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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第562話 解らない者と、解る者

「それで、あなたは理由が解ってますの」


リングの上で起こった変化に対し、ミシェラはもう一切躊躇うことなくイシュドに尋ねる。


「お前なぁ……ちっとは自分で考えろよ」


「自分よりも強い者に尋ねるのは当然のことではなくて?」


今更認めないなど、ピエロを通り越してただの愚物となってしまう。


そんなミシェラの態度に、イシュドはほんの少しだけ意外そうな表情を浮かべるが……それはそれとして、またかという思いは消えない。


「ちっとは自分の頭で考えてみろっての。つーか、あくまで俺は俺の予想を喋ってるだけで、合ってるかなんて知らんぞ」


「それは解ってますわ。ただ、私はあなたの予想が、考えが知りたいというだけですわ」


(こいつ…………一歩間違えれば、勘違いされそうな事を口にしてるって解ってるのか?)


人によっては、愛の告白ではないのか? と勘違いしてもおかしくない。

だが……現在、イシュドの周りにいる学生たちは、全員がミシェラと同じことを思っており、リングで起きている現象に関して、イシュドがどう考えているかが気になる。


そのため、一歩間違えてそうではない捉え方をしてしまう者は一人もいなかった。


「……はぁ~~~~~。クソ素直になりやがって」


「誰かさんがこれでもかとズタボロにし続けたからではなくて?」


「へいへい、そうかよ…………つってもなぁ~~~、これだとまだ予想もクソもねぇ」


現在、ヘレネはフィリップの雷斬に勘で大剣を盾代わりにして防ぎ、弾かれる状態からなんとか弾かれないようになってきただけ。


戦況の変化としては、重要だが大きくはない。


「構いませんわ。言ったでしょう、私が聞きたいのはあなたの考えだと」


「そうかよ……妥当な点としちゃあ、一時的に集中力がバカみたいに高まってる状態だろうな」


「……なるほど。あれですわね」


「そう、あれだ」


二人の会話を聞いていた学生たちのうち……大半の者たちは首を傾げるが、一部の者たちは二人と同じく「あぁ~~、あれか」と納得した表情を浮かべていた。


「あの感覚になれば、今のフィリップの速さぐらいなら、対応出来るようになってもおかしくねぇ。おかしくねぇんだが……それだと、ちと合わねぇことがある」


「………………まだ、攻めに転じてないところ、ですわね」


自分から頼んでいてあれだが、聞き続けるというのもモヤモヤするため、ちょっとは自分で考え……過去の経験から正解を掘り出したミシェラ。


「そうだ。あの感覚になれば、もう戦況をひっくり返してて……ヘレネの攻撃がぶち当たれば、試合が終わっててもおかしくねぇんだけど、まだひっくり返ってすらいねぇだろ」


これまた、大半の学生たちはあのフィリップを相手に、どうやってあっさりと戦況をひっくり返せる? と頭の上に大量のはてなマークを浮かべていた。


その一方、一部の学生だけはヘレネほどの実力者であればと、どう逆転するかがなんとなく脳裏に浮かんでいた。


「……そうなると、新たなスキルを得た、といったところですわね」


「考える理由があるとすればそこだろうな」


戦闘中に新たなスキルを会得。


それだけを聞くと、戦況をひっくり返す切り札になり得そうではあるが、そう単純な話ではない。

新しい手札というのは、当然ながらまだまだ扱いなれてない武器。


使い方、出力を誤れば自滅への片道切符になってしまう。


「反撃の機会を窺ってるところを見るに、攻撃に直接かかわるようなタイプのスキルじゃねぇとは思うが…………何にしても、このまま時間が過ぎるだけなら、フィリップの勝ちで終わるな」


「では、ヘレネさんが逆転勝ちするとしたら?」


「んなの決まってんだろ。ヘレネが今しがた手に入れたスキルに圧倒的な速さで慣れたら、だ」


「そ、そんな」


新しい手札が手に入ったかもしれないのに……か細い。


あまりにもか細いと感じる可能性に、フレアは不安な顔をしてしまう。


そんな王女様の顔を見て、イシュドは若干呆れた笑いを零す。


「おいおい、王女様よ……あんた、これまで護衛騎士候補たちの何を見てきたんだよ」


「えっ」


「俺の事の方が、あいつらの事を解ってんじゃねぇの? 俺には…………あいつらなら、その万が一にも思える可能性を持つものを持ってると思ってるぜ」


選ばれし者。

天才。

運に愛された者。


そんなふわっとした内容もあるが、ルドラとヘレネには……万が一と捉えられ、偶然と思える結果を引き寄せるだけの濃密な時間を積み重ねてきた、紛れもない強者。


「まっ、とりあえずあれだな……いや、さすがに俺が何を言いたいのか解んだろ」


解らないほどバカじゃないよな? と半分呆れの眼をしているイシュドだが……そんな事は関係なかった。


誰かに呆れられ、軽蔑されるかもしれないなんて不安は一切なく、フレアの顔は既にリングへと戻り、口は大きく開かれていた。


「はっ! 解ってんじゃねぇの…………さて、魅せてくれよ、二人とも」


「…………」


後はもうラストバトルを見届けるだけであり、ミシェラは完全に口を閉じ、友人たちと同じくリングへ視線と意識を集中させる。


そして、その時は訪れた。


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