星詠みの国に行ってみた
馬車に揺られながらスクリーンを出す。
俺は黒い背景に重大発表と書かれた動画の再生ボタンを押す。
【どうもユウ君TVを見てくれてる皆さん、ユウヤです。こんかいは重大発表ということでね、皆さん見てくれてると思います。先に言っときますがマイナスなことは一切ないです。じゃあ、リルナ前に立ちな】
俺が言い終わるとリルナと場所を交代する。
リルナは恥ずかしそうに立つ。
【う、うちはリルナって言うっす。そ、そのこれからよろしくっす】
【はーい、てことでね、メンバーが増えましたー。パチパチ。そういうことなんで皆さんよろしくお願いします。ではー】
俺の動画はここで終わる。
コメント欄を見てみるとかなりの数来ていた。
(リルナちゃん可愛い)
(目隠れ+天使+一人称うち+語尾がっす=神。属性盛りすぎだろ)
(やばい、一瞬目見えたんだけど綺麗すぎ。イスタ教から改宗しようかな)
誰好き論争でめちゃくちゃに盛り上がってるな。
リルナ教に移る人の大半がイスタ教の人間。
ミュール教は猫耳信者さんを筆頭に意志が固い人が多いみたいだ。
(ミュールちゃんって何歳だと思う?)
(12歳じゃない?)
(逆に20歳とかあって欲しい)
(合法ロリ好きはロリコン界にはいらない。ロリコン界に必要なのは非合法好きのバカだけだ。出てけ!)
(猫耳信者さん流石っす。尊敬っす)
ただのロリコン共だったか。
納得。
「もうすぐ着くよ」
イスタの声で俺は前の方を見る。
俺達は王都を出て別の国へと向かっていた。
「星詠みの国フジルド」
イスタがそう口にするとまるで予知されたかのように門が勝手に開く。
俺達が町中に入ると天文台のような大きい建物が中央にある。
そこかしこに望遠鏡のようなものがあって星読みの国と言われるのも伊達ではない。
冒険者証を見せずに門の中に入って俺達は馬車から降りる。
「着いたー」
ミュールはうーん、と腕を伸ばす。
「な、なんかワクワクするっす」
ワクワクするの分かるぞ、リルナ。
「宿取っとくね。ユウヤは動画のことするでしょ?」
「おう、ありがとう。多分人集りがある所に俺がいるからなんかあったらよろしく」
「大した自信だね。わかった」
イスタ達は宿がある所へと直行する。
じゃあ公演し始めるか。
お、あそことかいいかも。
俺は適当に選んだ場所に立ちスクリーンを出していざ、始めようとするとワラワラと人が俺を囲む。
なんだなんだ?
なんか皆俺の方見てるし。
そんな俺の動画が見たいのか。
しょーがないな。
俺は動画を流す。
「ほんとだ、すごいすごい」
「言ってた通りだったね」
皆俺の動画に感心する。
もしかして、俺の動画ってもうそんな有名になってるのか?
嬉しいものだな。
広告のために早速、そこら辺の武器屋に入って営業するか。
俺は慣れた手つきで終わらせると皆拍手をしてどこかへ行ってしまった。
早いなぁ。
「この町探検してみるか。あ、リルナ最近動画に出たばっかだしリルナ映したいな」
そこら辺にいないかなぁ。
親方、空からリルナが! レベルの適当さでいいからほしい。
「まぁ、そんな都合よく――」
「あ、ユウヤさんいたっす」
都合よすぎぃ。
リルナは上空をバサバサと飛んでいて何も知らない人からすると天使のようだ。
リルナはゆっくりと落ちてきて俺に近寄る。
「人集り探したのにいなかったっす。今日はダメだったんすね」
「いや、さっきまでいたんだよ。でも、すぐにどっか行ってさ」
ほんと、観客の人っていつもそうですね……
舞台上の人のことをなんなんだと思ってるんですか。
俺は悲しみを感じながら人魂を出す。
「なんかまた撮るんすか?」
「うん。だから、挨拶」
「あっう、うちはリルナっす!」
「元気があってよろしい。俺はユウヤです。今回は星読みの国フジルドに来ました。てことで、雑談と街歩きという感じでいきまーす」
「っす」
俺達は適当にブラブラ歩きながらワイワイと話し続ける。
途中、リルナが昼間だってのに望遠鏡を覗きかけて全力で止めた。
危うくリルナが隻眼の堕天使とかいう厨二病満載設定なるところだった。
「あ、そういえば出会うほんの直前にこの辺に人集り出来てたんっすよ。ユウヤさんかと思ったんすけど全然違くて」
「へー。この国は動画より他のが合いやすいのかもな」
文化の違いって結構色々あるし。
「確か、ここを左に曲がったところっす」
人がワイワイと話す声が聞こえてくる。
なんだろうなぁと思って見てみるととある屋台に皆並んで屋台の人と何か話したと思ったら絶望したり舞い上がったりする。
屋台の見た目的に占い場っぽいな。
俺がじーっと見てると屋台の人は俺に気づくとドドドドと近づいてくる。
見た目は小学校高学年ぐらいでミュールより幼く、中性的でどちらかと言うと女の子って感じの子だ。
「あなた、ユウヤだよね?」
キラキラとし純粋で星を宿した眼で俺を見る。
カメラの照明より眩しい。
「え? そうだけど。どこかで会った?」
「ううん。会ってないよ。でもね、セイは知ってる! お星様が教えてくれたから」
お星様? なんだそれ。
「一人称セイって、ちょっとおかしいっすね」
「お前よりもおかしいな」
「なんで比較対象うちなんすか」
俺は屈んでその子の星の目を見る。
すごい目してるな。
「いい? あまり大人をからかっちゃダメだよ?」
「からかってないもん。セイはユウヤのこと沢山知ってるよ。ドウガ? っていうので皆を笑顔にしてるんでしょ?」
合ってるけど、それは多分俺の公演を見た商人とかが……
「あと、好きな食べ物はペヤング超大盛り? っていうやつ。飲み物はメントスコーラ? ってので、憧れてる人はピカキン」
え? めちゃくちゃ合ってる。
この世界にないこと言ってるし本当にこの子、俺のことを知ってるのか?
「あと、異世界から来た」
この子、本物だ。
周りの人達はざわめき皆、この子を見つめていた。
皆、この子を待ってるみたいだし、早く戻そう。
「皆、君を待ってるよ? 早く戻ってあげて」
「や! ユウヤにーにと一緒にいる」
小さな体全体を使って俺の体に抱きつく。
やべぇ、お兄ちゃんになっちゃいそう。
「今日はもうおしまい! 皆のことちゃんと聞いとくから帰って」
この子のわがままに仕方ないかと列をなしてた人達は帰っていった。
この子は俺の腕を掴む。
「リルナ、俺ってお兄ちゃんだったみたい」
「異世界から来た人が何言ってんすか」
あ、そうか。
俺一人っ子だ。
「ユウヤにーに、遊びたい」
「そうだな、遊ぼうか」
動画なんて後回しにしよう。
俺はこの子のお兄ちゃんなんだし。
俺達は手を繋いでランランと走る。
「ハハハハ」
「何やってんすか」
「あ、リルナいた。ユウヤもいるし」
イスタがやってきて俺達に近づいてくる。
「呼んでくること忘れたの?」
「すいませんっす。うち、鳥頭なんっす」
「頭は人間でしょ……ってユウヤ!? その子、この国の第6王子様だよ。何してんの!?」
「そうなの?」
「うん。にーに」
そうなのか。
ん? 王子様?
「男の子だったのか!?」
「ユウヤ、今気にするのそこじゃない。相手、王族なこと考えて」
「いや、この子からこうしてきた訳だし。俺、この子のお兄ちゃんだし」
「いや、違うって言ったすよね?」
あ、そうか。
お兄ちゃんなら俺王族になるもんな。
異世界から来た俺が王族なんて絶対ありえないし。
「そういえば、名前聞いてなかった。名前なんて言うの?」
「セイはアステルって言うの」
「アステル、いい名前だな」
名前、セイじゃないんだ。
「そんなことより遊ぼ」
アステルはそう言って俺を引っ張る。
イスタ達は慌てて俺を追いかけるようについてくる。




