第538話 恐ろしい
SIDE イシュド、フレア
「次はイブキとルドラだな」
「そうですね……やはり、イシュドさんとしてはイブキさんを応援しますか?」
「そりゃな」
最初からクソ傲慢だったというわけでもないため、イシュドはフレアの護衛騎士候補であるルドラのことを嫌ってはいない。
寧ろ割と気に入ってるまである。
しかし、イブキとの方が交流期間が長く、明確に友人ということもあって、今回の試合ではイブキを応援する気持ちの方が大きい。
「まっ、すんなりイブキが勝つとは思ってねぇし……イブキの奴もそうは思ってねぇだろ」
「……ふふ。イシュドさんからそう言われると嬉しいですね」
「………………ルドラやヘレネを見てっと、誰かの為に頑張ろうとする力ってのもバカにならねぇなって思えるもんだ」
イシュドが強くなるのは、基本的に己の為である。
だからといって、誰かの為に強くなろうとする者がバカで弱いとは思っていなかった。
それでも……そういった相手に自分が負けるイメージが湧かない。
(仲間の為に戦った経験はあっけど、それとは根っ子が違ぇしな…………それで、よ
ぅあんなに頑張れるもんだ)
ルドラとヘレナが強さを求める理由は、フレアという護衛対象を守るため。
誰かの為に……誰か一人の為に強くなろうとしている。
イシュド的には、そういった姿勢にはいつか限界がくると思っている。
だが、出会ってからの二人を見る限り……壁らしい壁に当たっているようにも、彼らが進む先にある道に壁があると感じない。
「それは……おそらく、イシュドさんの存在が大きいかと」
「へぇ~~~、俺の存在ねぇ…………? おいおい、そこは王女様の存在じゃねぇのかよ」
変態狂戦士としては、何故そこで自分が出てくるのだと、全くもって理解出来ない。
「……守るべき対象ですから、確かに私の存在もあるでしょう。ですが、イシュドさんがそこまで言ってもらえたことを考えると……やはり、あの二人が更に成長出来ているのは、イシュドさんの存在が大きいかと」
「…………ふぅ~~~~。久しぶりに考えても訳解らねぇ事にぶち当たったな……なんか、あいつらが言ってたのか?」
「えぇ……最初は、イシュドさんの事を恐ろしく感じてたらしいです」
本人たちがいないところで言ってもいい事なのかと尋ねたくなる内容を、一切隠さずぶっちゃけてしまう王女様。
「俺が狂戦士だからか?」
対して、イシュドは貴族連中の大半から嫌われていることは解っていたため、特にダメージはない。
「いいえ。イシュドさんが、圧倒的に強かったからです」
「ほ~~~ん? …………あぁ、そういうことか。なるほどね。恐ろしいってのは、そういう意味でか」
いざという時に……護衛騎士候補であるにもかかわらず、同年代の男から姫を守ることが出来ない。
それがルドラやヘレネにとって恐ろしいことだった。
「けれど、イシュドさんはそこら辺の殿方たちよりも紳士的で、意欲があるルドラとヘレネの問いにも答えてくれました」
「前半は解らんが、後半に関しちゃあ、あの二人はあの二人で光るところがあっからね。んでガルフたちに負けねぇ意欲があるんだ。俺としちゃあ、歓迎しねぇ理由はねぇよ」
周囲にいる学生たちも、前半に関しては意味が解らない。
今も……自分たちの目の前にいる同級生はとても紳士的には見えず、制服を着ていなければただの強い輩にしか見えない。
「そこです。二人が主に感謝しているところは」
「ふ~~ん?」
「恐ろしさすら感じる人物が、親身になって自分たちの問いに答えてくれる。疑問解消に付き合ってくれ、様々な案を提案してくれる……あなたから学ぶことで確実に強くなれて、より私を守る力が付いたと」
怪物との出会いは、間違いなく成長の糧となっていた。
二人にとって、それはこの先進む道を悔いなく終わる為の大きな財産と言える。
「イシュドさんという存在は……人々に、大きな影響を与えるでしょう。しかし、やはりそれをどう捉えるかは、人それぞれとなってしまいます」
「けど、二人は折れずに活かしたわけだ……ふっ、愛され自慢ってか?」
「えっ? ……あ、いや、その……そういう訳では」
「はっはっは!!! 冗談だよ冗談。自己自慢になっちまうが、確かに影響は与えてんだろうよ」
イシュドは、この世界では間違いなく強者ではあるが、それでも彼には前世がある。
前世の記憶があるからこそ……自分の存在に影響を受け、前に進めなくなってしまう者をクソ野郎だと罵ることはない。
ただ、クソ野郎の癖にクソダルい絡み方をしてきたら、クソミソに潰すだけである。
「……これは、王女だからこそ思ってしまう傲慢な考えかもしれません。ですが……世の人々は、あなたのような存在に怯えることなく、立ち向かうような騎士や魔術師たちを求めています」
「…………はっ!!!! 王女様……そりゃあ別になんも間違っちゃいねぇし、傲慢な考えでもねぇよ。国に仕える騎士や魔術師ってのは、元々はそういう存在なんだら?」
特に悪意は持ったずに喋るイシュドだが、また何名かの学生を処した。
「まっ、うちの領地だと偶に救援要請があったから向かったのに、住民たちがモンスターをぶっ殺してたりするけどな」
そしてシメの内容に、同級生たちはレグラ家が治める土地をある意味恐ろしいと感じるのだった。




