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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第549話 そういう相手では、ない

「あっ、おかえり。イブキ」


「あぁ、ただいま」


控え室に戻ってきたイブキ。


イブキが戻ってきた……その状況に、ヘレネは直ぐに悟る。


同郷であり、友人であり、卒業すれば同僚になる男が負けた。

だが、それでもヘレネは取り乱すようなことは、残念な表情を浮かべることもなかった。


「よぅ。あいつはどうだった、イブキ」


「……素晴らしい護衛騎士候補でした……いえ。心は、既に護衛騎士と言って差し支えないかと」


「へぇ…………何があったのか、聞いても良いかしら」


「えぇ」


終盤、何があったのかを説明。


イブキの説明が終ると……アドレアスやディムナが切っ掛けとなり、直ぐに他の学生たちが……学園関係なく、全員がこの場にはいないルドラ・セレディーへ拍手を送った。


「そうか……流石だよ、あいつは」


ヘレネとて、護衛騎士としての心構えがルドラに負けているとは思っていない。


日々の鍛錬も、フレアへの忠誠心も負けていないという自信はあるが……それでも、ルドラは形として解る強さを、心を見せた。


勿論、イブキが疲れでなんとなくそう見えてしまっただけ、とは全く思わない。


「そういうの、話では聞いたことあるけど、まさか知り合いが本当にやるとはな~~」


「イブキさんの言う通り、本当に素晴らしい護衛騎士だ。正直なところ、フレアさんが羨ましいと思ってしまうね」


「あぁ、そうだな……ダスティン先輩も、同じ感想か?」


「うむ、全くもって同じだ。目指すは国に仕える守護騎士ではあるが、それはそれとして、そこまで意識を失っても尚守ろうと立ち上がれる者から忠誠心を向けられるというのは、一種の憧れすらある」


最上位学年となったサンバル学園三年生の、ダスティン・ワビルの言葉に、これまた学年や学園関係なしに殆どの者たちが頷く。


(……あ、あんまり……下手に喋らない方が、良いよね)


そんな中、殆どの中に入らない学生……ガルフは珍しく大人しくしていた。


彼はこの中で唯一の平民出身の学生。

そのため、誰か一人守るために意識を失ってでも……誰かに忠誠を誓い、殉じてでも守ろうと立ち上がるという感覚が、あまり理解出来なかった。


そういった形がある。

その様な騎士がいるというのは知っており、そういった思いというのも…………なんとなく、なんとなくではあるが解る。


ただ、自分がルドラと同じような心を持てるのかと尋ねられると……正確には理解出来てないこともあり、間違ってもうんと頷くことは出来ない。


「…………」


「……へっ。ガルフ~~~、こいつら何言ってんだろ~って思ってるだろ」


「っ!!??」


そんな友人の心境を一目で見破り、ニヤニヤと笑みを浮かべながらからかい始めるフィリップ。


「そ、そんな事ないよ、フィリップ」


「噓付かなくて良いっての。バカにしてねぇってことは当然として、ぶっちゃけそこまで他人に……人に仕えて守りたいって感覚は解らないっしょ」


「………………うん。多分、あまり解ってないと思う」


フィリップには完全にバレていると思い、ガルフは下手に噓を付くことなく素直に白状した。


そんなガルフの様子に……思うところがある者が、ゼロではなかった。

しかし、彼らが口を開くよりも早く、ガルフに……平民に理解がある者が口を開いた。


「はっはっは!! そういうものだろう。俺たちが大なり小なりそういった感覚を持っているのは、貴族だからだ」


「彼の言う通りよ、ガルフ。平民がそういった感情を持つとしたら、相手が歳上で自分が長年お世話になった人とかじゃない?」


「「「…………」」」


三年生の優勝候補であるダスティンや、他国の護衛騎士候補であるヘレネがガルフの感じ方を肯定したことで、彼らはなんとか口を滑らせずに済んだ。


「…………お前にとって、イシュドなどはそういった対象ではないのか?」


ディムナも、ガルフには誰かに仕えたい、深い忠誠心を近い、意識を失っても動いて守りたい、といった感覚があまり理解出来ないというのは解る。


ただ、解らないながらも、イシュドがそういった対象になっているのではないのかと薄っすらと思っていた。


「イシュドは……僕にとってイシュドは憧れの存在で、友人で……いつか、横に並んで戦えるように……それか、背中を任せてもらえるぐらい強くなりたいって思う人だから」


「なるほど…………であれば、確かにそういった対象ではないな」


(イシュドが、誰かに背中を預けながら戦わなきゃならない状況………………想像するだけで絶望しそうだぜ)


ディムナがガルフの考え、思いに納得している中、フィリップは後半に関しては是非ともそういった状況にはならないでほしい……そんな状況は起こらないでほしいと考えるのだった。


『次、フィリップ様とヘレネ様の試合を始めます』


「っ、は~~~~い」


「了解」


扉の奥から、次に行われる試合の参加者の名前が告げられる。


フィリップ対ヘレネ。

彼らと関りのある者たちからすれば、これまた観客席で見られないのが強く惜しまれるカードである。


「普段は世話になってるけど、マジの試合だからね……容赦はしないよ」


「いやいや、是非ともお手柔らかに頼むぜ」


これからトーナメントに挑む者の顔ではない……へらへらとした表情を浮かべるフィリップ。


こいつはやる気があるのかと、苛立ちと疑問が沸き上がりそうな顔。


だが、ヘレネは知っている。

フィリップはそれが平常運転であり……そんな態度とは裏腹に、意外に負けず嫌いであると。


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