囚われの身助けてみた2
「固まって行け、猫耳には正面で勝とうとするな」
「あいあいさー」
子分達は大きな塊で俺達に攻め入ってくる。
俺は詠唱し火魔法を使う。
子分達は俺の火魔法を切り徐々に近づいてくる。
「へへ、金髪の嬢ちゃん、そんなヘナポコ男じゃなくて俺らの相手してくれよ!」
「地下に隠れる陰湿野郎の相手なんて嫌だね」
キンキンキン
剣と剣がぶつかる音が聴こえる。
イスタは剣を剣で受け、足で相手の腹を蹴る。
ミュールは力いっぱいに剣を振る。
「そこの金髪。お前、正義の味方気取ってんのか? どうせ人殺しだろ?」
男はイスタに話しかける。
「そういうの偏見っていうんだよ」
「そうか? だって、俺もお前と一緒だぜ」
子分達が段々と倒れてくると男は綺麗な加速でイスタ達に近づく。
それを見てミュールはドンと地面を蹴って男に近づきケンケンを振る。
ミュールの振った剣は男に受け流されてミュールはあまりにも早いスピードで壁へと衝突する。
「にゃふん」
「前回は負けたが、今回は勝たせてもらう」
男は剣を構え直す。
「魔剣化」
男がそう言うと剣の形が変わる。
刀身は黒く、ガードは三日月っぽくなっておりどこか月蝕を彷彿とさせる。
地味にかっこいい。
「魔剣グラーフ・エクリプス」
男の魔剣化を見てイスタの顔が引きつる。
「魔剣化は流石にちょっとまずいね」
イスタはチラチラと俺を見る。
なるほど、時間を稼ぐからなんとかしてリルナを救えってことか。
リルナは神聖魔法で怪我を治せるし最悪持久戦に持ち込める。
でも、このアジト一方通行なんだよなぁ。
どうやって後ろに行こうか。
……あ、そうだ。
ミュールは壁から抜け出す。
「ケンケン、あれ」
「あれってなんや?」
「あのかっこよくなるやつやって」
「無理や。ワイもどうやってやるんか知らんねん」
「喋ってる暇があると思うなよ! 月喰らう陰」
男の剣は闇に紛れ気づいたらもう振り切っていた。
ミュールは紙一重でかわし男を見つめる。
「魔力変」
「人を殺すための魔力だからな!」
男はニヤッとしながらミュールに切りかかる。
イスタはこっそりと動き隙を突くが見抜かれていたのか避けられる。
かくいう俺は……
怖い怖い怖い怖い。
壁を人魂で撮り、その風景を映したスクリーンで俺を覆って隠れながら進む。
「流石、人殺し。そんな卑怯なことするなんて」
「使い方次第。剣だって人を守ることもあれば殺すこともある」
「今は殺す目的になってるけどな!」
イスタと男は打ち合う。
フェイントを絡めた戦いは見ててハラハラする。
俺はコソコソと進んで奥へと向かう。
子分達はもうおらず男の視界を外れてからはドコドコと進む。
そして、リルナが閉じ込められてる部屋を開ける。
「お姫様、王子様が助けに来ましたよ」
「本当に助けに来たんっすね。あと、うちなんてうんこで結構っす。お姫様のうんこっす」
「なんで出す人だけこだわってんだ」
どっちにしても下水道行きだろ。
「まぁいい。ここから出るぞ。今、仲間が戦ってるから協力して――」
リルナはビクッと肩を震わせる。
「出るってここからっすか? いやっす、出たくないっす。出たらまたあの目で見られるっす」
リルナは檻を掴んでフルフルと首を振る。
「いいのか? 変なおっさんにチョメチョメされるような生活になるぞ。お前の目は綺麗だし顔も悪くないんだからそんな金だけが取り柄のおっさんとなんて辞めとけよ」
「いや、逆にそっちの方がいいっす」
「マジか、お前そういう趣味だったのか」
天使も堕ちる所まで堕ちたな。
天使じゃねぇけど。
「もしかして、天使として崇められるのが嫌な話に繋がってるのか?」
「……はいっす。うちがこんな見た目なせいでユウヤさん達にも迷惑かけてるっすし、もういやっす」
リルナは下を向きながらポツポツと話す。
「馬鹿か。あの時、本当に迷惑だったのは俺だ。俺がいなければお前は逃げれてた。お前は何も悪くない」
「でも、うちの見た目のせいで悪い人達に襲われたじゃないっすか」
リルナはプルプルと身体を震わせる。
俺はハァとため息を着く。
「そんなの今どうでも――」
「どうでもよくないっす。うちが存在しなかったらユウヤさんはこんなことしなくてよかったんす」
リルナは俺に背を向ける。
「天使としてか取り柄のないうちなんていらないんすよ!」
リルナはそう叫ぶ。
俺はそれを見て腹の底から怒りが湧き上がる。
天使っぽい見た目。
それは確かに襲われる対象としては申し分ない情報だ。
だけど、それ以前にこいつは……
「お前は、そんなどうでもいいことごちゃごちゃ言って、嫌な自分から逃げてるだけだろ!」
「それの何がダメなんすか! こんな見た目に生まれて来なければうちはもっと幸せだったんすよ」
リルナの重い前髪からひっそりと見える瞳はウルっと輝く。
ガン!
俺は無理やり身体能力を魔力で上げてリルナを囲む檻を殴る。
「ちょ、何やってんすか」
「見た目のせいで幸せになれないとか言ってるバカを助けてんだよ」
拳から血が出るが気にせず、衝動のまま殴る。
ガンガンガンガン!
特別製だからか中々壊れない。
魔力使われること想定だろうし当たり前と言えば当たり前だ。
「じゃあ、うちはどうすればいいんすか? 周りからの目にどうやって耐えればいいんすか!」
「んなもん自分で考えろ。俺はお前の親じゃねえ」
「そんな、勝手っす」
「勝手で結構。何もかも諦めて大人になった気でいてんじゃねぇぞ!」
諦めたって言うヤツがする顔は決まって死んだ顔だ。
諦めきれてないから、本当はまだ諦めたくなかったから、死んだ顔をするんだ。
俺《《も》》その道を歩みかけたから分かる。
ガン!
「諦めるってのは、簡単じゃねぇぞ」
リルナの口が開いたまま塞がらない。
俺は血でにじむ拳を見る。
檻壊れねぇな。
俺は深く深呼吸する。
短剣を魔力で強化すればいけるか?
俺はなにかないかと周りを見る。
「あ、鍵ある」
ガチャ。
鍵、あったのかよ。
「本当、バカっす。神の息吹」
リルナが手をかざすと拳から出た血は輝いてすぐに元通りになる。
「ありがとうな」
「いえ、これはうちの責任っすから」
「おいおい、人が感謝してんだぜ? お前はこう言えばいいんだよ。どういたしましてってさ」
リルナはえ? え? と慌てる。
「いいから、はい、さんにーいーち」
「え、あっどういたしましてっす」
リルナは頬を赤らめる。
「はい、よく出来ました」
鍵あったけど檻を殴った意味はあったな。
リルナ、ちょっと嬉しそうだ。
「言っとくすけど、完全に納得したわけじゃないっすから」
リルナはまっすぐ俺を見る。
「納得したいって思っただけすから」
「いいね、そういうの」
俺は檻のある部屋の外を指さす。
「じゃあ本当の意味で助かりに行くぞ。お姫様を牢屋に入れるのは決まって悪者だ」
「何言ってんすか?」
元の世界のエンタメの話。
ドゴォォン!
衝撃が音に乗って伝わってくる。
「急いで助けに行くぞ」
「はいっす」
リルナはそう言って檻から1歩足を踏み出した。




