他冒険者を観察してみた
俺達は王都の中を歩く。
「宿取れたし、今日は何するんだ?」
俺はイスタに話しかける。
「王都ともなると強い冒険者はいっぱいいるからね。その人達の観察ってところかな」
何事でも守破離を大切にするってことか。
「あ、ミュール。ここ、勇者教の国だからあんまし教会に近づかない方がいいよ」
「ん、分かった」
俺達は王都の外に出る。
他の冒険者達が森の方へと行くのが見えた。
「今日はあの人達つけよう」
イスタはそう言ってこっそりと冒険者の後をつける。
「まさか、人生初のストーキングをする羽目になるとは思わなかったなぁ」
「ストーキングってなんや?」
「人の後をこっそり追いかける行為だよ。ちなみにやられてる側は視線とか感じて不快になるから迷惑行為だ」
「ユウヤ、詳しい」
ストーキング対策は元の世界でめちゃくちゃ考えてたからな。
使わなかったけど。
俺達も冒険者の後を追って森の中に入る。
「お、早速戦ってんのか」
冒険者達はパライオンの群れと戦っていた。
「しっかし、こうやって客観的に見ると見えてくるものがあるな」
「だね」
前衛の動きはとにかく相手の注意を引くこと。
そして、後衛の動きはとにかく相手に攻撃を加えること。
これだけだと思っていたが、実際はちょっと違うな。
パライオンが大きく口を開け前衛の剣士に飛び込んで噛み付こうとする。
パライオンの足に剣を突き刺す。
パライオンが地面に着くとガクンと傷ついた足からバランスを崩し、その隙に魔法使いからの火の玉を受ける。
前衛が相手の注意を引くのは同じだが、攻撃をする際に狙う場所はこいつら2人と違って足を攻撃してる。
こうすることで、動きが鈍くなるから後衛の魔法を当てやすくなるんだ。
それに、足を狙う方が首を狙うよりも難易度が低い。
それと、後衛の魔法使い達にも注目すると、位置取りを常に考えてる感じがするな。
前衛はモンスターと近い分危険度も高い。
だからこそ、自由に動き回れた方が生存率が上がる。
でも、そうなると魔法使い達の射線が通りにくくなる。
だから、魔法使いの方が考えて動くんだ。
前衛に魔法が当たらなくて、かつ前衛の助けを貰いやすい位置取り。
これは見習わないとな。
強い敵に当たったらイスタ達でも俺のために射線を考えるのは難しくなるだろうからな。
具体的には前衛がこの時は後衛は……
俺はアゴに手を当てて戦闘を見る。
「うーん、もう少し強いヤツと戦ってくれないかな」
イスタは渋そうな顔をする。
「どうして?」
「いやだってね、私が見たいのは魔剣化なんだよ」
魔剣化か。
この前、ツイタと出会った時に遭遇した魔族が使っていたな。
「魔剣化をする時の魔力の流れとかその辺ちゃんと見ときたいんだけど」
魔剣化出来れば戦力アップ間違いないもんな。
前衛ならなおさら。
でも、そうそう強い敵と当たることなんてないだろ。
「よし、ミュール。お願いがあるんだけど」
「ん?」
「森の中走って強いモンスターおびき寄せてきて」
イスタは笑顔でそう言う。
俺はそれを見て口を開けてドン引きする。
「ん、わかった」
ミュールはそれだけ言って森の中を移動する。
「ちょ、ちょっとイスタさん」
「ん? どったの?」
「ぼ、冒険者が可哀想じゃありゃしませんかい?」
俺はビクビクと身体を震わせながら言う。
「口調どうしたの?」
「いや、普通に考えてまずいっすよ」
「あー、まぁ大丈夫でしょ。冒険者ならいつか死ぬかもなんて分かってることだし。それがたまたま今日かもしれないってだけだよ」
なんてド畜生。
ぐう畜すぎる。
俺は手を合わせて冒険者達に向かって念仏を唱える。
「南無阿弥陀仏南無阿弥……こっから先わかんねぇや」
しばらくすると、ミュールが戻ってくる。
「連れてきた」
ミュールがそう言うと冒険者達の前に怒りマークが付いたコアラがやってくる。
「あれは、ゲキオコアラだよな?」
「周辺の木を投げるB級上位モンスターだね」
あんな可愛い見た目でゴブリンエンペラーと同レベルかよ。
「な、なぁヤバくないか?」
「逃げよ。アイツはまずい」
「逃げるぞー!」
冒険者達はそう言って逃げる。
「あれま。そこまで強くないパーティだったみたいだね」
「逃げる判断が早いから頭は良さそうだけどな」
ん? 待てよ。
ゲキオコアラはミュールが連れてきたんだよな?
で、元々は冒険者達にぶつけるつもりだったけど、冒険者達は逃げた。
俺の悪い予感が働いているとゲキオコアラが近くの木をちっちゃな手で引っこ抜く。
「ゴア!」
ゲキオコアラは俺達の方向にその木を投げる。
投げられた木は一瞬にして木を何本も突き破る。
「え……やば」
木は俺の頬をかすめ後ろの木にぶつかって潰れる。
頬からは血が流れ出る。
「一番の特徴として、投げる木がめちゃくちゃ速いんだよね」
イスタは平然とゲキオコアラを観察する。
「イスタ、ユウヤが」
ミュールは怖すぎて白目を向いてる俺に向かって指をさす。
「あちゃー。おーい、ユウヤー」
俺はハッと正気に戻る。
「な、なぁどうする? 逃げる?」
「そうだね」
よかった。
逃げるなら動画の音で気を紛らせて……
「戦う」
イスタはそう言って剣を抜く。
「イスタ?」
「ユウヤ、格上と分かってても戦わないといけない状況は絶対に来る。フォレストプリンスがそうだったでしょ?」
まぁ、たしかに。
「フォレストプリンスの時思い出して頑張るよ。あの時は私、出遅れちゃったし」
イスタも成長するとこ残ってんだな。
俺は自分の頬を叩く。
「よし、頑張るぞ」
俺達はゲキオコアラの前に出る。
まずは思い出せ、後衛は位置取りが命だ。
イスタとミュールは素早く前に出て切りかかる。
ゲキオコアラは木を引っこ抜く。
イスタ達の力強い剣を木で受け止める。
ゲキオコアラはズズッと押される。
今、動きが止まってる。
イスタは右から、ミュールは左から攻めてて真ん中が隙になってる。
だから、正面から魔法を打つ。
俺は手をゲキオコアラに向けて詠唱する。
ボアボアと燃える火の玉をゲキオコアラに向けて放つ。
ゲキオコアラは持っていた木を押し上げる。
そうして、イスタ達を上へはじく。
抑えるものがなくなったゲキオコアラは高く跳躍する。
地面へ落ちてくる勢いで持っている木で火の玉を地面へ押しつぶす。
「賢すぎんだろ」
でも、イスタ達の動きやすさを意識できた。
立ち上がったミュールがまっすぐに切りかかる。
ゲキオコアラは木を構える。
「ミュール、そんな闇雲にやっても……」
俺がミュールを止めようとするとミュールはケンケンを地面に突き刺す。
そして、ケンケンを支えに下から上へ足を突き出す。
ミュールの足でゲキオコアラは木がはじかれ、体勢を崩す。
その隙にイスタはゲキオコアラの脳天に剣を突き刺す。
「倒せた、倒せた」
イスタは額の汗を拭う。
やっぱ、俺のパーティメンバー強すぎ。
「ユウヤ、あの魔法よかったよ」
「あんがとさん」
俺は2人に近づく。
「じゃあ、他の冒険者でも探そう」
「まだストーカーすんのね」
ちょっと休憩させてくれ。
俺はゆっくり呼吸を整える。
位置取りを意識するとか始めてすぎて余計疲れる。
ジロッ……
何かしらの視線が俺の背中を突き刺した。




