第517話 ほぼ埋まってる
「んじゃ、今年も暴れてこい」
変態狂戦士の言葉に頷き答える超星たち。
「イシュド殿……私たちが、奪ってしまっても構わないのだろう」
「構わないんだよね?」
「はっ!!!! 当然だ。せっかくの祭りなんだ。お前らはお前らで楽しんでこい」
異国の騎士候補たちを快く送り出す。
「んじゃ、俺らは観客席に行くか」
「は、はい」
そして……変態狂戦士は異国の王女と共に観客席へと向かった。
「イシュドさんは、どういった展開になると思われますか」
「数が数だからな……早いうちにメインディッシュがきてもおかしくないだろうな」
観客席に移動したイシュドとカルドブラ王国の王女、フレアは非常に目立っていた。
イシュドは激闘祭という場所において、超超超有名人である。
傍にいる同級生たちだけではなく、一般客たちも彼の事を知っており、興味深々の視線を向けていた。
加えて、アドレアスと同じく王族であり、そこら辺の令嬢たちがただの石ころに思えてしまう程の宝石のような美しさを持つフレアが傍にいる。
目立たない方が難しい組み合わせであるが……二人は、自分たちに向けられる視線を全く気にしていなかった。
「ガルフさんたちがぶつかる可能性があると」
「そうだ、そりゃ最初こそバラけさせるだろうけど、一回戦が終われば残りは十六人だ……どこかしらではぶつかるだろうな」
激闘際に参加する学園は四つ。
イシュドたちが所属するフラベルト学園。
ライザード学園にエンフェラス学園に、ディムナやダスティンが所属するサンバル学園。
一つの学園から八人……計、三十二人の猛者たちが参加する。
(…………上から目線であれこれ考えてたけど……あれだな、文句が出ねぇ方が難しかったか?)
どの学園であっても、留学生が激闘祭に参加することが認められている。
その条件が過去に悪用された例もあるが……兎にも角にも、イブキやフレアの護衛であるルドラ・セレネディー、ヘレナ・ブレヴァラたちが参加することは何も問題ではない。
結果……参加枠である八人の内、イシュドの関係者と言えるガルフ、フィリップ、ミシェラ、イブキ、アドレアス、ルドラ、ヘレナの計七人で埋め尽くしてしまった。
見方を変えれば、イシュドに関わらずとも自己研鑽……教師たちに頼み込み、自由時間に訓練を付けて貰っていた……本気で強くなろうとしている学生がつかみ取ったとも言える。
(八分の七…………まっ、今年限りだしな)
教師陣でも今回の件に関しては話し合いが行われ、ルドラとヘレナが参加するのは今回の大会が最初で最後にすることが決められた。
とはいえ、それでもガルフたちを除いた席は三つと、依然と数は少ない。
「…………」
「? どうかなさいましたか?」
「いや……まっ、それはそれである意味価値が付くのかと思ってな」
「……出場出来る数が少なければ少ないほど、そこにたどり着くのは容易ではないから、ということでしょうか」
「顔に出てたか」
「ふふ、そうですね」
実際のところ、悩ましい表情を浮かべているだけで、何を考えているかまでは解らない。
ただ、フレアはフレアでそれなりにイシュドと時間を共にしているため、リングを見つめているイシュドが何を考えているのか……おおよそ察しが付いていた。
「……もしかしてたけど、満席になったらヤバイから、選抜戦に参加しなかったのか?」
当然ながら、激闘際に後衛職である魔術師タイプの学生たちも参加している。
二年生になったことで、武器を扱う学生だけではなく、魔法をメインに戦う学生たちの戦力も増加している。
一発の火力に関しては魔術師たちの方が高い傾向があるため、出場者の中には……フラベルト学園以外の学園では、魔術師の数は少なくない。
「私はあくまで王女ですから」
「なるほどねぇ……まっ、そういうことにしといてやるよ」
普段の訓練に関しては、フレアも混ざって参加している。
それによって体力だけではなく、魔力操作の技術も向上している。
レベルアップの際に増加する魔力量はメンツの中で一番であり、魔力量はイシュドを除いたメンバーの中で一番。
(………………フレアが参加してたら、マジで俺に関わってるメンツだけで埋まってたな)
魔力量が半端ではなく、魔力操作技術も高い。
そうなると、魔力を消費して展開する障壁で攻撃を防ぎながら、攻撃魔法でぶん殴ることが出来るのだが……並の威力では障壁を砕けない。
壁に到達するまで多数の攻撃魔法を弾き、避け、距離を詰めなければならないため、フレアと対峙した場合……眼に見える間以上の距離を感じることになる。
「イシュドさんとしては、ガルフさんに優勝してほしいですか?」
「そりゃ親友が優勝してくれりゃ嬉しいけど、アドレアスたちがガルフに負けないほど積み重ねてきてんのは知ってるからな……誰が上がっても、面白ぇって感想しかねぇな」
激闘際が終わった後の予定が確定しているイシュドとしては、あの山を越えてきた人物が自分の前に立つ……それを考えるだけで、自然と笑みが零れてしまう。
そんなイシュドの楽しみをよそに、早速一回戦目……第一試合が始まる。




