バラしてみた
俺は空が赤くなる時間、王都の道のりを進む。
「ふいー、広告主いっぱい見つかったぜ」
よかったよかった。
後は広告動画を作るだけだな。
今回は武器屋だけでなく、商人とか、ご飯屋とかの縁もあったわけだしな。
ご飯屋の広告にはミュールを使うか。
今のうちに動画の構成考えとくか。
俺が歩いているとイスタに出会う。
「足大丈夫か?」
「うん、痛くはないよ。アキレス腱抉れた時のこと思い出すと地面に転ぶけどね」
「全然だいじょばないやつじゃん」
この世界のヤツら、ちょっとした怪我なら何も思わないのか?
「あ、そうだ、一緒に来る? 今からご飯食べに行こうとしてたんだけど」
「確かに、ちょうどいい時間だしな」
営業かけた以外のとこ行かないとな。
恥ずかしいし。
俺達は店に行き席に着く。
「ここは粉物が有名なのか」
大阪料理専門店みたいだな。
「結構珍しい店だよね。おすすめはお好き焼きとご飯っていう異国の料理らしい」
「炭水化物と炭水化物ってバカか?」
まぁ物は試しか。
「すいません」
「はーい」
店員さんを呼ぶと聞き覚えのある声が帰って来る。
……この声。
「ご注文は――」
店員さんは俺と目が合うと動きが止まる。
カネルのやつ、ここで働いてたのかよ。
俺達は数秒間見つめ合う。
「……素でお金持ちタイプだったんだ」
「気にするとこそこなのね」
カネルは俺のお財布事情の方が気になるらしい。
「ユウヤ、この人は?」
「俺と同業者で名前はカネル」
「マジカルダンサーとして活動してるよ」
マジカルダンサーは今で言うアイドルみたいな職業だ。
「明日の昼も大通りでやるからぜひ来てね」
イスタはもちろん、俺の方に来てくれるよな。
俺は信頼しきった目でイスタを見る。
すると、イスタはカネルの方を見て目をキラキラさせていた。
ん?
「私、小さい時マジカルダンサーになるの夢だったんですよ。憧れるなぁ。明日ですよね? 絶対行きます」
「ありがとうね」
イスタが夢見る少女みたいだ。
魔王討伐の夢はどこ行った。
「あ、注文取りに来たんだったね。忘れてたよ」
「給料泥棒」
俺のボソッと言った一言にカネルはニッコリと笑う。
「君が客じゃなかったら鼓膜ぶち破ってたのに」
「怖いな、お前」
カネルは気を取り直し、メモを取り出す。
「オススメのセット2つください」
「お好き焼きとご飯のセットですね。オススメセット2つです!」
「あいよ!カネルちゃん」
厨房でオヤジさんが返事を返す。
「カネル」
「なに?」
俺が話しかけるとカネルは身構える。
俺をなんだと思ってるんだ。
「この店、人いないな」
「……だね。あ、でもご飯はおいしいからね? ファンの子達もよく来るし」
あの平成オタク達か。
「でも、粉物とご飯ってここら辺じゃ珍しいからね。よく分からないものは怖いって感じなんじゃないかな」
俺達がフランス料理のエスカルゴを食いたがらないみたいなもんだな。
カタツムリ食うとか考えれねぇよ。
「オヤジさん、東の方の国から来た人で自国の料理を広めたいって思ってここで店開いてるけど中々人が集まらないね」
「カネルちゃん、料理運んでー!」
「はーい」
カネルは俺達に料理を持ってくる。
上に乗ってるかつお節みたいなのが湯気で踊ってる。
うまそうだ。
「いただきます」
俺達はお好み焼きを頬張る。
「ユウヤ、これおいしいね」
「な。こりゃ白米がすすむな」
俺は米をかき込む。
異世界に来てパンばっかの食事だった。
けど、ようやく米を食えたんだ。
「ここが俺のふるさとか」
「いや、そもそも世界が違うでしょ」
これからは定期的に米食うか。
「どう、おいしいでしょ」
カネルはニッと笑う。
俺達は食べながら首を縦に振る。
「……落ち着いて食べなよ。食べ物は逃げないんだからさ」
俺達は綺麗に食べ終わる。
「ごっそさん。また来るわ」
「ミュールにも教えないと」
だな。
俺がイスにもたれているとカネルは話しかけてくる。
「ねぇ、ユウヤ。ユウヤは親からお金もらって活動してるって感じ?」
「ん? 違うぞ。冒険者もやって趣味というか仕事というかまぁ曖昧だけどやってるのがエンターテイナーだ」
「あ、冒険者やってるんだ。珍しい」
いつ死ぬか分からないから1つの芸を極めようとするエンターテイナーと相性悪いんだよな、冒険者って。
「カネルさんはバイトしか収入源ない感じですか?」
「投げ銭がたまにあるぐらいで本当にバイト尽くしだね。芸だけで食ってけるのはひと握りだから今はしょうがないよ。いつかはそうなるけどね」
カネルは真剣な眼差しで答える。
なるだけならいつかなれんだろ、お前は。
直すとこ直せばだがな
「ユウヤみたいに広告ってのすればいいのにね」
イスタは何の気なしに言う。
「あ、バカ」
「え?」
イスタは少しの間かたまる。
口がポカンと開き、ワナワナと身体を震わせ始める。
イスタ、俺の方を見るな。
「その広告っての詳しく聞かせてもらっていいかな」
カネルは近くの席から椅子を引っ張って来て座る。
笑顔の圧で俺を見る。
その圧に俺は押しつぶされそうになる。
どうする?
広告って金稼ぎが俺以外もするようになれば俺の収入源の1つが無くなる。
俺はしばらく考える。
チラッとカネルを見る。
カネルは真剣な顔をしていた。
「……広告ってのはな――」
俺はカネルに広告について話した。
カネルはうんうんと聞く。
聞いてる時のカネルの目の奥はやはり燃えていた。
その炎が俺にも燃え移る。
やっぱりこいつ、向上心すごいな。
俺も負けてられない。
「――って感じだ」
「ありがとう。でもいいの? 敵に塩を送る形になるけど」
「何言ってんだ。俺が送ったのは塩じゃなくて種だ。俺のはもう立派に咲いてるが、お前がそれを咲かせられるかな」
実際、金稼ぎになるって言っても広告主の利益に直結しないと金にはならないからな。
「そろそろお店出よっか」
「そうだな」
イスタが立ち上がったのを見て俺も立ち上がる。
「ここは僕が払っとくよ」
「いやでも、お前そんな金ないだろ」
カネルは指を振る。
「僕はぬるま湯に浸かるのが嫌いなんだ」
カネルはそう言うと俺達を店の外に追い出す。
「またのお越しを」
ゆっくり閉まるドアの隙間から見えたカネルは店主の方へ歩いて行った。
俺とイスタは宿に向かって歩く。
「広告について教えよかったの? 私が言うのもなんだけど」
「どうせいつかはバレることだったからな。公演をしている以上同業者に見られることだってあるし」
「なるほど」
帰って早く明日の撮影の準備しないとな。




