いいこと試してみた1
ポチポチポチポチ、ターン!
俺はゴブリンエンペラーの動画を編集し終わる。
「いい感じに出来たなぁ。鬼滅の○越えあるぞ、これ」
俺はぐぐぐぅーっと腕を伸ばす。
ゴブリンエンペラーの動画は元の世界に投稿はできないが、使い道ならある。
俺は宿の窓から外を眺める。
夕日が沈み始めていて町が赤みを帯びていく。
色んな人達で道が混み合い、足音が他の時間よりも一層聞こえる夕方の時間だ。
……え、夕方!?
もうこんな時間になったか。
早く行かないと。
俺は町の外に出て呼びかける。
「さぁ、人形劇始まるぞー。見てってータダだよー。本物みたいだよー」
「なんだなんだ?」
「お父ちゃん、人形劇見てみたい」
「そうだなぁ。いいぞ」
ぞろぞろと俺の前に人が集まってくる。
この時間帯は農作業が終わり、冒険者達も帰ってくる時間帯。
つまり、人通りが最も多くなるんだ。
ふふふ。
俺は動画を流す準備をする。
さっき人形劇と言ったのは嘘だが劇っぽいのは本当だ。
イスタ達がゴブリンエンペラーと戦ってる姿を編集しかっこよくした。
人形劇と偽るのはめんどくさい説明を省きたかったからだ。
イスタ達には許可をもらってるし肖像権諸々は大丈夫。
集まってきた人達がなんだろうと顔をのぞかせながら俺を見る。
俺はスクリーンを後ろにも見えるように少し大きめに出す。
「さぁ、ご覧あれ、タイトル『ゴブリンスレイヤー』」
スクリーンは森の風景を映し出す。
「ある所に冒険者イリスタという女の子がいました。彼女は冒険の途中強大な敵、ゴブリンエンペラーに会いました」
俺は人形劇を続ける。
流石に金的部分は入れてない。
基本的にはバトルシーン多めの劇だ。
動画の中の俺達がエンペラーとの戦いを繰り広げている。
エンペラーの攻撃を受け止めるミュールを見て皆はおぉぉぉっと歓声をあげる。
嬉しいな、自分で作った動画で皆が楽しんでくれてることが。
あ、エンペラーの地震を起こす攻撃だ。
あそこは死にかけたなぁ。
エンペラーのあまりの迫力に見てた人達は思わず後ずさりする。
そして、スクリーンの中の地震が本当に起きてると勘違いしたのか辺りを見渡したりする。
反応おもしろい。
動画を流していると人集りが大きくなってくる。
親子連れは親が子供を持ち上げ見やすいようにし、子供は楽しそうにはしゃいでる。
杖をついた老人は興味深そうにヒゲをいじる。
動画は終わり俺は盛大な拍手を受ける。
やっぱり、ここの人の文化的に流血は大丈夫なんだ。
親子が頭切り落とされるゴブリンを見てワイワイしてるし。
特に子どもはヒーローを見る目でミュールとイスタを見てるし。
「凄かったね。人形じゃなくて本物みたいだった」
子供はそう言ってイスタやミュールの動きを真似ているのか腕をぶんぶんと振る。
「そうだね。もしかしたら本物の人かもね」
「お父ちゃん、それはありえないよ」
楽しそうに話す親子は夕日へと向かって住宅街へと消えていった。
俺はそれを見て口角を少し上げる。
これ、旅の資金調達にめちゃくちゃ使えるな。
冒険者っていうのは何かと金がかさむ。
武器代、武器や荷物運びの魔法袋の点検代、宿泊代、馬車での移動費やら諸々でってイスタが言ってた。
純粋な力ではまだ役には立てなくても他で役に立とう。
今できることをしっかりと見据えるんだ。
俺はフフと不敵な笑みを浮かべる。
俺は晩御飯の時間になりギルドの食堂に来る。
俺がご飯を食べているとイスタが食べかけの料理を持って隣にやって来る。
「夕方ぐらいになんか人集りが出来てたんだけどさ、何やってたか知ってる?」
「俺が動画流してた」
「あーね」
イスタは肉を切ってパクッと口に入れる。
すると、突然喉を詰める。
胸をトントンと叩いていたので俺はイスタに水を渡す。
イスタは水をグビっと飲みコップを力強く置く。
「あれ、ユウヤだったの!?」
「そうそう。あの動画流したんだ。言ってたヤツ」
「あぁ、あれを。それであんなに人が集まるもんなんだね」
「俺もびっくりした。まぁ、それは良しとして。イスタは今日何やってたんだ?」
俺はペンネという種類のパスタをモグモグと食べる。
「武器屋巡って後は鍛錬かな。いい武器見つけたけど高いんだよね。これからの旅費とかを考えると出来ればゴブリンハザード討伐の金貨は残しておきたいし、あんまり無駄遣いは出来ないかな」
真面目だなぁ。
「ミュールが壁壊さなかったら良かったんだけどね」
それはそう。
「まぁイスタ、武器に関しては恐らくどうにかなるから大丈夫だ。俺に任せろ」
「???」
俺はさらにペンネを口に運ぶ。
肉と野菜のうま味が絡み合って、口の中に野菜の甘みと肉のコクが広がる。
温かさから料理人がこの料理に捧げた愛が伝わる、絶妙な味わいだ。
是非とも、食レポ動画を1本撮りたい。
モギュモギュモギュ。
俺はおいしそうに噛む。
「????」
イスタは、何が大丈夫なのかが分からないのか首を傾げた。
イスタに色々言って今日も休みにしてもらった。
よし、始めるか。
俺は町の中を歩く。
「あ、人形劇の人だ」
「昨日はどうも。今日もやるから見においで」
「わーい。お父ちゃん、行こう」
「そうだな。仕事手伝ってくれるか?」
「うん」
俺は手を振りながら親子を見送る。
「友達もいっぱい誘ってくれよー」
「わかったー」
俺は路地裏のいかにも儲かってなさそうなボロっちい武器屋の中に入る。
中にはテーブルで肘をついてぼんやりとしてるおじさんがいた。
「いらっしゃい。お客さんには全品お似合いでーす」
「やる気ないアパレルかよ」
「服なんかよりもいいもの取り揃えておりまーす。今なら店内30パーセントオフでーす」
売れないからってしょげやがって。
売れないのはこんな所に店構えるからだろ、全く。
俺はニヤッとしおじさんに近づき、話しかける。
「なぁ、いい話あるんだけどどう? 乗らない?」
俺はお金のマークを手で作り出し店主に見せる。
店主は目をキラリとさせ、詳しくと言って俺を裏に連れていく。
俺は色々とビジネスの説明をする。
俺の説明におじさんはうんうんとうなずき、徐々に口角を上げる。
「で、でも、失敗するんじゃないか?」
これはきっと、念の為の確認だな。
セールスマンの言ってることを鵜呑みにしてはいけない。
確実なデータと明らかな証拠による確率の高い選択肢をちゃんと自分自身で選んでると相手に伝える必要がある。
そうしないとカモだと思われるからな。
「これで、成功した大商人達を何人も見てきました。きっと、大丈夫です」
「でも、そんな方法をなんでこんなボロ店に?」
おじさんは今すぐにでも首を縦にふりたいだろう。
デスメタルレベルでブンブン振りたくなってるだろう。
「僕はまだ人に名を知られてませんから、大商人達には相手されません」
俺は自分を謙遜し、低い姿勢を見せる。
「ですが、いい意味で貧乏店主で柔軟な行動が取れるあなたと共に成長したいんです」
俺はおじさんの目を見ながら自信ありげに語る。
「成長……!」
おじさんは成長という言葉に食いつく。
よし、ここで一気に盛り上げよう。
「はい、共に成長し、世間に! 名を! 轟かせましょう!」
「やりまーす!」
おじさんはパッと席を立ち俺と握手をかわし、俺はニコッと笑う。
さぁ、計画を次に進めようか。




