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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第527話 逆に沈まる

「あのパツキンボンボンは、何かを試そうとしてんのかもな」


「試す…………激闘祭の舞台で、ですか」


珍しく完全に食事の手を止めて考え込んでいたイシュドが口にした内容に、フレアは少し困惑した。


激闘祭は、各学園……各学年の精鋭たちが参加する大会。


二年生はさておき、三年生だけではなく一年生たちも騎士団や魔術師団にアピールする気満々で……優勝する気満々で大会に臨んでいる。


そんな場で何かを試そうとする行為など、正気の沙汰ではない。


「……ルーディさんは、それほどまでに飛び抜けた実力を持つ方なのですか」


「一年生の中ではそういう立ち位置の奴なんじゃねぇか。他の学園ではどうか知らんけど」


おそらく普段とは違う戦闘スタイルで挑んでいる。


その結果……ルーディは勝利こそ奪えてはいるが、決して楽勝快勝とはいえない傷を負っていた。


(一回戦目でそれに気付いたはず。けど、二回戦目も同じような荒々しい戦闘スタイルで…………本当に、イシュドさんの言う通り、何かを試している?)


フレアも試合が終われば治癒師たちに傷は治され、ポーションで魔力が回復することは知っていた。


だとしても……決して、理に適った戦い方とは言えない。


「余裕ぶっこいてても勝てるほど甘くはねぇ。だが、現実としてパツキンボンボンは勝ち続けてる。試しながら勝ててるって考えりゃ……この短期間で相当積んできたのが解るってもんだ」


「…………ちなみにですが、イシュドさんは彼が何を試してるのか解りますか」


「……ミシェラたちもそうだけどよ、俺が全知全能の神とかと思ってんのか? 確かに一度面倒は見たがそれっきりで、ほぼ他人みたいなもんだぞ」


「…………ですが、全知全能の神ではなくとも、亜神の曾孫……ではなかったでしょうか」


バトレア王国に来た時期が時期だったため、ガルフたちの様に例の亜神と対面したことはない。

それでも彼らから当時の話を聞いており、その存在は知っていた。


「はっ!! 言ってくれんじゃねぇの……つってもなぁ~~~。マジでフィリップやアドレアスと違ってマジで関りが薄すぎる連中だからな~~~」


変態狂戦士のくせに頭が回るイシュドではあるが、予想するにしても予想対象の情報がなければ予想の仕様がない。


「……とりあえず試してんのか、それとも縛ってんのかってところだろうな」


「縛りですか…………そうなりますと、彼は……技術を縛ってる?」


「ザっと振り返ると、そう思えなくもねぇな」


荒々しいという言葉通りの戦い方をしているのは間違いなく、それは……お世辞にも細剣という武器に合った戦い方ではない。


「要の技術を捨て、身体能力と反応速度……後は、経験値のみで勝とうとしている、といったところでしょうか」


「そうだな。ありゃ読んでる奴の動きじゃねぇ」


ルーディがこれまで積み重ねてきた経験値は公爵家の令息らしく、並ではない。


とはいえ、イシュドほど並外れたものではなく、それだけで大きな武器になるほど質が高く、深さはない。


それもあって、彼は安くないダメージを負い、少なくない血を流すことになった。


(縛りっちゃ縛りだ……そういったやり方でも勝てる、強ぇって騎士団へのアピールか? それなら解っかっけど…………)


何を考えてるのか解らねぇ小僧だと思いながらも、高級料理を食べる手は止まらない。


「…………イシュドさんの真似、でしょうか」


「俺の真似? …………意味あるか、それ」


「そこまでは解りませんが、狂戦士が細剣を持って戦うのであれば、と想像するとそれらしく思えて」


「……解らなくはねぇ、かもな。それでもよく解らん部分の方が多いが……戦い方が増えるのは良いことだしな……………………」


「? どうかしましたか」


変わらず食事の手は動いたままだが、急に考え込んでしまうイシュド。


「そういえば、うちの実家に静かにブチ切れる騎士がいるんだよ」


「その方も狂戦士なのですか?」


「おぅ。んでよ、当然バーサーカーソウルを使うんだけど、最初から狂気に左右されなかったらしいんだよ」


狂戦士の切り札中の切り札であり、相棒とも呼べるスキル、それがバーサーカーソウル。


発動することで身体能力を大幅に強化。

他にも精神耐性の向上や、練度が高まる痛覚の麻痺なども加わる万能スキル……と楽には語れない。


狂気という感情の中でも超暴れ馬が爆走し始めるため、発動者はその手綱をしっかりと握る必要がある。


なのだが……そもそも自身の感情を上手くコントロール出来るようなタイプが体得できるスキルではないため、体得したばかりの者が発動する際には、必ず誰かが傍にいなければならないという暗黙のルールがある。


「もしかしたら、あのパツキンボンボンも同じタイプかもしれねぇな」


「…………つまり、あの荒々しさはあくまで試合用に抑えてると?」


「戦い方まではともかく、雰囲気や顔まで考えっと…………ある意味、そうなのかもな」


ただ、変態狂戦士と王女の想像話。


しかし……変態狂戦士は想像通りであればと、心の中で涎を垂らすのだった。

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