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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第548話 呑みたくなってしまう

「イシュドという稀有な存在が学び場にいることで、本来であればある程度真っすぐ……真っ当に成長する者たちが、そうはならず……最悪の場合、腐ってしまうのではないのかという問題は解ります」


イシュドという存在が、全員に良い影響を与えることはない。


それは、イブキも理解している。

イシュドという狂戦士を尊敬しており、故郷である大和のことを良く知っていて、侍という存在に憧れと敬意を持っている。


彼女にとっては、どこに悪い点があるのか基本的に解らないとなる存在ではあるが、学び場全体を考えると、他の者たちにどの様な影響を与えてしまうのかは……ある程度解る。


しかし、彼女には彼女の反論があった。


「ですが、貴族というのは基本的に民からの税収で生きていますよね」


「……まぁ、そうね」


「商人と関係を持ち、商売をして懐を温めている家もあるでしょう。しかし、主な収入源は税金でしょう……つまり、彼らは民たちの頑張りによって生かされている」


見下しているつもりは、一切ない。


自分自身、民たちの力でここまで生きてこられてきた、健康に育つことが出来たのだと自覚している。


「であれば、学園を卒業して大人になれば……その恩を、今度は民たちに……それが嫌であれば、国に帰す。それを芯にして高みを目指す、仕事をするといった心構えで良いのはないでしょうか」


「……ふっ、ふっふっふ。あなた、本当に学生?」


「えぇ、学生です……どこかおかしいと思ったのなら、それは彼の影響かと」


「あぁ~~~、なるほどね…………ねぇ、彼ってそんなところまでヤバくて頭おかしい感じなのかしら」


一見、悪口に思える言葉。


だが、本当に悪意がない事ぐらい、イブキは直ぐに解った。


「そうですね。ただ学生の枠を越えた強さを持つ狂戦士、という認識だけでは足りないかと」


「ふ~~~ん。そうなると、ぶっとんだ力と性格を持ってるけど、インテリな部分もある変態ってことね」


「…………」


彼女はあまり口にしないが、周りの人間がイシュドのことをよく変態狂戦士と呼んでいるため、女性治癒師の言葉を否定は出来なかった。


「と、とにかく、イシュドという存在が学園に居たとしても、それを理由に騎士や魔術師としてまともに生きる道から逸れようとするのは、ただの怠慢でしかないということです……民や国の為にすら生きられないのであれば、せめて己のプライドを守るために常識の範囲で強さを求め、功績を上げれば良いだけのことです」


「確かにそうなのよね~。あぁいう存在に気圧された程度で折れちゃう子って、結局自分の為に戦ってる場合が多いからねぇ……そういえば、次の対戦相手はあのガルフ君だけれど、自信のほどは?」


ガルフが二年生の中ではトップクラスに強いことは、女性治癒師も解っている。


というより、彼女が学生時代の頃……だけではなく、それより前……これまでの高等部二年生と比べても、一番ではないかと思えるほどの強さを有している。


しかし、イブキもイブキで並の学生よりも強い者たちより、更に頭一つか二つ上の強さを持っていると、視ずとも感じ取れる。

そして……彼女も、刀という武器がどれほどの切れ味と火力を有しているのか知っている。


だからこそ、闘気を持っているからという単純な理由でガルフが勝つだろうとは思えない。


「そうですね…………スピードとタイミングの勝負になるかと」


「へぇ~~? パワーや技術はあまり関係ないの?」


「ガルフには闘気を纏った一撃必殺なパワーが、私には刀による一撃必刀の切れ味があります。互いに当たればただではすまない……もしくは、終わりまで持っていきます」


イブキが言っている内容は、どれも大袈裟ではない。


イブキ……その先に戦うかもしれないヘレネを除いたフィリップ、アドレアス、ディムナの三人は、防御力が決して高くない。


それを補う要素はあるが、闘気を纏った斬撃や拳、蹴りなどが入れば防御していたとしても、ガードブレイクされて骨がいかれる。


対して、イブキの刀による斬撃も……最高火力の居合切りなどであれば、ガードした武器ごと切断してしまう。


足の一歩や二本はわけない。

寧ろ……危なさで言えば、当たり所次第でそのまま命を絶ってしまうイブキの攻撃の方が上。


「どれだけ相手の攻撃を躱せるか……そして、互いに放つ攻撃をどれだけ相手の動きに合わせ、叩き込むことが出来る。それが、勝敗の結果に繋がる……というのが私の予想です」


「…………ふ、ふふ。ふっふっふ……あぁ~~~~、良いわね良いわね。そんな話聞いちゃったら、試合を観戦したくなっちゃうわ」


「……観ることは出来ないのですか?」


現在、ルドラとの戦いでダメージを負ったイブキの体は、殆ど治っている。


喋りながらも完璧に行う治癒技術の高さを考えると、それぞれの試合が終わるまで選手たちの出入り口からではあるが、観戦するのはありなのでは? と思ってしまう。


「ダメに決まってるじゃない。若い子たちの熱くて濡れるような戦いを見せられたら、絶対にお酒を呑みながら騒ぎたくなっちゃうじゃない」


「は、はぁ………………なる、ほど?」


前半、解るようで解らないような………後半は、解らなかった。


「とりあえず、二人の結果。楽しみに待ってるわ」


「えぇ。ありがとうございました」


傷が完全に完治。

マジックポーションを飲んで魔力も全快し、イブキは控室へと戻っていった。


「さて、お待たせ~~~」


因みに、女性治癒師は気を失っていたルドラを放置していたのではなく、イブキと同時に治癒を行っていた。


彼が倒れた直後に上級ポーションをぶっかけられていたこともあり、問題はなく……大前提、ルドラの方に魔力を使いながら治癒を行っていた。


(相手に敬意を持たせちゃうほどの騎士候補……護衛騎士候補だったかしら? ふふ……王女様が羨ましいわね~~)


女性治癒師はルドラが目を閉じた状態でもイケメンな姿も追加され、思わず濡れてしまいそうになるが……さすがに相手が学生で他国の人間ということもあり、自重するのだった。


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