかなり楽なのだそうだ。


「そんなんが出るとは思えないけどな。ていうか、聞きそびれたけどあの原獣牙っての何?」

「ん? お母さんが使ってた」


なんだそれ。


俺達が話してると看守がやってくる。


「ほら、飯だ。食え」

「あざーす……ってなんですか、この味気ないのは」


なんか臭いパン切れにジャムのみ。


「犯罪者に食わす飯はねぇ! 獣人の嬢ちゃんも面会はもう終わりだ」

「豚箱の飯は?」

「このくっせぇパン切れとジャムだよ。早く出てったでてった」

「ガーン」


ミュールは落ち込みながらこの場を後にする。

俺がパンを後生大事に食べているとアステルがやってくる。


「アステル……来てくれたのか?」

「ごめんなさい。本当は早く来たかったけどねーね達が1日は待っといた方がいいって言ってて」

「そうかそうか。お前はわるくないよ。悪いのはあの魔王よりも冷酷な2人だから」


アステルは鍵を開ける。


やっと出所だ。


俺は自由をかみ締めながら街中を闊歩(かっぽ)する。


「あー自由っていいなぁ」

「皆、もうお城にいるからユウヤにーにも行こ」

「あぁ、早く行こうか」


俺は魔法袋からスターロッドを取り出す。


さぁ、お礼参りだ。


ポン。


衛兵が俺の肩に手を置く。


「いや、今回は俺何もしてない。アステルに触れてもない。これ以上無実の人間捕まえるなんておかしいぞ!」


決まった、俺のド正論。

衛兵なんて頭筋肉でいっぱいだろうしこのド正論に反論なんて……


「それ、国宝だよね? なんで一般人の君が持ってるのかな?」

「……あ」


そういえばイスタがこれ国宝って言ってたなぁ。

衛兵は俺を引きづる。


「あはは。どうもユウくんTVのユウヤでーす。今回の企画は国宝持って町中歩いてみたー。いえーい」


俺は無感情で人魂に向かって喋った。

3度目の逮捕にアステルもただただ呆然とするしかなかった。


「いえーい……どんどんぱふぱふー……わーお……」

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