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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第524話 経験と積み重ね

(ん、のッ!! こいつ、戦士系じゃ、ねぇのに……なんでこんなに、堅ぇんだ、よっっ!!!!!)


一分……二分、三分。

いったい、何分経過したのか解らない。


ただ、徐々に自分の体には掠り傷が増え、まだ相手には……一撃も与えられてない。


堅い。

クラッドはもう何度感じたか解らない壁を感じる。


戦士が、細剣士に堅いと感じる。

普通に考えれば、あり得ない感覚である。


戦斧を扱うクラッドに対して細剣を扱うアドレアスが堅いと感じるのであればまだしも、逆は……基本的にない。


それが職業……武器による相性の差というもの。

根本的にその相性が覆ることはない。


「ッ!!! ちぇりゃッッ!!!!!!」


「……ッ、ッ!!!」


「っ!? ん、なろうがッ!!!!」


だが、届かない。

時おり炎斬波まで混ぜ合わせ、最近訓練中の体技まで混ぜ合わせて攻めるが、炎斬も炎蹴も、旋風を纏う貴公子……王子には届かない。


それどころか、隙を突いたと思って技を繰り出すたびに、アドレアスは嬉しそうに笑みを零しながら躱し、弾いていた。


(嬉しいかよ、こんちくしょうがッッ!!!!!!!!)


付き合いが深いという訳ではないクラッドだが、何も知らない……表面上しかしらない人物と比べれば、アドレアスのことを知っていた。


少なくとも、あの笑みは心の底から嬉しいと思っているからこそ見せる笑みだと。


(だったら、それを変えるの一興、だよなっ!!!!)


嬉しいか嬉しくないかで言えば……それなりに嬉しい。


あのアドバイスに、そういった顔をさせることが出来た。

それを嬉しく思う程には、クラッドはアドレアスに対して憎しみや嫉妬などの感情を持っていない。


だが……だからといって、このまま負けても構わないとは思えない。


(ブレるなよ、俺!!!!!)


振り下ろすは、斧技……岩砕。


この試合では、既に何度も見せたことがあるレベル二の技。

当たればアドレアスの防御力では手痛いダメージになるが、そもそも当たらなければダメージというのは与えられない。


粉砕に対し、アドレアスが取った行動は戦斧の側面を叩く一撃。


「っっ!!!」


細剣が戦斧に対して取る対処方法ではないが、それでもアドレアスは淡々と……普段通りの作業をこなすように実行する。


「ぬぅんっっっ!!!!!!!」


ただ、そうなることはクラッドも予想済みだった。


おそらく、受け流される。

どういった方向に受け流されるか……アドレアスの動きから予想していた。


その予想は見事的中。

クラッドは流れる体を蹴り、アドレアスに接近し、そのまま身を翻しながら岩砕を継続。


技の継続に関しては、今だ謎が多い。

相殺されれば効果、威力は消えるのか……それとも躱された時点で消えるのか。


明確な答えはないが、それでもクラッドの中で一つ決まっていることはあった。


この一撃を叩き込むまでは、終わりではないと。


「最高だよ、クラッド君」


「ーーーっ!!??」


ただ、スキルの技に関して謎が多い事は間違いない。

間違いないが……一つ、明確に解っていることがある。


それは、武器が破壊された際、効果や威力は消え失せる。


「僕の勝ち、で良いかな」


アドレアスは……直感で、まだクラッドの攻撃が続くことを読んでいた。


そこに加えて、試合が始まって直ぐに考えていた、武器の破壊という行動が実を結び、再度側面から叩きつけられた細剣による斬撃が、彼の戦斧を斬壊させた。


その後、試合を終わらせるために剣先をクラッドの急所に突き付けた。


「そこまで!!! 勝者、アドレアス・バトレア!!!!!!!」


クラッドの答えを待たず、審判の判断によってアドレアスの勝利宣言が告げられた。


その結果に観客たちは盛り上がり、再度黄色い歓声が沸き上がる。


「っ……なぁ、アドレアス。これは……最初から狙ってたのか?」


「戦斧の破壊、ということならその通りだよ」


武器の破壊を狙っていた。

この試合でわざわざそんな事を狙っていたという事実に、クラッドは……深く、大きな怒りを感じることはなかった。


理由は単純である。

目の前の男が……どうしようもなく強いから。


「そうか……それじゃあ、どうして最後の一撃……俺がそのまま攻撃を続けるって読めたんだ」


「ん~~~~……あれはクラッド君の動きを読めていた訳じゃない。ただ、直感で感じ取れただけなんだ」


「っ、直感でかよ。ったく…………最後に、そういうのがどうやって身に付くのか、聞いても良いか?」


所属している学園が異なることもあり、クラッドは今、この場で訊いておきたかった。


「……実戦を何度も何度も重ねてきたからかな。そのお陰で、クラッド君がまだ諦めてないことに気付けた」


「実戦ってことは依頼か」


「そうなるね。これに関しては、私の才能どうこうではなくて、経験してきたかしてないか、積み重ねてきたか否か……それだけだよ」


「なるほどな…………教えてくれてありがとよ」


人によっては、どうせお前の才能ありきだろと、捻じ曲がった感情で捉えてしまう。


しかし、クラッドには……真正面から受け止め、受け入れるだけの器量があった。


「ふふ、どういたしまして」


試合前と同じく握手を交わし、アドレアスの一回戦目は無事に終了した。



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