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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第565話 見た目ほど、余裕はない

SIDE イシュド、ミシェラ、フレア


「………………」


激闘を終えた二人へ拍手を送るミシェラ。

そんな彼女の顔は……非常にむすっとしていた。


「どうしたよデカパイ。んなぶすっとした面してよ」


「うるさいですわ……フィリップは、戦ろうと思えば真正面から戦えたでしょう」


勝ちは勝ち。

それは認めなければならないところだが、それはそれとして決着のつけ方がミシェラ的には気に入らなかった。


「まっ、確かに戦ろうと思えば出来ただろうな」


一瞬とはいえ、フィリップは雷だけではなく炎まで同時に纏うことで、ヘレネの反応を越える速度で接近して勝利を掴み取った。


魔力量に関してはまだ残っていたため、あのままヘレネを文字通り倒すことは出来た。


しかし、フィリップはそうはしなかった。


「けど、それがフィリップだろ。あいつがあぁいう性格だってのはお前も知って……お前の方が知ってんだろ」


「それはそうですけれど……だとしても」


「忘れてんのかしらねぇけど、フィリップはこれから準決勝もあるんだぞ。んで、準決勝も勝てば決勝戦が待ってる。それを考えれば、無駄に長引かせず早く終わらせるに越したことはねぇだろ」


「…………そうでしたわね。それに、あの男は騎士の道に進む予定はありませんし……だとしても、やはり煮え切らない気持ちは消えませんわ」


「解らんくはないが……あれだな。新しいスキルかなんかを得たことで、フィリップの速さに対応できるようになった。その状況でかなりハイになってたんだろうよ」


「は、ハイになる?」


「全能感ってやつだ。だから、もうフィリップが奥の手を持ってるって思考が消えたんだろうよ」


ミス……とは断言できない。


なんなら、イシュドも戦闘中に新たなスキルを得た際、もしくはスキルがレベルアップした際はよくハイな状態になってしまう。


熟練の騎士ならばともかく、まだ学生の騎士候補にそこまで求めるのは酷というもの。


ただ、敢えてフレアの敗因を上げるとすれば、そこだった。


「だから、フィリップの奥の手が刺さったと」


「そういうこった。つっても、フィリップにとって賭けも賭けだったと思うぜ。なんなら、ブリッツブーツさえ賭けっぽかったからな」


「そうなのですの?」


「あぁ。それっぽい顔してただろ」


当然と言わんばかりの表情で口にするイシュドに、ミシェラも含めて多くの者たちが「お前にしか解らねぇよ」と、面白いぐらいに歪んだ表情を浮かべた。


「…………はぁ~~~。つまり、雷と炎を同時に纏うのも、不安定だからこそ一瞬だけしか使えなかった、ということですわね」


「だろうな~~~。つかフィリップの奴、剣先を突きつける形で止めてたし……コントロールをミスってたら……死にはしないだろうけど、面倒なことになってたかもな」


「~~~っっ、解りました。もう解りましたわ! ですので、もうそれ以上は止めてもらってもよろしくて!!!」


「へいへい」


だからフィリップは必要以上に戦わなかったんだよ、という理由をビシバシと叩きつけられ、さすがに限界を迎えた降参の意思を示すミシェラ。


「とりあえず、あんたの護衛騎士候補はどっちも頑張ったと思うぜ」


「えぇ……二人とも、自慢の護衛騎士です」


凛とした空気と優しさを感じさせるフレアに、周りの学生たちは自分たちが将来的に誰かに仕えるのであれば、彼女のような主に使えたいと……見事に心の声が一致した。


「つか、あれか。デカパイ的にはフィリップに負けてほしかったか?」


「……あなた、私の事嘗め過ぎではなくて?」


ミシェラはフィリップの事が好きかと問われれば、迷わず速攻でノーと答える。


だが、嫌いかと問われれば……一応、ノーとは答えない。


以前までのフィリップはともかく、イシュドと出会ってからのフィリップは間違いなく……行先は決めていないが、それでも前に進むための努力を積み重ねている。


そして、その積み重ねは確かな結果として現れている。

だからこそ、一定の敬意は有している。


だからといってヘレネのことを認めてない訳ではなく、フィリップの方が付き合いが長いから負けてほしいとも思っていなかった。


「へいへい、悪かったな。あれか、デカパイ的には前回自分が負けた相手が負けるのは、それはそれでムカつくってところか」


「……そういった思いも、少なからずはありますわね」


ミシェラは前大会の準決勝でフィリップに負け、そのままフィリップは決勝でアドレアスを打ち破り、優勝した。


大きな実績を持っていることで、多くの……主に賭けを行っている観客たちは、フィリップの勝利に賭けている者が多い。


「けれど、このまま勝ち続けるとは限らない……そう思ってますわ」


「だろうな~~~」


「そ、そうなのか?」


近くにいた男子学生が、思わず問いかけの言葉を口にした。


今しがた目の前で起きた戦いを制した男の強さは、否が応でも思い知らされた。

ヘレネの強さも並大抵の努力や才だけでは到達できないものだと解っているからこそ、そのヘレネに勝利を収めたフィリップが負ける姿があまり想像できない。


「……もう一つの準々決勝、誰と誰が残ってるのか忘れたんか?」


「えっと……あっ」


「そういうこった。一人は去年の準優勝した奴で、もう一人は闘気を得たガルフと引き分けた奴だ」


風の王子と雷の侯爵令息。


どちらが上がってきても、楽な戦いにならないのは明白だった。



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