いいこと試してみた2
夕方になり昨日と同じステージに行く。
ステージ前には老若男女人がごった返してた。
「この人集りはなんなんだ?」
「なんか、先日ここでえんらい凄い人形劇があったらしくて今日もやるらしい」
「昨日のまじやばかったぜぇ」
冒険者のおっちゃんに、農家の親子、鍛冶屋のイカついドワーフ夫婦、エルフの賢そうなお姉さん、色んな人が集まっている。
「お、来たぞ、みんな」
1人がそう言うと他の人たちもぞろぞろと動き道を作る。
俺はその中を手を振りながら通り中へと入る。
配信前の待機時間のコメ欄みたいに賑やかだ。
有名配信者のだけど。
使うのはビックスライムの時に撮ったやつだな。
あれはかっこよさメインで作ったやつだし、受けもいいだろ。
「さぁ、見てらっしゃい。人形劇始まるよー」
俺はそう言ってスクリーンを出して皆に見せる。
皆は食い入るように見ておぉぉと歓声を上げる。
映像の中の俺は詠唱しバチバチと周辺に電気を漏らすと電気魔法を撃つ。
バチバチバッチーン!
電気の音が怖かったのか子供達は一瞬耳を塞ぐ。
親は背中を擦りながら見る。
「こんなの人形劇に出来んのか!?」
「魔力はほとんど感じない。だから、多分本当に出来てる」
「幻影魔法か?」
「だから、魔力感じないって言ってんだろ」
必死に考察してら。
放たれた電気はスライムに直撃すると、スクリーン全体が白くフラッシュする。
「父ちゃん、目が、目がァァ!」
「いったい目がァァァ!」
やべ、フラッシュ強くしすぎた。
「光魔法か?」
「魔力感じねぇっつってんだろ。耳に幻聴魔法でもかけてんのか」
「じゃあなにこれ!」
「知らねぇ、怖い!」
光が収まるとスライムの動きが止まり、ミュールは前に出てスライムの一部を切る。
スライムはミュールに向かって体から出した触手のようなもので攻撃する。
スクリーンだからこそスライムの触手攻撃の複雑が見て取れる。
観客はミュールが触手を全て切り落としてるのを見て大興奮する。
しばらくすると動画が終わりその余韻に浸りながら皆わちゃわちゃと話し出す。
「かっこよかったね」
「どんなとこがよかった?」
「金髪のお姉ちゃんが後ろからスパーンって。獣人のお姉ちゃんも獣人なのに凄かった」
「だな。パパはあの男の人が良かったな」
「パパ趣味悪ーい」
趣味悪くないんだよ。
むしろ、趣味いいんだよ。
俺は辺りを見て状況を確認する。
よし、皆が盛り上がってるタイミングだ。
「皆さん、こちらも是非見てくださーい」
皆、なんだなんだとまた俺に視線を集める。
俺はある動画を流す。
【皆、この店知ってるか?】
動画の中の俺は路地裏の店を映す。
【この老舗感のある見た目の店はこの道の路地裏を歩いてすぐの所にあるんだ。中で売られてる商品は全てが一流。例えばこれ――】
「あ、人形劇のお兄ちゃんだぁ」
子供はスクリーンの中の俺を指さす。
動画の中の俺は簡潔にいい事だけを言う。
観衆の皆はあれ欲しいやこれいいなぁと話し合っている。
「あ、あの店知ってる! 行ったことないけど。丁度欲しかったのあるし行ってみようかな」
「行こ行こ」
俺がしているのはいわゆる広告だ。
店主に広告について説明するのは大変だった。
魔法の一種で何とか通じてくれたが。
この町でのなんちゃって人形劇としての知名度がバカ上がりしたことを利用し俺の顔を使って店を広める。
そのおかげで店は儲かって、俺は……ヒヒ。
なんにせよ、どちらもウィンウィンの商売ってこった。
翌日、店は大繁盛し、その噂を聞き沢山の武器屋や商人が俺の所に押しかける。
「うちのこの盾を紹介してくれんか? 報酬は――」
「いいや、このブラックグングニルを!」
「こんな名前だけの槍じゃなくてうちの超硬化金属鍛造剣モデル018を!」
「いいや、ワチの鍋を!」
「我のお玉を!」
「私の名前も紹介してください」
ちょっとしたお祭り状態みたいになってるな。
「俺のこの3回見たら死ぬと言われてる剣を――」
「「「それは流石にダメだろ!」」」
……流石に効果出すぎじゃない?
俺はニコニコと笑顔を取り繕いながらも内心そう呟く。
ちょっと怖い。
「イスタ、何あれ?」
大人数に押しかけられる俺を見てイスタ達は疑問に思う。
「さぁ? ユウヤが何やってるのか私にはさっぱり分かんない」
「ええ儲け話作ってたんやろなぁ」
「ユウヤは冒険者より商人の方が向いてる」
「ミュールそんな事言わないでよ。冒険者辞めるって言わないこと祈っとかないと。今からまた入信できるかな……」
イスタ達は何か話しているな。
まぁいっか。
俺はよいしょこいしょと武器や装備を一式を宿に持ってくる。
「何それ!?」
「すごい、ユウヤお金持ち」
「ほんまに、どないしたんやそれ?」
皆興味深そうに俺を見る。
「今からPV動画ってのを取るんだ。まぁ、いつもとちょっと違うだけで動画撮るだけだよ」
俺はイスタやミュールに色々装備を着せ町の外を出る。
「これ、私達が着てもいいの?」
イスタは自身の装備を見ながらそう尋ねる。
「まぁな」
「こんなの無くても平気」
「今回だけだから頼む。帰ったら晩御飯奢ってやるよ」
「ん、今回だけだから」
ミュールはしっぽをフリフリしながら前へ前へと進む。
チョロバカ猫耳。
イスタは不安そうに剣を見る。
「これ、私の欲しかったやつだ。けど、大丈夫なのかな。無料で使って」
「その分の仕事はやってるから大丈夫」
それに、どうせそれ貰える様に話つけたやつだし。
イスタが使うことでの宣伝効果とかいう異世界人には理解し難い言葉を使ったが俺の実績で何とか信じて貰えた。
実際に使ってる所を見せた方が凄さを実感しやすいからな。
人間ってチョロい。
俺はふふふと笑いながら進む。
「あ、ユウヤ、スライムついてる」
「え?」
俺が足を見るとそこにはスライムがベッタリ張り付いていた。
なんかヒリヒリしてきた。
俺はすぐに魔法を詠唱し、スライムを倒す。
俺は足をプルプルと震わせながら進む。
人間ってチョロいなぁ。
すぐに調子に乗る。
ソースは俺。
……盛者必衰って言葉が染みるな。
俺達は森の方に行く。
「あ、狂イノシシ」
「え、どこ」
ミュールはキョロキョロと周りを見渡す。
こいつ、狂イノシシにハマったのか。
ミュールは狂イノシシを見つけケンケンを抜こうとするミュールの肩を俺はガシッと持つ。
「ミュール、お前は攻撃を体全体で耐えろ。広告主のためにも気合いで」
今後の資金のためにも頑張って貰わないと。
「イスタはミュールが耐えてるうちにイノシシの頭切り落とす。同じ理由で出来れば一撃。そしたら、映える」
「映えるって何?」
「分かんないけど、ユウヤの言う通りにしてみたらいいんだよ」
「ん、分かった」
「ユウヤっていつも変な指示ばっかするやん」
「変な言うな」
ちゃんと考えてのことなんだぞ。
魔王倒すまでの道はきっといろんな面で大変な道のりだ。
特に金銭面。
俺はそこだけは何とかしようと頑張ってんだから。
俺は人魂を出し撮影を開始する。
「アクション」
「はい、カッッッット!」
広告は無事、撮り終わった。
「流石に疲れた」
イスタはぺったりと地面にしりを着く。
「今日何食べよっかなぁ」
「イスタ、借金ってどこでするんだ?」
「流石にミュールもそんなに食べれないんじゃない?」
「イスタ、舐めたあかんで」
間食に狂イノシシ1匹食べるやつだ。
俺は今日肝臓を売るかもしれないな。
晩御飯奢るって言っちゃったし。
「まぁ、そんなあるかもしれない未来は置いとこうぜ」
「普通あっちゃダメだけどね」
ともあれ、後は、人形劇で使う動画の撮影だ。
丁度よく強いモンスターと戦える場所ってあるかな?




