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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第571話 用意してるはず

「「っ…………」」


一瞬だけ止まり、その後一度距離を取った二人。

行き着く暇もなく続いた細剣同士の刺し合いに、観客たちはまだ序章にも関わらず歓声を上げ、拍手を送る。


(っ!! 今、何を……何かを、しようとしたはず)


そんな中、一部の学生や戦闘職に就いている者たちだけが気付いていた。


二人は一旦仕切り直そうという理由で距離を取った訳ではないと。


「イ、っ…………」


ミシェラは変態狂戦士に尋ねようとしたが、質問の言葉を飲み込む。


先程ぶつけられた脳無しという言葉が残っていたのか、それともずっと頼っているばかりでは自分の為にならない、思考力の向上に繋がらないと感じたのか、自力で考えることにした。


(何かを……少なくとも、アドレアス様は風を纏い、ディムナは雷を纏った。それは確かなはず)


今回の激闘祭でベスト八に到達したのは伊達ではなく、現時点で二人の速さを眼で追えないということはなく、急激な加速も捉えていた。


ただ、急加速したものの、二人とも一切刃を交えることなく一瞬だけ止まり、その後直ぐに後退した。


(これまでの突きの型とは異なる耐性になっていたのは間違いありませんわ。そう……少し、距離が近くなってましたわね……であれば、深く踏み込んで…………っ、まさか、そういう事ですの?)


こうではないか、という予想は思い浮かんだ。

思い浮かんだものの、本当にこれで合っているのか、という疑問の方が大きい。


「えっと…………イシュドさん、アドレアスさんとディムナさんはどうして一度離れたのでしょうか?」


「…………まっ、しゃあねぇか」


(はっ!!!!!!??????)


フレアに対するイシュドの反応に、ミシェラは怒りを含む変な表情を浮かべてしまう。


「開幕ぶっぱはなかったが、そんでも二人とも早く終わらせられるに越したことはねぇと思ったんだろうよ」


(こ、この男、私には自分で考えろよ脳無しと言ったくせに、フレア様には教えますの!!!!????)


イシュドから見て、フレアはあくまで後衛の魔術師。


イシュドたちと関わることで、少しは前衛でも戦う術を身に着け、下級魔法を応用して接近戦でも戦えるように鍛えているが、それでもまだまだ後衛の域を出ない。

なので、イシュドは彼女のことをあくまで後衛の魔術師と認識しているからこそ、解らないのも致し方ないと思い、説明することにした。


ミシェラも少し考えれば、自分とフレアのそういった部分の差を理解出来る……なんなら、その他の部分でもイシュドは実力が埒外なだけで、一応辺境伯家の令息。

対して、フレアは他国とはいえ王女様。


質問されれば、立場上イシュドは答えなければならない。


少し考えれば解る貴族的な常識だが……イシュドの言葉を受け、確かに自分でも考えなければ意味がないと思い、真剣に悩んでいたからこそ、あっさりとフレアからの問いに答えるイシュドに苛立ちを隠せなかった。


「だから、二人は相手が放つ突きを手のひらで迎えようとしたんだ」


「なっ!?」


「「「「「「「っ!!??」」」」」」」


「「「…………」」」


驚くフレアに、同じ様に信じられないといった表情を浮かべる周りの学生たち。

そんな中、一定以上の実力と眼を持つ学生たちは、自分が予想した通りだった事に……多少なりとも嬉しさを感じるが、それでも驚きの方が勝り、なんとも言えない表情を浮かべていた。


「あぁ~~~、やっぱりそうなのね」


「ヘレネは気付いてたか」


「二人ともこれまでの突きを放つ時と比べて、姿勢が違ってたからまさかって思ったけど……ん~~~、解るよ。何をしたかったのかは解るけど、さすがにちょっと無理矢理過ぎたんじゃない?」


「っっ、んん゛っ!! それに関しては、私も同意ですわ」


イシュドにツッコまれる前に、自分がヤバい表情を浮かべてしまっていることに気付き、なんとか修正に成功。


「わざと手のひらで受け、相手の細剣を手元から奪う。武器を奪うことが出来れば、両者の体技がそれなりのレベルになっていたとしても、差は確実に生まれる。ただ、問題はその後ですわ」


「そうそう、それそれ。細剣の刺突って言っても、そうなったら結構な血が流れるでしょ。痛みも半端じゃないだろうし、基本的に左手は使えなくなるでしょ」


二人の言葉に、周りの学生たちは勝手にイメージして痛そうな顔をしながら何度も頷く。


「だろうな。けどよ、デカパイ……お前は、ある程度体が動かなくてもどうにかしただろ」


「っっ…………そうですわね」


ガルフによって一度リング外に飛ばされたミシェラ。

それでも風の魔力を応用し、なんとかリングに戻った。


「アドレアスの奴もそんぐらいはするだろ。なんなら、穴から流れる血を目隠しとかに使えるしな」


「……イシュド。アドレアス様はあなたと違って不良ではありませんのよ」


「あん? んだよそれ………………まっ、良いか」


目潰しは立派な戦術の一つではあるが、イシュドとしても確かにアドレアスには、王子には不釣り合いな喧嘩殺法だったと認めた。


「ディムナの奴も、そうなってもなんとかする術は用意してんだろ。てか、そうなれば出血でヤバくなる前に全力で仕留めに掛かるだろうな」


少々賭けが過ぎるのではないかと思われるが、両者の実力が拮抗している状態を考えれば……イシュド的には、寧ろ妥当も妥当な戦法としか思っていない。


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