お星様の力見てみた
アステルは俺を引っ張りながら王都を出て遠くに行く。
「ちょっ流石に王族が町の外出るのは不味いだろ」
「大丈夫。セイは冒険者だから」
そう言ってアステルは冒険者証を俺達に見せる。
ほんとだ。
まぁ、第六王子だし王位継承はないだろうから自由に……って、
「A級!?」
俺の驚きにイスタとリルナの2人もアステルの冒険者証を見る。
「ほ、ほんとっす。A級っす。やばいっす」
「A級ってすご」
「ふふん」
アステルは嬉しそうな顔をして俺の手を自分の頭の上に置く。
「褒めて、ユウヤにーに」
「あぁ、凄いぞ」
俺はわしゃわしゃとアステルの頭を撫でる。
アステルはえへへと言って喜ぶ。
可愛い子だ。
「ユウヤ、惚れ薬は一部の資格を持った人のみが持っていいものなんだよ」
「んなもん使ってねぇよ」
「そうだよ、イスタねーね。ユウヤにーにがそんなことするはずない」
アステルは頭の上に置いてある俺の手に触れる。
「ていうか、人間って16歳未満で冒険者登録できたっけ?」
「ん? セイは17歳だよ」
いや、それはさすがに嘘だろ。
「1年でA級って」
「いやいや、そっちじゃないっす。どうでもいい方っすそっち」
「いや、どうでもはよくないよ。私は2年も冒険者してるのに……」
まぁ、17歳なのにこんな子供みたいな見た目してて驚くかもしれない。
でもさ、そんなこと関係なくこいつは俺の弟なんだ。
わしゃわしゃわしゃわしゃ。
アステルはえへへへと笑う。
「そういえば皆、にーにの動画面白いって言ってたよ。セイは忙しくて見れなかったけど」
「そうなんだ。でも、そいつら終わったらすぐどっか言ったんだぜ。酷くね?」
「それはセイの屋台の時間が悪いかも。ごめんなさい、にーに」
なるほど、アステルのせいなのか。
「なら、仕方ないな」
「ユウヤ、お兄ちゃんとしての責務を全うする前に一般人としての常識身につけて」
「え? 俺は王族だろ?」
「う、打首っす」
だって、俺はアステルのお兄ちゃんだし。
2人は俺を人ではないような目で見てくる。
ひどい。
「あ、風キリン」
アステルがそう言うと近くに凛としていてビシッとした規律正しいキリンがいた。
確か、こいつは汚いものが大の苦手で自身の足を常に強力な風魔法で3ミリ浮かしてる。
そのため、別名風神。
頭の角が高く売れるらしい。
本能が全力でやばいと訴えかけてくる威圧感に固唾を飲む。
そして、こいつはA級モンスターだ。
「お星様に聞いたよ。町に行くつもりなんでしょ」
アステルは風キリンを前に堂々と立つ。
「A級モンスターは流石に下がって」
「大丈夫だよ」
「俺はお前のお兄ちゃんなんだから守らないとだろ」
俺はアステルを後ろに下がらせて短剣を構える。
イスタ達も構えをとって風キリンを見つめる。
ミュールはいない。イスタの実力的にまだA級モンスターは一人で前線を張るのは難しいだろう。
俺も前線に出て、死ぬ気で耐えてリルナに任せるか。
リルナがいるんだ。死なない限り死なない。
俺は風キリンを見つめ汗を1滴垂らす。
「にーに、かっこいい。でも、大丈夫だよ。セイは強いから」
アステルは手をかざし大きな魔法陣を展開する。
「シューティングスター」
魔法陣からは火をまとった岩の塊が流れ星のような輝きを放ち風キリンに向かう。
風キリンの強い風魔法の壁も無視し風キリンに岩が当たり風キリンの体から血が出る。
その血を認識した風キリンは怒りをあらわにし辺りにゴロゴロと雷鳴を轟かせ当たりを雷雲で覆い尽くす。
そして、その雷雲の全てを1本の糸のように角に集約する。
角を中心とした空間が歪む。
風キリンは地面を滑るように移動する。
ビュー。
強い風の音がすると風キリンは更に加速する。
「スターバリア」
アステルは星型のバリアを俺達の前に出す。
ドーン!
そのバリアは風キリンの突進を余裕で止める。
風キリンのバリアへの衝突の余波で地面が抉れる。
風キリン強すぎ。
で、その強すぎ風キリンを抑えれるアステルも強すぎ。
アステルと風キリンは少しの間見つめ合う。
「スタースケート」
アステルの足下に星が現れ、アステルの足にくっつく。
キラキラとした光がアステルを少し浮かせる。
「モォォォォ!」
風キリンが鳴くと同時にアステルは風キリンに向かって滑るように走る。
風キリンもアステルの方に向かう。
風キリンの角から電気がアステルに向かって流れる。
バチンバチン
電気の流れる音が空に響く。
アステルは滑らかに避ける。
「スターバリア、メテオ!」
アステルは片手でバリアの魔法陣を出しながらもう片方にはより数段大きい魔法陣を展開する。
バリアは風キリンを囲み閉じ込める。
もう一つの魔法陣は遥か上空から何重にも重なり風キリンを捉える。
「モォォォォ!」
風キリンは角から電気を放ち、バリアにひびを入れる。
「ドッカーン!」
アステルが満面の笑みで拳を握ると魔法陣から十メートル規模の岩が上空に向かって飛ぶ。
刹那、光の尾を引いた岩が雲を突き破り風キリンに直撃する。
それと同時に大地は凄まじい轟音共に揺れる。
ドッシャガーン
クレーターができ、砂埃が舞う。
さっきの轟音が嘘みたいに静かだ。
少しして砂埃が晴れ、風キリンを見てみると、ぐちゃっとなっており、原型を留めたのがの頭部分だけだ。
「つよ」
「えっへん」
これがA級冒険者なのか。
「ユウヤさん、この子何もんっすか。魔法陣多重展開するって」
魔法陣多重展開は例えるなら左手で猫の絵を描きながら右手で犬の絵を描き続けるぐらい難しいものだ。
それを容易にやったアステルはハッキリ言って化け物だ。
「流石、俺の弟」
「だから、あんたは兄じゃないんっすよ」
「そろそろ、現実戻ろうね」
2人は俺に呆れながらもアステルにびっくりする。
「にーに、いる?」
アステルはそう言って風キリンの角を持ってくる。
まるで、作った泥団子を持ってくる子供のような顔で。
「ありがとう。大事にするからな」
俺はアステルの頭をポンポンとしながら角を貰う。
これは流石に売れないな。
「にしし」
俺は感慨深くなり涙目になる。
「こんな立派に成長して……」
「今日初めて会ったすよね!?」
「リルナ、もう諦めよう。ユウヤはお兄ちゃんになっちゃった」
俺の弟、マジ神。
アステルとはそのまま草原で遊び夕方になると王都へ戻る。
「ユウヤにーに、お城に来て。一緒にお星様見よ」
「そうだなぁ。イスタ達も連れていいか?」
「うん! ねーね達も来て。あと、ミュールとケンケンっていうのもいるんだよね?」
ほんと、全てお見通しって感じだな。
「でも、ミュールどこにいるか分かんねぇな。イスタ分かるか?」
「流石に分かんないよ。どうすれば……」
多分食べ物屋にいるんだけどどこにいるかがなぁ。
俺の人魂で探して……
「大丈夫、セイがいるから」
「ん?」
そう言ってアステルは夜空にポツポツと現れた星を見上げる。
すると、アステルの目に宿る星は輝きを放ち髪の毛も淡い青色を放って浮かび上がる。
「そうなんだ。うん。分かった。ありがとう」
お話が終わったのか髪の毛と目が元に戻る。
「ミュールねーねは食べ物屋さんにいるみたい。ついてきて」
俺達はアステルに案内され食べ物屋へと向かう。
やっぱりか。
俺達が食べ物屋に着くとデザート1品だけを食べてるミュールの姿があった。
「ど、ど、ど、どうした? ミュール、お腹下したのか? 薬買ってこないと」
「そうっすよ、ミュールさんが1品だけなんておかしいっす」
「たしか、薬屋はここを出てすぐにあったはず」
「ん? 皆、どうしたの?」
ミュールは首を傾げながらパクッとスイーツを食べる。
「いやだって、お前そんなんじゃ足りないだろ」
「お店入ろうとしたら服装が豪華な人に止められて。お腹空かした方がいいって言われた」
「ミュ、ミュールが目先の食欲より人の忠告を素直に聞くなんて……明日の天気は槍だ」
「にーに、明日は晴れだよ」
アステル、今予知はいらない。
目の前の事実が必要なんだ。
「そこの子、誰?」
「この国の第6王子、アステル様。王族だから敬語使ってね、ミュール」
「ん、分かった」
イスタ、ミュールは黙らせた方が早い。
ていうか、食べない方がいいって言ったってことはその人も予知ができる人間なのか。
多分、流れ的に俺達城でなんか食べるだろうし。
「ミュールねーね。その声かけてきた人ってどんな人?」
「ん? 確か、金ピカしてて綺麗な人」
大雑把だなぁ。
「にーにだ」
「え? 俺?」
「いや、どう考えても実のお兄ちゃんでしょ」
アステルはうんと首を振る。
「多分、メタルクにーにだ」
今の情報でそこまで分かんのか。
相当金ピカなんだろうな。
「早くお城に行こ。ユウヤにーに」
「あ、待てよ」
「ミュールも早く」
「まだ食べてにゃい」
「早く食べるっす」




