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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第519話 本気だから

「一撃、でしたね」


「あぁ、そうだな」


勝利を収めたガルフに拍手を送るイシュドとフレア。


周囲の学生たちも同じく拍手を送るが……その内の何名かは、苦々しい表情を浮かべていた。


「あの……イシュドさん」


「ん~~~~~………………まっ、そうだろうな」


フレアが何を言いたいのかを察し、イシュドはそれを肯定した。


その瞬間、何名かの学生が拍手を止め、握り拳を浮かべるも……目の前にイシュドという、ここで思いをそのまま口にすれば最後まで激闘祭を見られない可能性があるため、なんとか堪えた。


「……なんと言いますか、やはりガルフさんらしくありませんね」


「らしくないと言えば、らしくねぇだろうな。それだけこの先ぶつかり合うであろう奴らを警戒してるとも言えるけどな」


ガルフは……一回戦目の相手を、感覚を研ぎ澄ませる相手として利用した。


彼がその気になれば、同じ一撃でも試合開始と同時に瞬殺することが出来た。

激闘祭の参加資格を得た双剣使いの学生は決して弱くはなかったが、それでも持っている手札を全て使用すれば、瞬殺出来てしまう。


しかし、ガルフはそうはしなかった。

それは彼の今後の進路やメンツを気にした上での行動……などではない。


ガルフは、この先戦うであろうフィリップやミシェラ、イブキにアドレアス、ルドラやヘレネ、ディムナとぶつかり合う際……少しでも勝利を挙げる為に双剣使いの学生を利用した。


「なるほど……しかし、大丈夫なのでしょうか」


何が大丈夫なのか、とは口にしない。

既にイシュドが解っている、理解してくれている体で会話を続ける。


「大丈夫なんじゃねぇの? つっても、そこは感覚の違いもあるだろうけどな」


「感覚の違い、ですか」


「そうだ。まぁ……それに関しちゃあ、ある意味俺のせいかもしれねぇけどな」


ガルフは、イシュドに少しでも早く追い付くことを目標としている。


それがイシュドから受けた恩を返せる方法なのだと、共に過ごせば過ごすほど理解していく。


そんなガルフは……学園に入学するまでは、騎士になることを夢見ていた。

騎士になる為に、フラベルト学園の門戸を叩いた。


だが、今のガルフにとって、それは……どうでもいいことになりつつあった。


「イシュドさんのせいとは?」


「もう、あいつにとってこの祭りは、普段の延長線に近いんだよ」


「…………………………なる、ほど」


十秒以上を要したが、なんとなくフレアは事情を把握。


(イシュドさんに追いつきたい、追い抜く存在になりたいガルフさんにとって、この大会はあくまで通過点でしかないということですね)


なんとなく予想した彼女の考えは、ある程度合っていた。


通過点と呼ぶには、あまりにも壁が多い。

ガルフが頂点にたどり着くまで、最低でも二人は友人と呼べる者たちを倒さなければならない。


その友人たちの殆どが日々切磋琢磨している者たちであり、ガルフの闘気に関しても細かく把握済み。

容易に乗り越えられる壁ではないが……だとしても、イシュドと戦うことを強く望むガルフからすれば、乗り越えて当然の壁。


「とりあえず、今のガルフにとっちゃ、ここは強くなるための場だ」


「観客たちがいるだけで、普段の訓練とさほど変わらないと」


「いいや、訓練とは大きく違う。ぶつかる相手は、どいつもこいつも本気だ。当然、デカパイたちもな。だからこそ、意味があると思ってんだろうな」


「まさに強者ですね」


フレアの言葉を耳にした者たちは、心の内で「強者なら何をしても良いのか」と呟いた。


「本人は全くそんな事思ってねぇだろうけどな……だから、ここまで来れたんだろうけどな」


「強さだけを求め続け、ミシェラさんたちと鍛錬を、実践を積み重ねてきたからでしょうか」


「それもあるが、なんの為に強くなるか……それが決まってるからだ」


「…………それに関しては、他の方々も持ってるのではないでしょうか」


フレアは、誰かを下げたいわけでも、見下ろしたいわけでもない。


ただ、純粋にあのリングの上に立つ者たちに……立とうとした者たちの中に、そういった心構えを持たない者はいないと思っていた。


「どれだけ本気なのか、そこが違ぇんじゃねぇの」


「……濃度や、純度、といったものでしょうか」


「そうとも言うかもしれねぇが…………俺は、言葉通りと捉えてる。なんの為に強くなるのか決まってるなら、それに死に物狂いで取り組む。死に物狂いで積み重ねて、自分に足りないものを取り込み、受け入れ、限界だと思っていたラインを昨日よりも一歩……半歩でも良いから前に進むんだ」


「「「「「「「「「「………………」」」」」」」」」」


周りにいるということもあり、同じフラベルト学園の生徒たちの耳には、嫌でもイシュドの言葉が届く。


その言葉に……学生たちは、悔しさや怒りを感じても、それを言葉にすることはなかった。

それは、イシュドという怪物が目の前にいるから、という理由ではなかった。


悔しさや怒りの感情よりも……イシュドの言葉を聞き、その通りなのだろうと……自分たちは、それほど出来ていたのかと問い……出来ていないと納得してしまう気持ちの方が大きかったから。


「話が逸れたが、だからこそ、ガルフの奴は激闘際をそういった場所として捉えたんだろうな」


親友の選択に、イシュドは当然のように笑みを浮かべる。


そして、次の友人たちが行う試合を今か今かと待ちわびるのだった。

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