初心者用ダンジョン攻略してみた4
木の幹モンスターは根っこを触手みたいに動かす。
ドンドンドン
木の根っこで地面を叩き砂埃を舞わせる。
「ミ――」
「ミキ、な」
ミキ、木だし火に弱いだろうな。
俺が詠唱し始めると2人は前に出る。
伸びてきた根っこをイスタははじき、ミュールは切り落とす。
イスタは伸びてきた根っこを足場にして、ミュールは強化した足で高く飛んで、2人ともミキの上に乗る。
俺は魔法を唱え終わり火の玉を何個も出す。
ミキに火がつき燃え上がる。
だが、ミキは火を根っこでパッパッと払って消す。
ある程度の知能は持ってるってことかよ。
強いなぁもう。
「えいっ」
ミュールはケンケンを思いっきりミキに差し込む。
「これの地道な繰り返しだね」
イスタは伸びてくる根っこを弾きながら言う。
「再生速度的に無理やろ」
「ケンケン、無理じゃなくてやるかやらないか」
「脳筋思考すぎん? 知ってたけど」
ミュール達は伸びてくる触手のような根っこを切り落としながら地道にミキを削る。
ミュール達が削る度にその部分が再生される。
自分のシッポ追いかける猫みたいだな。
ミキの核は内側にあってその内側に行くのに苦労してるのか。
つまり、どうやって素早くミキを削ぐかが問題だ。
ノコギリでもあれば話は別なんだけどなぁ。
俺は火の玉を飛ばしながら考える。
飛ばした火の玉は全て根っこで弾かれる。
俺はそれを見る度に歯がゆくなる。
……待てよ?
昔、学校で木はとある方向で切るとものすごく切りやすいと聞いたことがあるな。
試す価値はある。
「……ってどの方向か知らねぇよ」
「どうしたの、ユウヤ?」
「いや、なんでもない」
そういうのがあるって知ってるだけだ。
学校なんて俺、ペン回しで番長になった程度の記憶しかねぇよ。
(どうした、ユウヤ)
(話聞こか?)
次々に上がってくる心配するコメント達を見て俺はあることを思い浮かべる。
「そうだ。視聴者さん達、教えてください」
(何を?)
(主語抜くな)
(で、どしたん、話聞こか?)
俺はニヤッと笑う。
視聴者さんに質問すると沢山のコメントが帰ってくる。
なるほど、コメ欄を見た感じ順目っていう木の繊維の方向に沿って切るのがいいのか。
なんでなのかはこの際どうでもいい。
俺はミキの上部を撮るように人魂を上にあげ、スクリーンから情報を読み取る。
俺は力では役に立てないけどこういう知識面では役に立てるはずだ。
「ミュール、俺の指示通り切れ」
「ん、わかった」
「イスタはミュールが切る事に集中できるよう援護だ」
「了解」
繊維の方向は……
「ミュール、右向いて端あたりで切れ」
「ん」
ミュールは俺の指示通りに動き、ケンケンをミキに突き刺す。
右、左、ケンケンを引いて切れ、ギコギコはしない、1度刃が入ったらすぅー。
などなど、色々指示を出しながらミキを切る。
ミキの再生能力は高かったが、ミュールが切るほうが早かった。
ギコギコ、すぅー
切り落とした木の一部がドンと地面に落ち、1部屋程ある大きさの核がキラリと露出する。
ミキはブルブルと体を揺らす。
その姿は怒ってるようにも取れるが、ミキの上に立ってる2人が立つのに精一杯になる。
さらにミキは多くの根っこを伸ばして触手のように2人へ襲う。
まずい、再生し始めてる。
せめて、魔法だけでも当ててみるか。
俺は土魔法で岩の塊を作り核に向かって飛ばすもビクともしない。
そんな中、イスタとミュールはお互い目を合わせたと思ったらイスタは剣をミキに突き刺し、ミュールはケンケンを口で掴む。
そして、イスタは剣を支柱にしてミュールを蹴り飛ばしミキから落とす。
ミュールは襲ってきた触手のような木の根っこに体全体でしがみつき、他の触手へさながら猫のように飛び移る。
他の触手へ飛び移り、飛び移り、核を目の前にする。
そして、口で掴んだケンケンを手に持ち、体を後ろに仰け反らせる。
ミキの核はほとんど隠れかかっていて、もう無理かと思う。
が、ミュールは針の糸を通すように少しだけ見える核に力いっぱいに剣を振る。
ミキの核がパリンと壊れる。
ミキは動かなくなり触手のような木の根っこもドンと落ちる。
強かったな。
俺は一息ついてるイスタと目が合いハハと疲れた笑いをする。
「ん、強かった」
ミュールはやれやれと言わんばかりの顔でケンケンを鞘に収める。
「「……」」
俺達はミュールを見つめる。
「どうしたの? 2人とも」
「「じー」」
目ん玉飛び出るぐらいじーっと見る。
「ミュール、お前がドア開けたのが悪いんやで」
「……あ」
ミュールは腑抜けた顔で思い出す。
「ドア開けたこと忘れてたんかい」
「まぁ、倒せたしいいか。もしかしたら隠し部屋かもだからこの部屋中隅々まで探そ。いいのあるかも」
イスタは部屋の縁を周る。
そもそも、この階層自体隠し部屋なのにまだ隠し部屋作るのは性格悪いとしか言いようがない。
「ミ○キー、おいしい?」
「木やし、やめといた方がええんちゃう?」
ミキって言えよぉ。
垢BANにビビりながら部屋を隅々と探すと扉を見つける。
「もしかして、ここ宝部屋?」
「多分そうだろうね。でも、構造的にダンジョンの最奥ではないから神代魔法はないかな」
ここ最奥じゃないのか。
ミキはただの中ボスだったか。
イスタはドアの方に行きトラップがないか調べる。
「ただのトラップ部屋だったな。な、ミュール」
「ん、強かった」
「ミュール、今のはやらかしたお前を責めてるんやで」
ミュールはビクッとシッポを立たせるとモジモジして頭を下げる。
「ごめんなさい」
「謝れてえらい」
「ゲロ甘やんけ」
俺はミュールをよしよしと撫でる。
(通報しますた)
(死ね)
(言っておくが、俺はかーなーり強い)
俺、死んだかも。
「あ、猫耳信者さん、スーパーチャットありがとうございます。お前の○○○をむしり取ってやる」
俺は若干内股気味でイスタの方に行く。
「どうだ?」
「うーん、トラップはないけどガタついて開かないね。造りが甘いエルフっぽい」
「ドワーフみたいなことしてるだけのエルフが作ったってことか」
「まぁ、最奥の部屋にさえ行けば分かると思うけどね」
そうか、エルフなら神代魔法、ドワーフなら魔道具と分かれてるって言ってたもんな。
イスタはうーんと悩むとミュールをチラッと見る。
「やっちゃえ、ミュール。ぶっ壊せ」
「まかせろー」
ミュールが勢いよく突進するとドアがドーンと壊れる。
ミュールはムフンと腰に手を当てドヤる。
これでチャラだな。
俺達は部屋の中へ入る。
中には何かごちゃごちゃした部屋中を巡る装置と1冊の本があった。
なんだろう、これ。
イスタは近くにあった玉を台座と思しき場所に置くと玉はコロコロと転がり始める。
コロコロコロコロコロコロ
たまに2個に増えたり1個に戻ったり転がる玉が変わったり、ドミノ倒しのようなものが起きたり。
そして、玉が終着点に着くと旗が立ち壁がズゴゴゴゴと上がってハシゴが現れる。
(ピタゴラスイッチかよ)
(しょうもな)
(なんだ、このダンジョン作ったやつ)
(異世界人っぽい感想やめろ。ワイらは地球人やぞ)
いや、これは地球人もなるだろ。
皆、なにこれって顔してるし。
ミュールは目をキラキラさせてるけど。
イスタは部屋にあった1冊の本を手に取り、パラパラとめくる。
「え? なんでここに?」




