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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第575話 煩わしい

(二人とも、最後まで魅せてくれよ)


今回の大会で、一番の期待をリングの上で戦う学生たちにイシュドが送る中……その学生たちは全くその視線に気付かないほど、目の前の相手に集中していた。


すると……リングの上で、奇妙なことが起こった。


それは、両者の細剣による斬撃がぶつかりあった瞬間、二人の細剣が弾かれ……そのまま後方へと飛んでしまった。


それでも二人は体勢を崩すまではいかず、前傾姿勢を取った。

そこまではよくある流れと取れるが……その後、何かに気付いた二人はそのまま魔法&徒手格闘戦には移らず、後方に弾き飛んだ細剣が落ちた場所へと移動した。


「「ふっ、ふっ……はっはっはっはっはっはっは!!!!!!!!!!!」」


細剣を取った二人は何かを察したのか、同じタイミングで笑い始めた。


「「「「「「「「「「?????」」」」」」」」」」


観客たちからすれば、今の光景のどこに笑い合う要素があるのか解らず、首を傾げるしかない。


「なんとまぁ……こんな事があるのだな」


「そうだね。私もかなり驚いているよ、ディムナ」


リングの上の二人だけは解っている。


しかし、大半の観客たちはリング上で何が起こり、どうして二人が仲良さそうに笑っているのかさっぱり解らない。


それは戦闘に関わっている学生たちも同じであり……イシュドの周りにいた学生たちは数秒……ほんの数秒は本気で考えた。

見た目だけでは解らないが、本気で脳をフル回転させたが、それでもリング上で何が起こったのか解らず……やはりイシュドという解説狂戦士に視線を向けてしまう。


「い、イシュドさん」


そんな周りの学生たちの気持ちを代弁するかのように、フレアが彼に声を掛けた。


「へいへい、解ぁったよ解ぁったよ」


ちっとは自分で考えろよ、という冷たいツッコみは入れなかった。

何故なら……イシュドから見ても、それほど解り辛さを感じるやり取りだった。


「おそらく、あの二人の細剣が後方まで弾き飛んだはわざとだ」


「斬撃がぶつかった衝撃を利用して、ってことよね」


「あぁ。んで、そのまま徒手格闘に移ろうとした。本来は……片手か片足ぶった斬られる覚悟か、ヤバいところを貫かれる覚悟で、ってところだろうな」


「つ、つまり……重傷を負うことを覚悟で相手の懐に入り、徒手格闘で仕留めようとした、ということでしょうか」


「決めてまでは解らんが、概ねのプランはその流れだろうな……それが良いか悪いかは置いといて、正解の一つではあるだろうな」


イシュドとしては、体のどこかを犠牲にしてでも勝利を奪い取る……腕の一つや二うぐらいくれてやる!!!! という精神は嫌いではない。

寧ろ……超好みである。


だが、その犠牲を前提とした戦い方に頼り過ぎることは、あまりお勧めできない。


少なくとも……やるのであれば、体力も魔力も残り僅かの状態でやるのであれば、まだ構わない。

犠牲前提の戦い方ばかりしていると、実戦でもいざという時はそうすれば良いや、という自身の体を顧みない戦い方ばかりをしてしまうようになる。


二人が、いつでもどんな場面でも最高にギリギリ具合を見極めてリスクをベッド出来るのであればイシュドは何も口出ししないが……現時点で、二人にそれだけの見極め力はない。


(いや、まぁ解るぜ。互いに相手のことをリスクを負わなければ勝てないって判断してんだろうけど……早いって。あぁ~~~~……読みが深ぇってのも、問題点はあんだな)


深く読むことが出来るからこそ、最終的にはどこかでリスクを背負った行動をしなければ、目の前の強敵に勝てないと判断している。


「序盤の方でも、相手の突きを掌で受け止めて奪い、有利な状況で戦おうとしたが……」


「同じタイミングでの行動、でしたね」


「んで、今回も同じタイミングで同じ奇策を仕掛けようとしていた……お前らならどうよ」


「あぁ~~~……私も、思わず笑っちゃうかな」


「た、確かに」


「けど、試合中に……」


「気持ちは解るけど、実際に起きて耐えられるか?」


「うっ…………無理かも」


試合中に本気で笑ってしまうのはどうなのかという意見がちらほら零れるも、じゃあ本当に自分の身に起こった時に耐えられるのか? という返しを受け、最終的に全員無理だという結論に至った。


「二人に取っちゃ、あまりにも面白過ぎたんだろうよ」


「でしょうね。けど、ここまで同じだと、次に奇策をぶつけようとした時に躊躇しちゃいそうな気が……あっ、そこがさっきの外し繋がるってことか」


「………………そうだな」


「? えっと……は、半分正解ってところ?」


変な間があり、思わず変な考えを口にしてしまったのかと焦るヘレネ。


「いや、そうじゃねぇ。俺は正解だと思ってるぜ……ただまぁ、どうやら二人はそういうのが煩わしいと判断したみたいだな」


「「「「「「「「「「えっ……」」」」」」」」」」


多くの学生たちからすれば、二人は強くクールな細剣士。

アドレアスは言わずもがな、ディムナも少しだけ気の短いところはあるが、それでも戦闘スタイルは冷静で感情任せの戦い方をあまり好まない。


だからこそ、リングを見た上でイシュドが出した言葉があまりにも信じられなかった。


「ほら、んなバカな顔して本番を見逃すなよ、てめぇら」


良いか悪いかは……さておく。


ただ、これから起こるのは、イシュドにとって最高に口端を吊り上げたくなる戦いだった。


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