旅立ちの日
私はギラッとリーダーを見つめる。
私の目を見てリーダーの目が鋭くなる。
「お前達、応援させないよう注意しろ」
「分かりやした」
手下の人達は檻の上に布をかける。
「こいよ、ガキ」
「ん」
私は1歩踏み出す。
男が剣を構える。
そして、また1歩踏む。
ドォン
私の足音が辺りに轟く。
「ん? どこに?」
男がキョロキョロしながら周りを見る。
私は木の上に立っている。
ここは森の中。
いつ、どこからモンスターが襲ってくるか分からない。
男は見上げて私を見つける。
「お前、逃げるのか? このビビり野郎」
そんなわけ……
「ない!」
私は木を蹴って別の木に飛び乗る。
私が木に飛び乗る度に枝がしなる。
蹴る度に葉っぱが舞い散る。
リーダーは目を細めながら私を追う。
だけど、リーダーは追ってるのは1歩前の私。
ドォン
私はリーダーの目の前に立つ。
「あ、いつの間に!?」
スッ
私がケンケンを振ると空が裂ける。
ギリギリでリーダーの剣がケンケンに触れる。
軌道をズラされた。
私はリーダーの左目を切る。
吹き出した血がまき散る。
「は、速すぎてワイも頭がついてこん」
「もう1回」
私は1歩後ろに下がる。
リーダーは左目を抑えたまま私を見ると剣をサヤにしまう。
「お前ら、逃げるぞ。ここじゃ勝ち目がねぇ。撤退だ!」
リーダーはそう言って手下を連れて逃げて行った。
私はそれを見てホッと胸を撫で下ろす。
私は檻のところに行って布を取る。
みんな怪我してる。
「ねぇ、お母さん」
お姉ちゃんがお母さんに話しかける。
「なんだい?」
「最初からミュールに戦わせとけばよかったんじゃない?」
「子供に戦わせる親がどこにいるのさ」
「ここに」
「あんたはもう大人だろ」
お母さん達は傷だらけになりながらも話していた。
2人は元気そう。
「ミュール、鍵開けて。ギューギューに詰められてて痛い」
「ごめん、リク」
「お前が悪くないのは誰がどう見ても明らかなんだから謝んなよ」
私は檻を無理やりこじ開ける。
「お母さん、ミュール強くない?」
「よく食べる子はよく育つってやつだよ」
この檻硬かったな。
私は助けた皆からありがとうを受け取る。
檻に入らなかった人皆でけが人の手当をする。
私はちょっと疲れて地面に座る。
「お疲れさんやな、ミュール」
「ん、疲れた」
私が腕を伸ばしていると包帯を巻いたお母さんがやってくる。
「よくやったね、ミュール。今日はご馳走だよ」
「え! 本当!?」
私はヨダレを垂らしながら立ち上がる。
「全然疲れとらんやん」
ごちそう、ごちそう。
私はジュルジュルと垂れるヨダレを拭きながら大切なことを思い出す。
「そうだ。お母さん、明日すぐに旅に出たい」
「いいよ。明日で14歳だしね」
「めちゃくちゃ返事早いやん。娘が旅立つことに葛藤とかないんか」
ケンケンはびっくりしながら言う。
お姉ちゃんの時もこんなだったよ。
「でも」
お母さんは笑顔で私の頭をワシャワシャと撫でる。
「誕生日ぐらいは祝わしてくれないかい? 1日早いけど」
「ん、ありがとう」
お母さんのしっぽは垂れていた。
皆、焚き火を囲んで私の一日早い誕生日を祝う。
私はバクバクと目の前にあるものを食べる。
「ミュールのやつ、ニキビーフ1頭余裕でたいらげやがった」
「私とやり合いたいなら船1隻分持ってきな」
「ここ森の中だけどな」
コオは呆れる。
でも、笑っていた。
他のみんなも仲良く笑っていた。
私はそれを見ながら皿の上に乗ってる料理を食べる。
おいしい。
パーティも終わり、夜がふける。
「じゃあな、ミュール。早く帰ってこいよ」
「ん、分かった」
私達は自分の家に帰る。
なんか酒臭い。
「流石に今日は遅かったね、ミュール」
「ミュール、夜帰りとか不良かー?」
「朝帰りだろ、それ」
酒に酔って顔真っ赤になった2人が出迎える。
「ミュール、早く寝ないとお姉ちゃんみたいなナイスボディに育たないよ」
お母さんはドン引きした表情でお姉ちゃんを見る。
その視線で酔いが冷めたのか顔の赤みが気持ち引いていく。
「……まぁ、今日はありがとね。じゃあ私寝るから」
「ん」
お姉ちゃんはそう言って自室に行く。
「お母さんはまだ寝ないの?」
「……まぁ、どんだけ疲れても寝れない時もあるもんさ」
「そうなんだ」
いっつも誰よりも早く寝てるのに。
私は自室のドアノブに手をかける。
「大きくなったね、ミュール」
お母さんはそう言うとコップ一杯に入れた酒を飲み干す。
バンと机にコップを置く音が静かなリビングに鳴り響く。
急にどうしたんだろう?
私は疑問に思いながらも自室に入る。
そしてすぐにベットに顔を埋める。
今日は疲れたな。
「ケンケン」
壁にたてかけていたケンケンに話しかける。
「なんや?」
「これからもついてきてくれる?」
「ついて行くもなにも、ワイは剣や。一緒に行きたいなら持っていけばええやろ」
ケンケンはキザっぽく言う。
「ん、ありがとう」
「……なんか恥ずいな」
何を恥ずかしがってるんだろう。
私は月を見上げる。
私が勇者になれば獣人がビビりって言われなくなる。
勇者になるには魔王を倒せばいい。
私が魔王を倒せばそれでいいんだ。
皆と笑えるようにしたいな。
―――――――――
ガタン、ガタン
馬車が心地よく揺れる。
「ミュール……ミュール、ミュール!」
「ふにゃ?」
大きな声で私の目が覚める。
「ミュール、やっと起きたか」
「ユウヤ、どうした?」
私は目を擦りながら体を起こす。
「もう着くぞ、王都に」
「そうなんだ」
なんか、懐かしい夢を見てたようなそんな気がする。
「はい、ケンケン。寝てる時に硬いものあると邪魔かと思って持ってたから」
ユウヤはそう言って私にケンケンを渡す。
「ありがとう」
「どいたま」
私はおもむろにケンケンを見る。
「ん? どうしたんや?」
私は少し口角を上げてケンケンを背負う。
王都の門がギギギと音をたてながら開く。
「今日も祈るとするか」
「勇者様に私達の努力を見ていただかなくてはですものね」
「そうだな」
中には大きな建物が何棟も建っていて人がごった返していた。
それと、おいしそうな匂いがする。
じゅるり。
「まずは宿とってからギルド行くからね」
「イスタ、王都の地図ってある?」
私は2人の会話を横目で見る。
そして、ギュッと拳を握る。
絶対、魔王を倒すぞ。




