第561話 どう転んでも得
「「「「「「フィリップ!! フィリップ!! フィリップ!!!!」」」」」」
更に攻めッ毛が強くなったフィリップを見て、観客たちも更に湧き上がる。
ライトニングブーツは去年使っていなかった強化魔法ということもあり、新魔法の使用も燃料となっており、まさに熱気と呼べるほどの盛り上がりを見せる。
「ヘレネーーーーっ!!! あなたなら、勝てるはずよ!!!!!」
だが、そんな民衆の熱に真っ向から立ち向かうが如く、フレアは心の底からヘレナに声援を飛ばしていた。
(愛されてるね~~~)
そんな彼女の声は、薄っすらとではあるが戦闘中のフィリップの耳にも届いていた。
(けど、負けるのは嫌なんでね……ちゃんと、仕留めさせて、もらうぜっっ!!!)
ただなんとなく負けたくない。
男だし、やっぱこう女には負けたくない。
ヘレナが抱えている負けたくない思いと比べれば、あまりにも軽いと思われそうな理由。
しかし……フィリップを勝利へ導く原動力としては、十分な理由だった。
そういった一応の理由があり、そして祭りだからもっと攻めても良いんじゃないか、多少のリスクを背負ってなんぼじゃないか……それらの想いが重なり合い、今のフィリップはかなりイケイケな状態。
まだまだ暴れ馬感があったライトニングブーツに関しても全くその様子を見せず、ただただフィリップを勝利まで加速させる雷靴としての役目を果たし続ける。
「っ! っと、ほっ!! 疾ッ!!」
「っ!! ーーッ!! ーーーーっ!?」
「どうした、よッ!! そのままじゃ、このまま、ゲームオーバー、だぜ!!!!」
フィリップにしては、珍しく自分に喧嘩を売ってきてない……先に仕掛けてきてない相手への煽り。
それは、この試合に確実に勝利するための布石。
煽りに乗ってしまい、絶対に勝ちたいと、勝利へ手を伸ばす瞬間を刈り取る。
ライトニングブーツを使用した状態の今のフィリップであれば、それが出来る。
(ん? 今…………ふッッ!!!)
一度、攻撃に弾かれるのではなく、フィリップの斬撃になんとか弾かれずに耐えたヘレネ。
眼が慣れたと捉えられるかもしれないが、フィリップは明確に違和感を覚えた。
そしてもう一度素早く接近し、短剣による雷斬を叩き込む……が、ヘレネはなんとかガードするも踏ん張れないということはなく、しっかりと踏ん張って耐えていた。
(またか。ってことは、まぐれじゃ、なさそうだな)
理由は解らないが、それでもヘレネが自分の攻撃に対応し始めてきたことを把握したフィリップ。
だからといって、彼にはこれ以上のやり方がない。
短剣に雷を纏い、それで斬り裂く。
(あれ、だな。斬り裂けぬなら、斬り裂くまで、振り続けよう、ってやつだな)
どこかで聞いた言葉を心の内で呟きながら……彼は笑った。
フィリップからすれば面倒な状態であるのは間違いない。
それでも、彼は確かに笑みを零していた。
それは……これから起こるかもしれない熱い戦いに期待している、というわけではない。
面倒なのは間違いない。
ただ、それでも今更止める気にはならず、それしか攻撃方法がない。
それを解っているからこそ「やってやるよちくしょうが!!!!!」と、やけくそで攻め続けるしかなかった。
SIDE イシュド、フレア、ミシェラ
「……イシュド。私の見間違いでなければ、ヘレネさんはフィリップの斬撃に対応し始めてるように見えますが」
「間違ってねぇぜ、デカパイ。一度や二度のまぐれじゃねぇ……ライトニングブーツを使ったフィリップに、ヘレナは対応し始めてる」
まだ反撃は出来ておらず、弾かれないようになんとか踏ん張れているというだけであり、戦いを知らない観客たちからすれば……まだフィリップが優勢のようにしか見えない。
だが、イシュドたちからすれば、それはこれから戦況が変わるかもしれない予兆だった。
「へ、ヘレネはフィリップさんに勝てそうなんですか!!??」
当然、ヘレネを応援し続けているフレアからすれば危機逃せない情報だった。
「さぁ、どうだろうな。当たる時は当たるし、今のフィリップが繰り出す斬撃はさっきまで以上に痛ぇだろうから……こっから先、何もなかったら失血か体力切れで終わってもおかしくねぇ」
「そ、そうですか」
「けどまぁ…………ヘレネが、何が理由でフィリップのスピードに対応出来るようになってきたのか……それ次第では、あり得るだろうな」
イシュドは嬉しそうに、これまたニヤニヤとした笑みを浮かべていた。
「……あなたとしては、ヘレネさんが勝った方が嬉しくて?」
「ん? なんでだ?」
「今、物凄く笑ってましたわよ」
「あぁ~~~、そういう事か。そりゃそうだろ。あそこから逆転するかもしれねぇんだぜ? そりゃワクワクするってもんだろ」
確かにフィリップとは友人であり、悪友の様な存在でもある。
だが、ヘレネも付き合いが一年ほどになり、イシュドとしては少なくとも知人以上の存在。
どちらが勝っても嬉しいと断言できる。
なにより……戦いを観る者として、やはり劣勢からの逆転劇というのは胸を熱くさせる醍醐味であった。




