世界の裏側
――――女神の国、エフテリアにて――――
白い羽根を持った1人の獣人が教会に入る。
そこには神に向かって祈りを捧げる、もう1人の白い羽根を持った獣人の少女がいた。
「テレナ様、ご報告でございます」
テレナと呼ばれる少女は振り返る。
右目には何かしらの文字が瞳孔の中に刻まれていた。
「なんですか? フェス」
「ユエス国王都の勇者教の教会にいた天使が1人、教会をやめ、冒険者稼業に集中するという旨の急ぎ便が届きました」
フェスは手紙を取り出し、テレナに渡す。
テレナの光のない目が文字を追う。
「どうなさいますか?」
「そうですね。冒険者稼業に勤しむのは問題ありません。私もやってる訳ですし。しかし、教会をやめてまでするというのは大問題です。速急に教会へ連れ戻してください」
テレナはそう言って手紙を綺麗にたたむ。
「分かりました。しかし、お言葉ですが曲がりなりにも冒険者を志しておられる人を我らのみで抑えられるでしょうか?」
テレナの羽が広がる。
「私に頼るのですか?」
テレナに後光がさす。
その神秘さにフェスの目が下を向く。
「ここはあなたにお任せしたいです。七英雄、清雅の2つ名を持つあなたに」
テレナは少し肩を落とす。
翼をたたみ、フェスに近づく。
「あなたにはもう少し自信を持っていただきたい。手紙を見たところまだ冒険者ですらないではないですか。そんな方に負けると思っておられるのですか?」
「しかし……」
フェスの口がつっかえる。
「私の次を担うものとして恥じぬ振る舞いをしてください。この件はあなたに一任します。話は以上ですか?」
「……はい」
フェスは不安そうな顔をしながら後ろへ下がる。
テレナは元の場所へと戻る。
「リルナ・ライン……天使は神に仕えないといけないのですよ」
テレナは小さく呟く。
そして、手を握りまた祈る。
――――ユニバ国、王都の路上にて――――
「皆、今日も元気かー!?」
「「「「もっちろーん!」」」」
カネルが路上ライブを行っていた。
「今日はライブの前にお知らせがあります」
カネルが真剣な目に観客は困惑する。
「まさか卒業でござるか?」
「嫌でござる! 小生の楽しみがなくなるの嫌でござる!」
観客達の不安の声で溢れかえるとカネルは慌てて静止する。
「そんな重大なやつじゃないから大丈夫」
カネルの言葉に観客はよかったーと安堵する。
「今日お知らせはあれ!」
カネルはとある屋台を指さす。
「あそこの屋台、普段はここからまっすぐ行ったところにある店舗でやってるんだけど今日だけ屋台だったから気になって食べたんだよ。そしたらほんとおいしくてさ。僕、感動しちゃった」
観客の皆は一瞬静まり返る。
「皆に僕の感動伝えたくてさ。どうしてもここで言いたくて」
この静けさにカネルは焦りを覚える。
「カネたその感動を味わえるで、ござるか……いいでござるね。あとで食べてみるでござる」
「良きでござる。良きでござる」
ライブ後の楽しみとして観客達が盛り上がる。
その盛り上がりを見てカネルはほっと胸を撫で下ろす。
「じゃあ1曲目いくね――」
カネルの顔が一気に変わるとその場の雰囲気も変わる。
カネルの熱烈なファンは今日も大興奮だ。
――――科学の国、レゴナスにて――――
奴隷売買組織の1人が城の中に入る。
ガシャンガシャンガシャン。機械が動く音が聞こえる。
城の奥から機械で動くロボットとサイボーグの狭間のようなものがやってくる。
それは白衣を羽織っている。
「またお会いできて嬉しい限りですじゃ」
「俺も嬉しいですよ。勇者パーティのメンバーの1人であり、七英雄、燈明のコピロット様」
「改めて自身の経歴を聞くと違和感を感じますのー。ここじゃなんですし、こちらへ」
ロボットからでる声に違和感を感じてたのは昔の話だと言わんばかりに奴隷商人は気にせず案内を受ける。
「とりあえず、今回も獣人奴隷の大量購入ですか?」
「そうですじゃ。最近の実験じゃすぐには死なんくはなったとはいえまだまだ死にますからのー」
「はは、そうですか。とりあえず、今回はこちらの価格になりますね」
「あれ? 普段よりも安い……というより随分数が少ないですの」
奴隷商人はあぁと何かを言いかけて辞める。
「ワシに聞かせてくれんか? なに、お得意さんのよしみじゃ」
「そうですね、じゃあ。実はボスが行方不明になったんですよ。ユエス国での活動を機にパタッと手紙がなくなりまして」
「それは……大変ですじゃ」
コピロットは奴隷商人をじっと見る。
「……でしたらいい話がございますじゃ」
「なんです?」
コピロットの口角が少し上がる。
「ワシらの技術を総動員するってのはどうですかの」
「いや、それは流石に。お金だって馬鹿になりませんし」
「いえいえ、いつもいい奴隷を貰ってるのでたまには返さんといかんのですじゃ」
コピロットはつらつらと述べる。
奴隷商人はそれを聞き目を輝かせる。
「では、お願いします」
「もちろんですじゃ。また都合のいい日にでも来てくださいですじゃ」
そう言ってコピロットは奴隷商人を送り出した。
「では、すぐに奴隷の方、お運びしますね」
「なるべく頑丈な子がいいですじゃ」
「もちろん、分かってますよ」
コピロットは深くお辞儀をし奴隷商人が遠くに行くまで頭を下げ続けた。
――――視点は戻り、ユウヤへ――――
俺は公演をやり遂げる。
今日もいい反応だったな。
あ、やべ忘れてた。
「すいません、最後にひとつお知らせがあります」
俺の声に反応して観客達が振り返る。
俺はスクリーンに昨晩の男の顔を貼って見せる。
「昨晩の騒音騒動は全部この人のせいです。昨日寝れなかった人多いんじゃないかな? なんで見つけ次第、騎士に通報するなりしてください。騎士もこの人を探しているんで」
俺がそう言うと観客達はワラワラと話し出す。
「昨日のうるさいのこいつのせいかよ」
「俺めっちゃ眠いんだよな、今日」
「見つけたら通報するだけじゃねぇ、ボコボコにしてやろうぜ」
「おうよ」
よしよし、これでこの町にあいつはいられなくなった。
色んな町でも同じことしてやる。
あんな悪人いなくなった方がマシなんだ。
俺は言いたいことを言ってその場を去る。
時間はもう昼か。
俺はギルドに行く。
そこにはメソメソ泣いてるリルナとそれを慰めるイスタがいた。
ミュールはヨダレ垂らしながら座っている。
「うちはダメなやつっす。ほんと、すいませんっす。すいませんっす」
「いや、そんなもんだって。まだ時間はあるし。魔力は完璧なんだからいっぱい時間使えるよ」
多分、死んだふり練習のことだな。
そりゃそうなる。
リルナはしばらくの間ずっと呟き続ける。
俺は手を合わせてただひたすら頑張れと祈る。
「ユウヤ、ご飯」
ミュールはお腹をゴロゴロ鳴らしながら言う。
雷かよ。
「俺はご飯じゃありませんよっと。お前らも行こうぜ」
「うん」
「分かったっす」
俺達はギルドの外へ出る。
「店決まってなかったらお好み焼きってのを食べたいっす」
「すまん、決まってるわ。てか、なんでお好み焼き?」
そういえば、カネルの所で食べたお好み焼きおいしかったな。
「道行く人がおいしいって言ってて気になったっす」
「ふーん」
……カネルのやつ、ちゃんと、広告できたんだな。
俺達は店に着く。
俺が店の人とお仕事の話をしている間に3人が席を取り、俺もそこに座る。
「とりあえず、料理が来る前に次の目的地を言います」
「あ、もう決まったんだ」
俺達はゴクリと固唾を飲む。
「次は少し北の方に行きまして星詠みの国、フジルドに行こうかなって」
「それまたなんで?」
「そこのダンジョンならまだ攻略されてないし強い魔道具もあるかもだからね」
星詠みの国か、かっけぇ。
星詠みって言葉そのものがかっこいいわ。
中二心がくすぐられるぜ。
2章完結だぜいえーい
次3章になんと男の娘が出てくるぞ
え? それがなんだって?
おめぇ、男の娘だぞ?
オロロンチョチョパァしてやんぞ、おめぇ




