初心者用ダンジョン攻略してみた2
俺達がダンジョンの中を進む。
ジメッとした湿気が周囲の生暖かさと重なりどんよりとした暑さが俺達に襲いかかる。
通気性が高い服選んでよかった。
1歩1歩の足音の響きが永遠と聞こえるぐらい静かだ。
壁のレンガからは木の枝やツタが生えていて時間の流れを感じさせる。
いつ作られたものなんだろう?
「こんなにも植物が生えてなんて作った人は下手くそだね」
イスタは淡々とダンジョンの中を見るが、俺はワクワクしながら足取りが早くならないようゆっくり歩く。
(ちょっと、こういうのワクワクする)
(ぐう分かる)
(秘密基地とかにしたいよな)
コメント欄も俺の気持ちが分かるみたいだ。
まぁ、そんなことよりも……撮れ高欲しいなぁ。
初心者用すぎて何も出ない。
俺が撮れ高のことを考えてると、木の幹が根っこを足みたいに動かしワシャワシャと反響させながら歩くモンスターに遭遇する。
確かこいつの名前はミッ○ーだ。
うん、アウトだ。
「あ、これはミ――」
「はーいイスタちゃん、解説は後回し。先に倒さないとダメでしょー」
「え、でも分からない人が大半でしょ?」
「行っけー、ミュール。切り裂くだ」
「ん」
ミュールはケンケンでミ○キーを叩き切る。
パリンという音が聞こえるとグダっとミ○キーは倒れる。
魔法生物だからモザイクなしで済むの楽すぎ。
てか、名付けの人、もう少し捻った名前つけろ。
「ミ○キー、撃破」
「おい、ミュール!」
俺は一旦配信を中断する。
不味い、非常に不味い。
俺は頭を抱え悩み込む。
「ユウヤ、どうした?」
「悪魔でも取り憑いたんじゃない?」
イスタ達は悩んでる俺を後ろから眺める。
……いや、逆に考えろ。
異世界人が付けた名前なんだから関係ないだろと。
たまたま同じ名前がついただけ。
俺は立ち上がりうんうんと自分を納得させる。
「あれはきっと悪魔ウーナズーキだね。聖書に出てきた地獄の悪魔の1人で、人の話に適当に頷くから神様が怒って悪魔にしたんだって」
「とりあえず、ユウヤは教会に連れてけばええんやな?」
「私、運ぶ」
こいつら、なんの話ししてんだ。
俺は配信を戻す。
「いやぁ、不慮の事故がありましてですね。でも、皆こうして無事でーす」
(ミ○キー)
(ミ○キー)
(ミ○キー)
「連呼すんな!」
「なんか、えらい大変やな」
「配信者? って気をつけないといけないこと沢山あるみたいだね」
俺は視聴者さんの○ッキー連呼を止めさせる。
本当に危ない。
垢BANされるとこだった。
夢の国は現実だとクソ怖いんだ。
俺達はダンジョンの中を更に進む。
(歴史を詳しく教えて)
このコメントに賛同したくさんの人達が同じようにコメントする。
「歴史かぁ。イスタ、どれだけ教えれる?」
「軽くなら分かるよ。まずねー」
イスタは女神が世界創っていなくなって戦争がうんたらかんたらと話し始める。
確か、大きな戦争があった時期を神話期って言うんだったよな。
(神様って本当にいるのか?)
(神話期だから神話の話なんだよ。だから、仮に戦争があったとしても脚色が多いだけかな)
イスタが話してる間もモンスターが襲ってくる。
が、血が出て倒す風景を見せれないタイプなので画面外で全てミュールが倒す。
俺一人なら丁度いいレベルなんだろうけどこいつら2人だとこのダンジョンヌルゲーになるな。
ダンジョン配信でどこまで視聴者と触れ合えるかも今回知りたかったが、これじゃあ実験にならないな。
「あ、ちなみにダンジョンって神話期の中盤、ドワーフやエルフ達が自分の作った物を独占するために建てた建物なんだよ」
(じゃあここってめちゃくちゃ大事な所じゃん。保存とか考えねぇのか?)
イスタが結構いい歴史の先生してるなぁと思ってるとモンスターと戦ってたミュールがやらかす。
ドォン
ミュールの拳がダンジョンの壁に穴を開ける。
ミュールは下手な口笛を吹いて誤魔化そうとする。
無駄だぞ。
イスタは何かを感じとったのか手を探知機みたいに動かしながら進む。
「何やってんだ?」
「いや、濃い魔力を感じて……」
イスタは穴の方に手をかざすと何かを感じたのか穴の中を覗く。
「え、何この穴」
イスタは驚いた様子でミュールが開けた穴を何度も見る。
「これ、多分未発見区域だよ」
「え?」
(なにそれ激アツ)
(ガチラノベじゃん)
(ここから先は通行止めだ)
(エセ黒の剣士は帰ってもろて)
イスタはダンジョンの地図を開き色々と調べる。
その間、ミュールは誇らしげな顔で俺を見ていた。
「うん、これ確定で未発見区域だ。す、すごい。このクソ弱ダンジョンで……」
ミュールの誇らしげな顔が強まる。
ちょっとムカついた俺はミュールの頬を持って無理やり変顔をさせる。
「もしかしたら魔道具もあるかも」
「マジか。行こうぜ」
俺はミュールを手から離し穴に近づく。
穴は直角に下に続いており、レンガの壁が続いてる。
ここにはツタとか生えてないんだな。
「……でも、そこまでの準備してないし。ユウヤも早めの方がいいでしょ?」
イスタは不安そうな目で俺を見る。
きっと動画の公演や広告に関しての事を心配してるのだろう。
「いや、そこは気にしなくていい。ちょっと遅くても実績で返せばいいし。それにここの奥に行った方がいい絵が撮れそうだ。今日、行ける所まで行こう」
「分かった。じゃ、行くよ」
イスタはそう言って巾着袋から縄を取り出し下に垂らす。
(wktk)
(ktkr)
(ユウヤが意外とイケメンな件について)
(分かる)
(これからは生きてよし)
「あ、漆黒のダークネスブラック黒の剣士さん、スーパーチャットありがとうございます。ごめん、やっぱ生きて」
やっと、俺の良さに気付いたか。
俺はドヤ顔でカメラに映る。
「あ、猫耳信者さん、スーパーチャットありがとうございます。ユウヤのドヤ顔よりミュールちゃんのドヤ顔見せて」
俺は後ろを振り向くとケンケンを持ち上げながら誇らしげに走り回るミュールがいた。
「わっしょい」
「わっしょい」
「わっしょい」
「わっしょい」
どんだけ自慢したいんだ、こいつら。
イスタが縄を垂らす。
「今思ったけど、これ命綱なしで降りないとダメだよな?」
「この程度の高さで何言ってるの?」
え? この程度?
俺は穴を覗く。
すると、人魂の光さえ食ってしまうほど暗く深い。
一瞬、暗闇に食われそうな実感が湧き心臓が跳ね上がる。
「ユウヤ、もしかしてビビった? さっき、ちょっと遅くても実績で返せばいいし。それにここの奥に行った方がいい絵が撮れそうだ。今日、行ける所まで行こうって言ってたのに?」
イスタはクスクスと笑いながら俺を見る。
俺は恥ずかしさで顔がみるみる赤くなる。
「さっきのユウヤ、かっこよかった」
「ミュール、それやと多分伝わらんで。ちゃんと、さっきのユウヤ《《は》》かっこよかったって言わな」
「確かに」
(草)
(バカ煽られてるやん)
ぐうの音が出ないほど恥ずかしい。
俺は顔を赤くしながらも手汗ダラダラの手で縄を握る。
「怖くなんかねぇんだぜ。こんなの誓約書書かされるバンジージャンプ程度なんだぜ。行くんだぜぇ!」
俺はおぉぉぉと叫びながら縄を伝って背筋が凍る暗闇の中へ降りていった。
(いや、地味に怖くね? それ)




