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異世界でも動画配信者  作者: ワクルス
獣人の困りごと
46/73

悪者倒してみた4

 俺たちは穴から出て、地下施設に戻る。


「リルナ、早く二人を」


俺はイスタとミュールを地面に下ろす。


「それよりもユウヤさんっすよ」


リルナはそう言って俺の切れた腕を持ってくる。


「まだ大丈夫っすね」


 リルナは俺の腕を切れた断面につける。

そして、手をかざし淡い緑色の光を放つ。


「神の息吹(ゴットブレス)」


腕の切口が塞がる。


「おぉ、腕治った!」


俺は喜びのあまり腕を上げると切れた腕が垂れる。


「あ、あんま動かさないでくださいっす。まだ表面と血管だけっすから」


リルナは注意してきながらイスタたちを治す。


「ミュールを助けてくれてありがとうな」

「今さら聞くのも遅いと思うすけど、なんで剣が喋ってんすか?」


ほんとに遅いな。


リルナは2人を治しきる。


「起きないな」

「今は意識を失ってるだけなんでごゆっく……り……」


 リルナは地面に倒れる。


「大丈夫か?!」


俺は慌ててリルナに近づく。


「大丈夫っす……ただの魔力切れなんで」


魔力切れたらこうなるのか。

俺はまだ魔力に体が浸透してないから分からないのか?

まぁ、いいか。


「なぁ、一つやばいことに気づいたんだけどさ」

「どうしたんすか?」

「俺が三人背負わないといけないってまじ?」


 俺は倒れている三人を見る。


リルナは周りを見て、俺を見る。


「てへぺろ」


おい待て。


「ユウヤさんがウチを外に出したんすよ。責任とってくださいっす」

「言い方よ」


俺はハァとため息をつく。


「ま、多分魔力まだ残ってるから頑張って運ぶよ」


片腕使えねぇけどな。


「へぇ、すごいっすね。うち、結構魔力ある方なんすけどね」

「言うて使ってないからな」


ちょこちょこレベルだし。


俺は3人をどう運ぼうかと考えているとドカドカと人が近寄ってくる音が聞こえる。


「凄まじい騒音があったと近隣住民から報告があった」


騎士の人達が押し寄せてくる。


「来てみれば、なんだこの事態は」


騎士の人達は周りの死んでる子分達を指さす。


イスタとミュールの剣には血がついてる。

言い逃れはできない。


イスタが言うには現行犯じゃなければ基本捕まることはないし、互いに分かった上で殺しあったっていう状況証拠があれば確定無罪だったっけ?


なら状況を説明すればいけるか。


「ちょっとしたいざこざがありまして。証拠に僕達の剣や彼らの剣に血がべったりついてます」

「ほんとか? お前がその3人の女性を連れ去ろうとしてこいつらが守った結果とも取れる。その場合、お前は誘拐の罪だ」


騎士達は全員剣に手をかける。


めちゃくちゃ逆なんだけどなぁ。

どう説明したものか。


戦ってる動画は一応あるが、幻影魔法で誤った情報を見せてると捉えられかねない。


俺の額に汗がにじむ。


「ユウヤさん、肩貸してくださいっす」


リルナは俺の足を握ってそう言う。


俺は返事することなくリルナを立ち上がらせ肩を貸す。


リルナはヘアバンドを付けて重い前髪を上げ、白い羽根をわざとらしく広げる。


「あ、天使様」


騎士はリルナを見るとすぐ膝を着く。


「なんでこんな所に天使様が?」

「いや、おられるということは何かしら理由が」

「なにかの儀式とかか?」

「こんな儀式は聞いたことないぞ」


騎士達はザワザワとなにか話し出す。


「静まらんか、お前ら」


お偉いさんっぽい騎士が他の騎士たちを黙らせる。


「この人は悪くない、です。う、私が保証します」

「天使様が言うなら……」


騎士の人達は互いに話し合う。


リルナは俺の服を強く握る。

腕はプルプルと震えている。


「まぁ、わかりました。ですが、後ろの穴についてはどうか説明をよろしくお願いします。流石にその規模の破壊となりますと上へ報告しなければなので」

「わかりまし……た……」


リルナはぐったりとする。


よく頑張ったな。


「すいません、話をする前に彼女達を運ぶの手伝ってくれませんか? 毛布もなしに寝てたら風邪をひくので」

「分かりました。彼女達はこちらで運ばせていただきます。あなたはこちらへ」


俺はリルナ達を任せて、騎士のお偉いさんについて行く。





小鳥がさえずる音が聞こえる。

窓から入る日差しに起こされ、体を起こす。


昨日は大変だったなぁ。


あのあと、騎士達に経緯を事細かに説明し一連の流れは終わりを迎えた。


俺も疲れてたから半分寝ながら事情説明したっけ。


――――――

「まじワンワンがバクバクで穴がボーン」

「は?」

――――――


そのあと、片腕騎士の神聖魔法使いに片腕完全に治してもらったのはまじで感謝。


俺はベッドから体を出し外に出る。


「朝ごはん食お」


俺は宿から出てギルドの食堂に向かう。


ギルドの食堂にはイスタとミュールの2人がもう既にいた。


「よく眠れたか?」

「意識失ってただけだけどね」

「ノンレム睡眠じゃんよかったな」

「ノンレム?」


俺は店員さんに食事を頼む。


「流石に今日は動けないね」

「体、痛い」


昨日は2人めちゃくちゃ頑張ったしな……


「そうだ、ご飯の店の広告を撮りたいからミュール今日来てくれないか? たらふく飯食えるぞ。イスタもどうだ? 撮影関係なくさ」

「ん、行く」

「いいよ」


ミュールは嬉しそうにしっぽを振る。


「そういえば、リルナは今どこいるんだろ」

「リルナ?」

「ほら、昨日の天使だよ」

「あぁ。教会じゃない?」


そりゃそうか。

じゃあ今日のうちに会いに行くか。


俺は店員さんから料理を受け取り食べる。


そんな中、ギルドの扉がバーンと開く。

その神々しさにギルドにいた人は全員顔を向ける。


白い羽根が周りに舞う。

まるで天使のような子が入ってくる。


「あ、いたっす」


まぁ、天使なんかじゃなくてただの女の子だけどな。


リルナは俺達に近づいてくる。


「来たのか」

「昨日は大変だったね」

「ん」


俺達はリルナに声をかける。


「その、昨日はほんとありがとうございましたっす」

「私達が好きでしたことだから別にいいよ」

「そうだぞ、リルナ。むしろお前がいなかったら俺達死んでたわ」

「ん、ありがとう」


リルナは俺の方を見る。

俺はそっと微笑む。


リルナは胸に手を当てて大きく息を吸う。


「どういたしましてっす」


重い前髪からチラリとリルナの満面の笑みが見える。


よく言えました。


「てか、なんでこんなとこいんの?」

「あぁ、そうだったっす。その、折り入ってお願いがあるんすよ」

「宗教勧誘はちょっと……」

「言っとくっすけどうち別に天にいる神様信じてないっすからね。どっちかと言うと自然の――」

「さっさと本題言え、お前の宗派は後で聞くから」


リルナはあっとしたような顔をする。


大事なとこ忘れんなよ。


リルナはごほんと咳き込み話を戻す。


「うち、ユウヤさんのパーティに入りたいっす」


イスタと俺の目がまん丸になる。

ミュールの食べる音だけが流れる。


「「え、まじ?」」

「まじっす」

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