パーティーメンバー増やしてみた
俺とイスタは数秒かたまる。
見た目だけとはいえ一応天使をパーティに入れるってどうなんだ?
神聖なものをパーティメンバーにするのってなんかヤバそう。
いやでも、元の世界でも天皇様にも友達とかは普通にいる訳だし大丈夫か?
……元の世界とこの世界は別にして考えよう。
神聖なものの重視度が違う。
元の世界は(神様? あぁ昨日抱いたぜ)みたいなものが笑い話で作られるが、この世界じゃ口にしただけで極刑だ。
「えぇっと、一応理由を聞かせてくれるか?」
「はいっす」
リルナは椅子に座って話し始める。
「なんというんすかね。恥ずかしい話、自分探しの旅と言うっすか。天使として誰かのためになるのって最近までどうかなぁって思ってたんすけど先日のこともあって天使としてだったとしても誰かのためになれるのっていいなって思うようになったんす。だから、少しでも天使としての自分を肯定するために旅に出て、世界を見て、困ってる人を助けたいんすよ」
リルナは頬を赤くしながら言う。
ええ理由や、これで不採用通知送るヤツはカスや。
って、なに入れる雰囲気出してんだ。
どうするべきだ?
考えろ。
最適解を導き出せ!
俺はチラッとイスタを見る。
イスタも少し悩んでる感じだった。
俺はすぅーっと息を吸う。
最適解が見つかった。
それは――
「イスタ、パーティリーダーとして彼女はメンバー入りにふさわしいでしょうか?」
それは、丸投げだ!
イスタは涙目で俺に訴えかけてくる。
宗教関係は俺にはよく分からん。
この世界の住民に解決してもらおう。
「えっと……私達は魔王討伐を掲げて活動してまして……」
なるほど、権威もクソもない魔王の討伐はこの世界じゃ頭おかしい子扱いだ。
やるじゃん、イスタ。
「魔王討伐っすか? なんか自信つきそうっすね、全然いいっすよ」
こいつ頭おかしいのか!
俺達の反応を見てリルナの羽が少し下がる。
「ま、急に話っすもんね。その、すいませんっす。うちなんかが冒険者になりたいなんて言って」
宗教ってのはめんどくさい問題の源に違いない。
それが今の一番の問題なんだな。
「リルナ、俺達がこんな反応な理由は分かるな?」
「天使関連っすよね?」
「そうだ。だけど解決する方法1つある」
リルナはゴクリと唾を飲む。
「天使関連の問題は基本お前が何とかすること。それが解決方法だ」
「ユウヤ?」
イスタは驚きの表情で俺を見る。
「……いや、確かにそうなんだけど言い方が――」
「もちろん、それぐらいはさせてもらうっす。そもそもパーティに入りたいと言ってたのはうちっす」
リルナはまっすぐ俺を見る。
「まぁ、手伝って欲しいことがあるなら手伝う。それぐらいはパーティメンバーとしてやるよ。な、イスタ」
「まぁそうだね。細かい話はおいおい。それよりも、私達は魔王倒しに行くけど本当にいいの?」
リルナの羽と口角が上がる。
「はいっす」
「じゃあ、よろしく」
回復も出来て魔法も打てるやつはそりゃ欲しいよね。
「とりあえずさ」
俺のお腹がグルグルっとなる。
「ご飯食っていい?」
「あ、どうぞっす」
もう冷えたご飯食うしかなくなっちゃったよ。
俺は冷えたご飯を食べる。
イスタはどんまいと言わんばかりの目で俺を見る。
「ていうか、冒険者だったっけ?」
「あ、冒険者じゃないんで今日からちょっと勉強始めるっす」
「じゃあ、しばらくはリルナの育成に時間使おうかな」
死んだふりはすぐにできるもんじゃないしそれがいい。
「あれ? じゃあなんで魔法使ってたんだ?」
「護身用に教えて貰ってたんすよ。まぁ、実戦はしたことないんで上手く使えてた自信はないっすけど」
「めちゃくちゃ使えてたよ」
俺よりも。
俺は心の中に雨を降らせる。
「あ、魔法関連でもう一個聞きたいんだけどカースド? ってやつなに? 個人魔法がうんたらかんたらって言ってたやつ?」
「そうっす。うちの個人魔法は呪術師? っていうやつで負の感情が特殊な魔力になって当たった相手をむしばむ感じっす」
めちゃくちゃ強いじゃんそれ。
戦闘中とか相手に負の感情しか抱かないだろうし。
「じゃあ、昨日の晩の藁人形も個人魔法関係か」
「いや、あれは趣味っす」
……まじか。
「じゃあリルナ、早速特訓行こうか」
「はいっす」
イスタはそう言ってリルナを外に連れ出す。
リルナ、頑張れよ。
「ミュールはどうする?」
「昨日のあの剣かっこよくなるのと剣消えるのかっこいいから練習する」
ミュールはむふーと張り切る。
「じゃあ昼ご飯言ってた通り行くからお昼頃またここ来いよ」
「ん、わかった」
そう言ってミュールはギルドから出る。
仲間が増えるのはいいものだ。
だが、一つだけ文句があるとするなら……
「女の子しかいないから俺の肩身狭い……」
俺は冷めきったご飯を頬張る。
――――その頃、王都近くの森の中――――
「ボス!」
別のアジトにいた子分が全身火傷を負った男を迎える。
男は剣を地面に突き刺しながらも必死に進みここまで来たのだ。
「奴隷回収に来たのになんでやんすか、その怪我」
「天使誘拐に邪魔が入った。とりあえず、闇医者を呼んでくれ」
「分かったでやんす。今はお休みください」
「おぉ、そうだな」
日差しが男の肌に突き刺さる。
ちょっとした刺激ですら体力を削られる。
男は洞穴へ向かって歩く。
「ちょうどいい人間がいた」
後ろから誰かの声が聞こえる。
「誰だ?」
男は力強く睨むと角の生えた大男と血色の悪く牙のような歯を生やす女がいた。
「おぉ、人間、だ……。捕まえ、て……」
女は日を遮るように服で体を覆う。
「ボス、なんでアイツらがいるでやんすか。今、朝でやんす」
男は深く息を吸う。
「……魔族、か」
「朝はただ弱くなるだけだからな。動けない訳じゃない」
男は剣を構える。
「魔剣――」
「おぉっとすまねぇ。あんまり騒ぎにはできないんだ」
大男は金棒で男の剣を腕ごとかっ飛ばす。
「バケモンが……」
男は息絶え絶えで倒れる。
「じゃあ、早速……ん?」
女が近づこうとすると子分が剣を抜く。
「ボスに近づくなでやんす」
子分は足をガクガク震わせながらも声を張る。
「馬鹿野郎」
男は悔しそうに歯を食いしばりながら言う。
「ボスに近づくならおいらが相手に――」
「お前もいいやつじゃねぇか、気に入った」
大男は子分を見て明るく笑い、近づく。
「その子、も……?」
「まぁ、1人増える分にはいいじゃねぇか。最近せっかく捕らえたゴブリンエンペラーも倒されたしよ」
子分の額から汗がダラダラと流れる。
「それに、そもそも目撃者なんて作っちゃいけないんだからな。魔王様も言ってたろ。今はまだ耐える時期だ」
「そう、だね……」
子分は震える足を1歩踏み出す。
「どりゃぁぁ!」
子分は剣を振り上げ、大声を出しながら突進する。
大男は金棒を捨てる。
そして、子分の剣の刀身を素手で掴む。
エクスの手から血が流れる。
「あ、やべ。朝だから血が出るんだったわ」
大男はハハハと笑いながら子分から剣を取り頭を殴る。
子分はその殴り一発で気を失った。
「バカが……」
男は必死に立とうとするも体力が尽きて何も出来ない。
「お前、名前はなんて言う?」
大男は男の頭を掴み上げる。
男は今にも気を失いそうだった。
「そういうの、普通、自分から、じゃない……?」
「おぉ、そうか。俺はエクス。そして、後ろのやつはナジェだ」
「私のも……?」
男は最後の力を振り絞って口を開く。
「誰が教えるか、バーカ」
男はそう言って目をつむる。
「お前もいいやつじゃねぇか」
エクスは男とその子分をナジェに持っていく。
「じゃあ、やる、ね……」
ナジェはそう言って男の首を噛んだ。
「怖いくせに立ち向かう。最高に自由なやつらだ」




