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異世界でも動画配信者  作者: ワクルス
獣人の困りごと
43/73

悪者倒してみた1

俺達は急いでイスタ達の所へ戻る。


あちこちの壁にでこぼこができていて、戦闘の激しさが伝わってくる。


イスタ達の体にはあちこちに血が流れている。


「剣筋が見えない」

「そういう魔剣になったんだろうね」

「なんやそのチート」


イスタ達は男をじっと見る。


「どうした? あの時みたいにぴょんぴょん飛び回らないのか?」


男はミュールを見ながら言う。


「できたらそうしてる」


ミュールは大きく踏み込んで男に向かってケンケンを大きく振り下ろす。


男はケンケンを横から殴り刀身を壊す。


ミュール達に集中してる今がチャンス。


俺は素早く詠唱し、火の玉を作り出す。

そして投げつける。


「見えてた」


男はミュールの胸ぐらを掴み、俺の火の玉をミュールで防ぐ。

ミュールの服に火がつく。


イスタは低姿勢で男の死角から剣を突き出す。


男はミュールをイスタの上から叩き下ろす。


「死角からなら気づかないとでも思ったか? 魔力の流れも追えない甘ちゃんがよぉ」


男はミュール達を力強く踏む。


ミュールは地面に手を付き、男の足を上へ押し上げる。


「魔力の圧縮がお上手なこと。それしか脳がないからかもだけどな、亜人」


俺は急いで手をかざす。

が、リルナが俺より前へ出る。


「檻から出してたか」


男はハァとため息をつく。


「お前のせいで3人全員困ってるぞ。助けたかったら自分の身売りを勘違いさせてごめんなさいって言うんだな」


男はミュールの背中に剣を突き刺す。


リルナの自己肯定感の低さを利用してきてるな。


「リルナ、これは――」

「大丈夫っす」


リルナは服の中から小さな袋を取り出す。


「そんなとこに魔法袋隠してやがったのか」


そして、袋から杖を取り出す。


「この人達はうちを助けに来た優しい人達っす。今、うちが檻に戻る方がこの人達が傷つくっす」


男はチッと言ってミュールに更に剣を突き刺す。


「それに、うち自身を見てくれる人に出会うのをまだ諦めれてなかったみたいっす」


リルナは杖を構える。


「そうか。じゃあ諦めさせてやる」


男は力強く剣を握る。


まずい、ミュールが。


俺が焦っていると下敷きになってたイスタが抜け出して男に向かって剣を突き出す。


男はミュールから剣を抜き斜め後ろに避ける。


大きな隙ができた。


俺が魔法を詠唱するより先に、リルナの杖の先端から魔法陣が現れる。


そして、そこから岩の塊が飛び出てきて男を吹き飛ばす。


魔法陣型の魔法使えんのかよ。


男は剣を床にに突き刺し、体勢を整える。


「お前ら、いつまで壁に埋まってんだ」

「これ結構奥深いんですよ」


男は子分達に呆れていると壁を殴ってヒビを入れる。

子分達がうにょうにょ動くとビビは大きくなり、壁が壊れる。


「金髪と猫耳抑えろ。後ろは俺がやる」

「分かりましヒャッハー」


子分達は手負いのイスタ達に剣を振り下ろす。


ミュールが立ち上がり、ケンケンで子分達の剣を受け止める。


ミュールは背中から血がぽたぽた垂れながらも踏ん張る。

足がプルプル震え始める。


イスタも振り下ろされる剣全てをはじく。

だけど、顔が苦しそうだ。


男はそんな2人を背にして俺達に近づく。


いつ間に2人を通り抜けた?

気づかなかった。


「一応聞く。あんな血だらけになりながらも頑張る2人を見て何も感じないのか?」

「そうだな。命を感じる」

「それを感じて和解するって発想は出ないのか?」

「何を言ってる」


男は子分達を指さす。


「俺の部下達にも感じてるからな。和解なんてしちまったらあいつらの食い扶持もなくなる。ボスとしてそれだけは許せない」

「交渉決裂だな。リルナ」

「はいっす」


リルナは魔法陣を出し、そこから火の玉を放つ。


「ふん」


男は剣でそれをなぎ払う。


「こっちを見ろ」


男がこっちに来るまでの時間プラス会話で作った時間で圧縮した魔力の全てをぶつける。


「神よ、汝が作りたもうた全てを包む大地の力をかの者に下したまえ」


俺は手をパンと叩く。

すると、2つの岩がまばたきする間もなく男を押しつぶす。


「流石に潰れただろ」

「あぁ、危なかった」


男は俺の隣でそう呟く。


気づいた時には男の足が顔の前にあり、足が俺の顔を通り過ぎて壁を壊す。


「あぶねぇ、隠れながら魔法打って助かったァ」


俺は男が俺の顔を蹴ってるスクリーンを消し、俺の前にあるスクリーンも消す。


壁の動画で姿隠しつつ、カメラで撮ってる俺の姿を別のスクリーンに映す。

壁際なら背景も誤魔化せるから実質分身だな。


当たって欲しかったけど、大きな隙は作ったぜ、リルナ。


リルナの杖先にある魔法陣が紫色に変わっていく。


「カースドアイスエッジ」


紫がかった氷が地面から生え、鋭利な先端を男の横腹に突き刺す。


男は氷を叩き割る。

が、魔法が当たった部分に氷がジワジワと広がる。


「うちの魔力特殊なんすよ。個人魔法の影響で」

「めんどくせぇな」


男の呼吸が荒くなる。


リルナ、個人魔法もあって神聖魔法もあるってチートすぎない?

なんでそれで自己肯定感下がるんだよ。


「まぁ、人生色々だよな」


俺は少しだけ圧縮した魔力で火の玉を放つ。


大きく燃え上がる炎は男に向かって飛んで行く。


「冷たいと熱いって同時に味わったらどうなるんだろうな。体験談動画にしてやるよ」


男はじっと火の玉を見つめると剣を両手で持って大きく振りかぶる。


「来い、ビースト」


男がそう言うと男の刀身から黒い影のようなものが形を成し、獣の頭の様な形になる。


「アギャギャギャギャギャ」


獣のような狂人のような、そんな声が辺りを揺らすと男は俺の火の玉に向かって剣を振る。


「月喰らう影獣(エクリプスビースト)」


剣に付いてた獣は火の玉をパクリと食べる。


「そんなん食べたらお腹壊すだろ。動物愛護団体に怒られんぞ」

「お腹壊すなんてレベルじゃないっすよ」


男はもう一度剣を大きく振る。


こいつ、どこに向かって剣を振って……


俺が唖然としていると突如熱い玉のような物が俺の腹に当たる。


俺は何が何か分からないが玉に当たった勢いで吹き飛ぶ。


でも、腹には何もない。


服が燃えて……ってあつあつあつ。


俺は急いで立ち上がり服を脱ぎ捨てる。


「変態っす」

「言ってる場合か!」


今何をされた?


あいつは魔法を使ったのか?

今まで使ってなかったのに急に?


「くらえっす。カースドアイスエッジ」


リルナが出した魔法は男が剣を振ると影の獣が食べる。

そして、男はもう一度剣を振る。

すると、リルナの足に突然何かが刺さり凍り始める。


もしかして、これはスキルか?


ゴブリンエンペラーと戦った後にイスタに聞いたから知ってるぞ。

エンペラーの地震トゲトゲ攻撃もスキルだって言ってた。


スキルなら魔法使えなくても使えるし、あり得るとしたらスキルの路線だ。


しかし、スキルだとしたらどんなスキルだ?

スキルは魔法よりも複雑で使い方にも癖があるのが多いらしい。


さっき起きたことをまんま言うなら俺の魔法を消して見えない熱い玉か凍るトゲを投げてくるスキルか?


これはちょっと複雑すぎる。


「実験あるのみ」


さっきは火魔法だったしそれが熱い玉と関係してるなら……


「リルナ、風魔法強めのやつをあいつに。あ、個人魔法は抜いてね」

「わかったっす」


リルナは杖から風をだす。

その風圧は離れていた俺が一瞬浮きそうになるほどだった。


男は剣を振り、獣に風を食わせるとまた剣を振る。

今度はものすごい風圧が飛んでくる。


俺は魔力で体をガッチガチに固めて風圧に飛び込む。


「ユウヤさん!? 何してんすか」

「実験だよ」


今度は熱くなかったな。

全身が切り刻まれた感じだ。


魔力で体固めといて良かったな。


「すげぇ魔力だな」


男は眉をひそめる。


顔怖……


でも、分かったことがあるぞ。


「お前のそのスキルは獣に魔法を食わしてそれを反射することだな。反射する際は目に見えなくなるオマケ付き」

「それが分かった所でどう対処する?」


たしかに……見えないんじゃどうしようも出来ない……

しかも、大半食われてるし。


え、どうしよう……

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