芸術爆発してみた
俺は今編集作業に勤しんでいる。
ゆっくり寝れたから作業のペース自体は大丈夫。
字幕は付けなくていい。
いいとこだけカットしてエフェクトを入れるだけだ。
「けど、そのエフェクトがむずかちいよー」
なんだよこれ。
こんなエフェクトよりも魔法の方が派手だわ。
この世界に染まった俺ですらこう思ってるのに他のやつらが思わないわけがないじゃんか。
俺は深くため息をつく。
「孤独な戦いだぜ」
俺が窓の外を見ながら手を止めてるとイスタ達が帰ってくる。
「ユウヤ、宣伝してきたよ」
「ありがとう。鳥になりたい」
「変な独り言言ってるよ。有翼種だって1部大変な子がいるんだからあんまりそういうのは言っちゃダメだよ」
似たようなこと元の世界言ってるの大草原笑笑左衛門。
俺は乾いた笑いをする。
「ユウヤ、私が全力で投げれば鳥みたいに飛んでる感覚になれると思う」
「死ぬやろ、それ」
「お、いいな。本当に鳥になれるじゃん」
「明るいのか暗いのかよく分かんないからどっちかに絞ってくれない?」
動画投稿者はハイテンションじゃないとやってられない。
俺は眉間をつまんで動画を見る。
「何かこう、インスピレーションが湧かない」
「芸術家みたいなこと言うじゃん」
「芸術家、か」
動画投稿者も一種の芸術家みたいなもんだからな。
「町中歩くか」
俺は立ち上がって腕を伸ばす。
「ユウヤも体動かす?」
「運動いいね。俺もするわ」
「ん。公園行こ」
俺達は公園に行く。
さてと、心をリフレッシュするには運動が1番だ。
ドンドンドンドン
俺はしっかりとストレッチする。
しっかり伸ばさないとケガするからな。
ドンドンガンドンドン
さて、問題。
この音発生源なーんだ。
「イスタ、やっぱり魔力変」
「気にしなさんな」
正解はミュールとイスタの殴り合い、もとい遊びの音でした。
これが遊びって野蛮なやつしかいねぇのか、この世界。
「やばんばばんばんばん♪」
「ユウヤ、早く来なよ」
「死ねってのか」
そんな殴り合いは前衛組だけでやってくれ。
俺は大自然の中でも携帯をいじる現代っ子だ。
「もっと、他の遊びないのか?」
「他の遊びってこれ遊びじゃなくて準備体操だよ」
「恐怖度マシマシだわ」
じゃあ本当の遊びってなんだよ。
「でも、私が知ってるの人間の遊びだからミュール知らないだろうし。でも、拳は共通言語だから」
「イスタ、優しい」
「ミュールもキレがあって良かったよ」
2人は腕をぶつけ合う。
ヤンキーマンガかな?
俺は地面に置かれてあったケンケンを取る。
「お前だけだ、俺と分かり合えるのは」
「あんま、町中で話しかけといてくれや、喋ってまうやろ」
「すいまへんなぁ」
「真似っ子のようで真似っ子じゃないのやめてくれや」
俺はケンケンに頬ずりする。
「結構体ほぐれるんだけどな、これ」
「怪我はしないように手加減はしてる」
「魔法使いにはよく分かりませーん」
「近接できる魔法使いもいるにはいるんだけどな」
それもう魔法使いじゃないだろ。
ていうか、どうしたものかな。
外に出たはいいけどインスピレーションが湧いてこない。
うーん。
ドンガンドンドンバンバンドン
また戦い始めやがった。
俺は2人の戦いを見る。
……戦いって実際見た方がやっぱ迫力が段違いだよな。
動画とかだとどうしても首とか一方向に目を向けちゃうし。
首とかを動かすようなのだったら迫力が上がるのかな?
俺の編集力じゃそんな大層なものは作れない。
素人に毛が生えた程度だけだ。
俺は腕を組んで考える。
「戦い、迫力、首動かす、ドッカーン……」
そういえば、俺ってスクリーンを空中に自由自在に動かせるんだよな。
俺はスクリーンを出して適当に動かす。
どれだけ遠くても動かせるし。
俺はイスタ達の間にスクリーンを持っていきびっくり箱のエフェクトを見せる。
「「ふにゃ!?」」
2人は勢いにやられぶつかる。
おもろ。
俺はイスタに胸ぐらを捕まれ、ミュールに砂をかけられながらも考える。
もう人形劇の体をぶっ壊してもいいからスクリーンを観客のいたるところに移動させればいいのでは?
俺が今しようとしてるのは動画投稿とは別の動画公演だ。
投稿はスマホやモニターに向かって視聴者が首を固定させる。
けど、公演は舞台上の人に合わせて客が首を動かす。
だから、迫力が違って見えて……
「これだ!」
「なーにがこれだ! なのかなー」
「にゃー」
「ごめんて」
でも、これならいける。
編集力が弱い俺でもまだ工夫次第で動画が生きる。
「よぉし、編集再開だ」
俺は腕を大きく振りながら宿へ戻る。
「あ、インスピレーション湧いたみたいだね」
「ユウヤ、楽しそう」
俺はひたすら練習する。
今までは作って終わりだった動画をどう見せるかが大事になってくる。
効果的な視点移動、これを独学で見つけなければならない。
いや、クソみてぇにムズいな。
参考動画とかねぇのかよ。
俺は動画の場面ごとでどこに動かすかを考える。
「これだと、ちょっと変か。いや、大丈夫か?」
さっぱり分からん。
正直、今まで通りでいい気がしてきた。
……いや、ダメだ。
今まで通りで満足したらそれでおしまい。
まだ時間はある。
自分の納得のいく出来にするぞ。
時間は過ぎ月が出てき始めても練習していた。
「ユウヤ、そろそろご飯食べに……」
イスタ達が部屋のドアを開ける。
すると、イスタ達は目を見張った。
俺の空間を使ったスクリーン移動にイスタ達は不思議と目を追わせる。
ちょっとしたワクワク感と迫力。
さらに動画への自己没入感が高まったのだ。
動画に出てるのが自分達なのもあるだろうけど。
動画が終わり俺はイスタ達の所へ行く。
「イスタ、ごめんごめん。練習してた。ご飯だっけ?」
「うん。にしても、ユウヤは凄いね」
「私がドーンって飛んでいくとこ見るの凄く楽しかった」
それはその時の事思い出したからだろ。
まぁ、2人がいいと言ってくれてるんだ。
なんとかなる。
そのまま1日が終わり、そして次の日の夕方となる。
イスタ達の宣伝のおかげか、一般人だけでなく休憩中の騎士まで見に来ていてその全てが俺の登場を待っていた。
やっぱ、知らせるって大事だね。
俺は僅かな不安と緊張を持ったまま中へと入る。
俺が前に立つとパチパチと盛大な拍手が鳴る。
「では、始めます。ですが、その前に一旦CM」
様々な広告を流し店の宣伝は忘れずに行う。
広告ですら皆がおぉぉと声を上げる。
本番はここからだぞ。
俺は皆に見えやすいように大きくスクリーンを出す。
動画のことを観客の人に理解して貰えなくてもいい。
エンターテインメントはいかに観客を楽しませれるかの世界なんだ。
俺は深く息を吸って話し始める。
「とある少女が冒険の途中、ダンジョンにへと足を踏み入れた。そこは未開の地で何がある分からない状態。そんな中で少女達はどうするのか」
俺はそう言って動画を始める。
まずは大きなミキ戦だ。
ここは根っこ攻撃が凄かった。
観客の目にも追えるが素早いスピードの移動で根っこ攻撃の複雑さを表現。
次にミュールがミキを切るシーンだ。
ここは動きを止めて、そして、次の切った後に根っこを足場にして核に向かうシーン。
核に一気に近づく時があるからそのタイミングでスクリーンを拡大。
遠近法でスクリーンが近くに来た感じと共にそのまま核を切る。
これで、ミュールのスピード感を出す。
次はフォレプリ戦だ――
俺は最高の調子で動画公演をやりきる。
俺がお辞儀をすると拍手喝采が巻き起こる。
「ねぇ、最後って聞いたけどもうここには来てくれないの?」
1人の少年が俺に語りかけてくる。
この子は最初からいた子だ。
少年は少し寂しそうな顔で俺を見る。
「いつか、また戻ってきます。いくつか新作を作って」
「ほんと!? 絶対だからね」
「もちろん。エンターテイナーは面白くない嘘をつかないからな」
俺は少年の手を握る。
「絶対やるから絶対見に来いよ」
「うん!」
俺は優しく少年を父親の元へ帰す。
「では、皆様、また会える日を楽しみにしております」
「うちの宣伝もしてくれー!」
「楽しかったわよー!」
「また見せてくれー!」
俺は観客の声援を背に宿へと向かう。
今回、全体的には成功したが観客がスクリーンを追うのに手間取ってた瞬間がチラホラあった。
要改善だな。
俺がアゴに手を置きながら考えていると宿に着く。
宿には既に2人がいた。
「帰るの早いな」
「だって、明日にはここを出るからね。準備しとかないと。それにユウヤの凄さは分かってたから」
「拍手いっぱいで凄かった」
「褒めてくれてありがとな」
俺もイスタ達と同様に明日の支度をする。
俺達はもうこの町を出る。
次は王都だ。
1話ぶりの作者様だよー
第一章はこれにて終了
異世界でちゃんと配信者をさせるの大変だけどこれからも頑張って行きたいと思います
ユウヤ達がこれから待ち受ける困難は一体なんなのかを見届けていただけると幸いです
一つだけ、この作品を見る際に大変になるであろう点を遅いですが言わせていただきます
この作品、というか僕の作る作品は設定が細かくなりがちです
できる限り説明パートは省いてはいますがもしかすると設定説明が長かったり読んだけど理解できないということがあります
正直その辺はどう頑張っても出てきますので最悪設定ガン無視して流れだけで楽しむというやり方もおkです
注意点は以上です
この章を最後まで読んでくれてありがとうございます
次章もその次もなんなら最後まで読んでくれたら飛んで喜びます
よかったらブクマとかもお願いします
では、またお会いしましょう




