次の町へ向かってみた
俺達は馬車に揺られながら王都へ向かう。
俺は人魂を出して周りの景色を撮らせる。
馬車はトコトコと進む。
「ユウヤ、王都は普通に貴族とか王族とかいるから気をつけてね。ミュールも」
「分かった」
「ん」
ミュールはしっぽをフリフリしながら窓の外を見る。
俺は人魂の画角を調整し、投稿した動画のコメント欄を見る。
まずは大きなミキと戦ったやつだな。
(すごいCGですね。なんの編集ソフト使ってるんですか?)
(過去動画見てこい)
(過去動画見てきました。これ、本物の異世界なんですね)
視聴者達は俺が本当に異世界にいることを理解してくたようだ。
嬉しいものだな。
(ミュールちゃんの動きすご)
(ミュールちゃんは俺の嫁)
(頭ポンポンしてたユウヤに天誅したい人いいね)
2000いいねか。
俺の今の登録者数は1万人。
その5分の1がミュールファンということか。
天誅程度の怒りなら異世界だし平気だな。
俺はうんうんと頷く。
……1万?
俺は登録者数のところをもう一度見る。
1万だ。
フォレプリ前は3千ちょいだったよな?
「俺、すごい」
「自画自賛しちゃってどうしたの?」
「俺の凄さに俺が驚いてた」
異世界に実際にいるという唯一無二のジャンルだからな。
やはり、ガチモン異世界系はイける。
俺の目に狂いはないというか、狂う理由がない。
俺はえへへと笑いながらコメント欄を見る。
(イスタの活躍をもっと映せ)
(イスタちゃんファンに失礼だと思わないのか)
(イスタちゃんは俺の嫁だぞ。花よりも丁重に扱え)
イスタファンは過激派が多いな。
過激なこと言ってたらイスタに嫌われるぞっと。
イスタはコメント欄見ないし読めないだろうから嫌うもクソもないけどな。
次はフォレプリ戦だ。
(こういうのできるの本当に出来て羨ましい)
(ユウヤさん、すげぇっす)
俺を褒めるコメントが多いな。
やっぱ、活躍度合いによって視聴者達の関心度が比例するのだろうか。
ここは研究だな。
コメント欄をスクロールする。
視聴者達が求めてるのはやはりイスタやミュールが映ることか。
可愛いもんなこいつら。
やはり顔か。
ファン層の割合で言うなら俺とケンケンが合わせて1割あるかないかで、残りはイスタとミュールが争いあってて今はミュール優勢って感じか。
で、俺はケンケンにも負けてる。
仮面でも付けてキャラ付けしようかな。
とりあえず、今はファンを増やす事に専念しよう。
俺への人気はそこから上げていけばいい。
幸い、動画投稿や編集は俺にしかできないのだから俺に目がいくよう仕向ければいいか。
「動画投稿ってのは大変だな」
俺がフフと自分の成長を実感しながらスクリーンを閉じる。
とある村に着くと馬車が止まる。
「今日はこちらで、寝泊まりしていただくことになります。翌日出発しますので予定通り来てください」
馬車の運転手はそう言って俺達を降ろし、近くの馬小屋に行ってしまった。
日はまだ上がっているがここから王都まではまだまだある。
夜中に馬車を走るのは危険だからな、途中の村で寝泊まりするんだ。
にしても、田舎すぎだなぁ。
辺りを見渡すと1面畑ばっかり。
ぽつんぽつん民家がある程度だ。
発展してるのはやっぱり貴族が住んでる町辺りだけってことなんだろうな。
「宿はこの村の中央部分にあるみたいだからそこ行こっか」
馬小屋も中央辺りに作れよ。
村の中央に来るとさっきの場所よりは栄えていて、出店や宿が沢山あった。
ミュールはいつの間にか口いっぱいに食べ物を頬張っていた。
「町で見た時も思ったけどこういう市場って新鮮だなぁ」
「え、ゆうふぁのふぇかいにふぁふぁへふぉふぉ――」
「口のもん全部飲み込んでから言え」
ミュールはごくんと飲み込む。
ちゃんと噛めよ。
「ユウヤの世界には食べ物なかった?」
「いや、溢れかえって好き嫌いできるぐらいはあった。でも、こう肉なら肉屋、野菜なら八百屋みたいに別の店でそれぞれのもの買うなんてことはなかったな。全部同じ店にあるから」
だからかな。こういう祭りのように出店や人でごった返す感覚は非日常的で好きだ。
普通に楽しいし。
せっかくだし、異世界産の食材で料理動画出すのもありだな。
ドラゴン肉のソテーとか。
ソテーって何かあんまり知らないけど。
「今日のご飯せっかくだし作ろうかな」
「え、イスタ料理できんの?」
「お母さんに叩き込まれた料理なら何個かあるからね。お母さん達も涙目で食べてたよ」
子供の成長スパイスありにしても泣かせるのは凄いな。
「じゃあ宿取ったら買い出ししようぜ」
「私、味見係」
俺達は宿を取ってすぐさま買い出しに出かける。
「適当に肉と野菜買って後は調味料買えばいいかな」
屋台をぶらぶらと見ながら適当に回る。
「何してんだ、大事な商品台無しにしやがって」
どこかで怒鳴る声が聞こえる。
ミュールとイスタはおもむろに横道を見る。
イスタはハッとし、ミュールの方を見る。
「フード持ってる?」
「ん、一応もらった」
ミュールは巾着袋からフードを取り出し頭の耳を覆い隠すように深く被る。
そして、ダボッとしたフードの中にしっぽを隠す。
ミュールがサッサっと着替え終わる。
「どうした、なにがあった?」
俺が困惑していると察してかイスタが近くに来る。
「1回宿に戻ろっか」
イスタはそう言って元の道を辿ろうとする。
「今日の晩御飯何にする?」
「チーズインチーズ」
「いや、それただのチーズじゃ」
横道から通行人が談笑しながらやってくる。
俺は気になって横道をチラリと見ると足枷のついた奴隷のような子が倒れていた。
俺は助けないとと近づこうとするが、ミュールに腕を捕まれる。
ミュールは真剣な目で俺を見ると、足早に俺を連れて宿へと戻った。
俺はミュールをチラッと見る。
ミュールは悲しそうな顔をしながらもフードの縁を何回も触る。
「ミュール、今日は一応寝ない方がいいかも。宿でも安心できない」
「ん、分かった」
「何話してんだ?」
そういえば、なんでミュールはフード被ってんだろ。
「チラッと見たでしょ? ならそこに奴隷っぽい子がいたよね?」
「あぁ、まぁな」
「奴隷がいたってことは売人がここに来てたってこと。もしかしたら今ちょうど売人がいるかもしれない」
それとミュールがフードを被って宿まで戻ることになんの関係が……
……勇者教か。
俺はミュールを見る。
フード被るの慣れてたな。
「でも、ミュールは俺達と一緒にいる。守られてるとは考えないのか?」
「獣人差別をあんまり甘く見ない方がいいよ」
冒険者パーティーの一員であったとしても獣人というだけで卑下するパーティーは少なくないってことか。
「町にいた時はこんなんなかったよな?」
「村とは違って町には騎士がいるからね。騎士本人は獣人をどう思ってるか知らないけど相手が獣人でも誘拐は犯罪だから。犯罪を見過ごすのは治安の悪化に繋がるし」
イスタはミュールの近くにいながら周りを警戒する。
「ユウヤ、今日の晩御飯の材料買ってきてくれない? メモ渡すから。もう文字読めるよね?」
「文字変換表見ながらならな」
イスタはメモに文字を書く。
「いい? 絶対に奴隷を助けようとしちゃダメだよ。絶対」
「お、おぉ」
助けることが悪になるってどゆこと?




