第518話 複数の選択肢
「おっ、来たな」
全学年の一試合目が終了し、二試合目……早速ガルフの出番がやってきた。
「どういった展開になると思いますか」
「さぁ……どうだろうな」
フレアの言葉に、イシュドははぐらかしたのではなく、本当に答えを持ち合わせていなかった。
「……相手の方には失礼を承知で言いますが、ガルフさんには敵わないと思いますが」
「そうだな。それは俺も同じ感想だ」
イシュドが既にガルフの勝利を確信してることに、同じ学園の生徒たちは特にツッコまなかった。
彼らも、既にガルフの実力は去年、嫌というほど見せられた。
イシュドたちと共に特例として依頼を受けて、強敵たちとも戦っていたことを知っている。
だからこそ、そこに関して不満を口にすることはなかった。
「どういった展開になるかは、あいつがどう戦うか次第だ」
「…………なるほど」
その言葉だけで、どういう事なのかフレアは理解した。
彼女はイシュドだけを意識して過ごしていたわけではなく、ガルフたちとも交流を躱していた。
だからこそ、ガルフにどういった選択肢があるのか覚えていた。
「それでは……始め!!!!!!!!!!!!」
審判の気合が入った掛け声とともに試合がスタート。
それと同時に観客たちのテンションも上昇。
理由としては、至極単純。
去年の激闘祭で平民ながらベスト八まで上り詰めた強者。
観客たちの中には彼の激闘が脳裏に焼き付いている者たちも多く、そんなガルフが行う試合ともなれば、他の試合以上にテンションが上がってしまうというもの。
「ふっ!!! せやッ!!!!!!」
しかし、ガルフを応援する歓声の方が多い中、対戦相手の学生は委縮することなく、寧ろ絶好のチャンスだと思い、双剣を振るう。
(こいつを、倒せれば、俺の評価も、上がるって、もんだッッッ!!!!!!!!)
双剣には早速炎が纏われており、魔力による身体強化や強化系のスキルも発動されている。
魔力を消費すれば同時に体力を消耗するものの、激闘祭では試合が終わった後、傷は待機している治癒師たちによって癒され、魔力はマジックポーションを使うことで元通りになる。
「っ……っ…………」
「おら、おら、どうした!!! そんな、もんかよッッ!!!!!」
強気な言葉、態度を崩さない。
しかし、彼は決してガルフのことを嘗めている訳ではない。
前回激闘祭のベスト八に残った猛者。
本来なら決勝戦まで進んでたであろうディムナ・カイスをダブルノックアウトまで持っていった予想外過ぎる新星。
そんな怪物を、嘗められるわけがなかった。
(っっっ、だから、って、だからって……日酔って、られるかよッッ!!!!!!)
当たらない、弾かれる、もしくは受け流れる。
自慢の炎斬が、一つも当たらない。
双剣技、刺閃を連続で放ち、攻撃のリズムを変えた瞬間に乱れ裂きを放つも、全ていなされてしまう。
戦闘が始まってから、既に数十秒……男子生徒は、最初から全力疾走していた。
そうしなければ、勝てないと理解している。
それほどまでに、目の前の男から勝利を奪いたい。
「っ……っっ、ッ!」
「ぅ、おりゃッッ!!!!!」
まだ、当たらない。
それでも、相変わらず避けられているが、それでも確実にガルフの体と炎斬の距離が縮まっていた。
(届く……届くん、だ!!! 俺の、斬撃を、ぶち込む!!!!!!)
確かに縮まっていた距離に、男の闘争心は限界を越えて燃え上がり、更に勝利へ手を伸ばそうとする。
「ーーーーーーーーーーーっっっっ!!!!????」
だが、勝利へと指先が触れるかもしれないと思った瞬間、腹に強烈な衝撃が走った。
視界は急激に標的が遠ざかり、直後に後頭部と背中がメインに衝撃を受け、リング外の地面へと落ちた。
「がはっ!!!!!?????」
足裏が地に付いた瞬間、男の口から鮮血が零れる。
(な、なん、だ? 俺は、今……何を、食らって)
「一……二……三」
「っ!!!!!! なっ、ぐっ!?」
審判のカウントダウンを耳にし、ようやく自分がリングの外に出たのだと知る。
腹部に強い痛みを感じる。
ついでに後頭部と背中も痛い。
しかし、カウントダウンが行われているという状況から、リングに戻らなければならないことだけは解る。
必死に脚を動かそうとするも、体が言うことを聞かない。
(っ!!?? なんで、だよ。動け、動け、動け動け動け!!! 動けよっっっ!!!!!!!!)
自身の体に何度も鞭を打つが、それでも彼の体は思い通りに動かず、無情にも審判のカウントダウンが進んでいく。
「八……九」
(待て、待て!! 待ってくれ!!!!!)
「十!!! そこまで!!!! 勝者、ガルフ!!!!!!」
「っっっ……ぐっ!!!!」
十カウントにより、ガルフの勝利が確定。
観客たちは一撃……たった一撃で終わらせたガルフの攻撃力に、その結果に大いに盛り上がりを見せる。
「ふぅーーー……」
その後、ガルフは対戦相手の学生に軽く頭を下げ、リングを去っていった。
観客たちの拍手がまだ続く中、幾人かは……リングの上で何が行われていたのかに気付いていた。




