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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第564話 その方が、有難い

「ッシャアアアアアア゛ア゛ア゛ッッッ!!!!!!!」


猛り、吼えるフィリップ。


そんな前激闘祭の優勝者である彼の姿に、観客たちは再び歓声を上げる。

飄々とクールに、嘲笑うかのように相手を倒すのがフィリップという人間。


そんな彼が……本気で勝利を掴もうと、野生全開の姿で強敵を倒そうとしている。

彼のファンである者や、そうではなく学生である彼のことを知っている者たちですら、その変化に……心を高鳴らせずにはいられなかった。


「最高ッ、ねッッッ!!!!!!!」


これまで何度も模擬戦を繰り返してきた。

特例として、これまで何度も共に依頼を受け、殺意を漲らせながら襲い掛かってくるモンスターを相手に戦う姿を見てきた。


だが、今の彼ほど本気で、心の底から勝利を求めようとする姿を、表情を見たことはなかった。


彼女の本分は……護衛対象である。

しかし、それでも一人の戦闘者として、普段はそんな顔をしない男が、本気で自分に勝とうとする姿に……とてつもなく感動を覚え、嬉しさすら感じる。


(それでも、勝つのは、私、だッ!!!!)


「っ!? チッッ!!!!」


またもフィリップの動きを完全に把握し、完璧な対応を見せたヘレネ。


間一髪のところで反応することで終幕を避けたフィリップだが、形勢は逆転したまま。


ここにきて戦況をひっくり返すことが出来たヘレネの身には……確かに変化が起きていた。

彼女はこの試合中に新たなスキル、集中力強化のスキルを獲得していた。


名前から解る通りの効果を持つ強化スキルだが、その他の身体強化系のスキルと比べれば、ぱっと見で解りやすいものではない。

事実、まだスキルを獲得したばかりであり、スキルレベルが一であるヘレネでは、その力を完全に扱うことは出来ず……フィリップほどの実力者が相手であれば、あまり意味をなさない。


しかし、そもそもな話として、今のヘレネの集中力は最高レベルまで高まっている。

そんな本人の集中力に加え、スキルの効果が相乗したことで、冷静にフィリップの動きを捉えて把握し、身体への指示まで完璧に行えていた。


とはいえ、限界に迫る力を発揮している状態と、これまでフィリップに攻められ続けた部分もあり、限界は近い。


(戦り合える、時間は、もうっ!? 一分も、ない、だろう、なっ)


対してフィリップも集中力はそれなりに削られており、先程の脇腹に刺さった蹴りが良いダメージとなり、こちらも限界が近い。


「そこよ!!! いけますよ、ヘレネーーーーーーっっっ!!!!」


「っ、情けない姿は許しませんわよ!!!!!!!!」


「おらっ!!! そこだぁああああ!!!! 二人とも、最後まで根性みせろやああああああああ!!!!!!」


二年生の主要人物たちが完全に応援を始めることで、声援は更にヒートアップ。


間違いなく、今日一番の盛り上がりを見せる闘技場。


だが……勝負とは、どう終わるか……その時になって見なければ解らない。


「破ァアアアアッ!!!???」


「ほい、終了」


一瞬。

ほんの一瞬で……フィリップはヘレネの懐に入り込み、雷……ではなく、炎雷を纏う短剣の剣先を彼女の喉元に突きつけた。


「っ、そこまで!!!!! 勝者、フィリップ・ゲルギオスっ!!!!!!!」


攻撃を叩きこむのではなく、急所に攻撃を添えての決着。


試合はあくまで試合であるため、そういった終わらせ方もあり……なんなら、各学園のお偉いさんたちとしては、万が一が起こらないそういった方法で終わらせてくれた方が有難い。


特にフラベルト学園のお偉いさんとしては、カルドブラ王国から預かっている生徒ということもあり、本人たちの覚悟が決まっていたとしても、最悪のケースだけは勘弁してほしい。


ただ、盛り上がりに盛り上がってた観客たちとしては、どこか不満が残る形と言えた。


「あぁ~~~~~、つっかれた~~~~~~~~~」


「っ……今、どうして」


「おっ! その反応……俺の予想が当たってた感じだな」


試合を終えたばかりだが、なんとなく周囲の状況を察していたフィリップはリングを降りずにそのまま語り始めた。


「多分、未来がちょっと読めるか、目の前の状況を上手い感じに把握出来る系のスキルを手に入れただろ」


「えっと……そう、なのかな?」


「その感じだと、試合中に手に入れて無意識に使ってたんだろうな。だから俺は真正面からじゃ見えない位置で加速して、尚且つ一瞬だけ炎雷を使ったんだよ」


「そ、そうだったのね」


ザっとではあるが、解りやすい説明に観客たちは「なるほど~~~」と揃って納得したような表情を浮かべる。


「……それは、もしかして隠してたとっておき?」


「まっ、そんなところだ。ライトニングブーツと同じで、まだ不安定だからな~~~」


「そう…………ふぅーーーーーーー。あなたにギャンブルをさせるほど追い込めたのなら、私としてもそれなりに満足よ。ありがとう」


「……あぁ~~~、あれだ。そっちも、良い意味で追い詰められて気付けたものがあったっつーか…………とりあえず、こっちこそありがとさん」


最後、互いに健闘を称えるように握手を交わし、観客たちも満開の拍手で二人の活躍を称えるのだった。


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