深夜徘徊してみた2
彼女は気持ちがほぐれたのか近くのベンチに座る。
そして、俺の顔を見ながらうーんとうなる。
「俺はユウヤ、あんたは?」
「あ、うちはリルナって言うっす。少し聞いて欲しい事があるっす」
あ、どしたん話聞こかがここで発動したか。
まぁ、自分で蒔いた種だ、ちゃんと聞こう。
俺はリルナの隣に座り彼女の顔を見る。
「うち、実は天使辞めたくて」
「元々天使じゃねぇだろ」
「そういう意味じゃないっす」
そうか、なら羽根をもぐとか。
リルナは拳を握りしめながらポツポツと呟く。
「皆、うちのこと天使様って呼んで崇めて……でも、うちは皆に何もしてないのに崇められるなんて嫌なんっす」
「人って何か信じれるものがあるだけで救いになるんだし、別にいいんじゃねぇの?」
「そういう問題じゃないっす。なんというか、その、もっと直接的なことで感謝されたいというっすか」
リルナはなんと言えばいいのか分からない様子で口をもごもごとさせる。
まぁ、分かるよ。
何もしてないのにありがとうと言われても困る話だ。
「あ、そうだ言ってなかったな」
「?」
俺は立ち上がってリルナの前に立ち深々と頭を下げる。
「この前はイスタの傷を、今日は俺のを治してくれてありがとうな」
「そ、それはあの時、傷を治せるのはうちだけでしたっすから」
リルナは俺の突然の感謝に困惑する。
「それでも、ありがとう。リルナがいなかったらイスタはもしかしたら死んでたかもしれない。あ、イスタは金髪の子ね」
リルナはアワアワしながら返事に困る。
そして、白い翼で自身の体を覆い顔を半分隠す。
「その、どういたしましてっす」
リルナは恥ずかしそうに顔を赤くして言う。
なんであんたが恥ずかしがってんだ。
「そういえば、ヘアバンドどうしたんだ?」
「あ、あれは羽耳を隠すように神父様に言われてたので」
獣人であることは隠してあくまでも天使ですよってするためか。
闇がマリアナ海溝貫通してんな。
「本当は目も隠しておきたいんっすよ。恥ずかしいっすから。でも、目は出しなさいって」
「まぁ、リルナの目綺麗だしな」
「て、照れるっす」
えへへへといいながらリルナは嬉しそうにする。
もしかして、入った時目が死んでたのって……恥ずかしかったから失神してた?
「なんで、天使なんかやってんだ?」
「あ、そんな根本聞いちゃうっすか。別にいいっすけど」
リルナはまた改まって話し始める。
「森で過ごしてたら神父様達が来て頼み込まれたからっす」
「なるほど」
リルナは俺の目を見て黙り込む。
もしかして、そこからあまり言えないような凄惨な出来事が……
俺は固唾を飲んでリルナの言葉を待つ。
「あ、以上っす」
「そんだけかい!」
流石にそこまで闇深くはなかったか。
「薄っぺらい人生でごめんなさいっす」
リルナは明後日の方を見ながら落ち込む。
あ、傷つけちゃったか。
ごめん。
リルナは落ち込みながら俺に話しかける。
「ユウヤさん。うちはどうしたら――」
「夜は証拠が残りにくく犯罪にはもってこいの時間だぜ」
どこから大人の男の声がしてくる。
「そ、その声は!?」
俺は路地裏の方を振り返る。
「誰だ!?」
「初対面なんだから分からなくて当然だろ。まぁいい。白い羽根の有翼種……これは高く売れる」
左目に傷のある男はニヒヒと不気味な笑みを浮かべながら後ろに子分たちを引き連れる。
「そこの男、そいつをこっちへ」
いかにも悪役みたいなやつに引き渡す訳ないだろ。
俺は男達の前に立ち塞がる。
「そうか。なら、死ね」
子分達が俺に向かって切りかかってくる。
「くらえ、神代魔法、オルビス・ウィンクラ」
「なに!? 神代魔法!?」
子分達はすぐさま1歩退いて俺を見つめる。
俺も子分達を見つめる。
汗がダラダラと出始める。
やばい、やっぱ出ない。
「……お前、嘘ついたか?」
「針千本飲みます」
「ついてんのかよ!」
「伝わんのかよ!」
子分達の顔にイライラが出てくる。
あ、これ怒らしちゃまずいやつだ。
「逃げるっすよ。手、出して」
「あ、うん」
「させるかよ。魔剣化、魔剣グラーフ・エクリプス」
出たな、魔剣化。
でも、俺達が飛ぶ方が早い。
リルナはうーんと羽根をバタバタと動かす。
「ユウヤさん、重いっす」
「え、普通にごめん」
「捕まえろ!」
子分達はリルナに向かって飛びかかる。
「リルナ、お前一人で行け」
俺はリルナから手を離し、リルナは全力で空に飛ぶ。
が、魔剣化した男の跳躍は優にリルナに届いた。
「マジかよ」
リルナは男に羽根を掴まれ地面に下ろさせれる。
「よし、確保だ。あの男は殺せ」
「分かりました、兄貴」
やばいな、これは。
「リルナ、助けに行くから待ってろ」
「ダメっす、来たら……」
「うるせぇ! まだ俺に話したいことあんだろ」
なんか言いかけてたんだからさ。
「俺に喧嘩売ったんだ。リルナ取り返されたらこの国にはもう居場所はないと思え」
「口だけはいくらでも叩けるよな」
そりゃ、そう思ってしまうか。
「お前、あいつの相手しとけ。騎士に頼っても意味ねぇだろうが一応な」
「お任せくだせぇ、ボス」
男達は1人を残し、闇へと消えていった。
「ボスが俺を選んだ意味分かるか? 冒険者」
「いや、知らねぇよ」
子分はヒヒと笑う。
「骨すら残らねぇってことだよ」
「町中だし、証拠が残らないようにか」
なんて考え深いやつだ。
あいつはしっかり頭を回せる賢いやつだな。
「……そうだ!」
絶対わかってなかったなこいつ。
まぁいい。
「こんな雑魚残すなんて俺も舐められすぎだろ」
「あ!?」
子分の顔にシワがよる。
「せめて足止めにはなってやれよ? お前のボス悲しむぜ?」
「てめぇ、クソガキが! ぶっ殺してやる」
子分は怒りをあらわにし、一直線に走ってくる。
そして、剣をサヤから抜く。
怒ってるやつの行動は単純だ。
アンチ煽ったら単純な悪口しかコメントしなくなってるのを見てきた。
俺のチャンネルはストレートにおもんないだけだったけどな。
単純な攻撃ならクリティカルガモを見た後の俺なら……
子分は大きく剣を振る。
俺はそれをスッとかわす。
「避けることぐらい訳ないさ」
今は夜で街中だ、派手な魔法は使えない。
近所迷惑になるかるな。
そして、俺に対人戦闘ができるほどの経験値はない。
よし、逃げよう。
俺は子分の太刀筋をかわしながら路地裏を通って大通りに出る。
子分は路地裏で振った剣が壁に刺さり抜けずにいた。
「ボス、可哀想だなぁ」
俺は子分に向かって指さし煽るだけ煽る。
「クソ冒険者がぁぁ!」
そして、すぐさま宿へと帰っていった。




